夢の味見
起きてリビングに行くと、いつものパウンドケーキは用意してなくて、手紙と食器がおいてあった。
◇ーーーーー◇
ユメちゃんへ
イクラは冷蔵庫にあります。
ご飯は炊飯器にあります。
混ぜるだけでお寿司ご飯になるものを置いてあるので、ご飯に良く混ぜてから、イクラを乗せて食べると美味しいですよ。
◇ーーーーー◇
あ!そうだった。イクラを食べるんだった。
寝ぼけて忘れるところだった。ユリの手紙のお陰で思い出した。
炊飯器からご飯をよそい、おいてあったお寿司の素をご飯に混ぜた。
冷蔵庫からイクラを出してきて、ざぱーっと豪快にかけた。
箸だと食べ難いかな?とスプーンも持ってきた。
スプーンですくって、口に運んだ。
プチっとして濃厚で美味しい!
確かにこれは寿司屋のイクラよりも美味しい!
少し多いかな?と思ったご飯だったのに、あっという間に食べ終わってしまった。
そろそろ手伝いに行こうかな。
「おはようにゃ!手伝うにゃー!」
「おはよう、ユメちゃん」
「ユメちゃん、おはようございます!」
「なに作ってるにゃ?」
「鮭フライの味見をね」
熊の元だ!これが食べたくてソウは熊になったんだな。
「ソウが食べたがってたフライにゃ」
「そうなんですか?」
リラはなにも聞いてないみたいだな。
よし、教えよう!
「ソウが食べたくて、わざわざ鮭捕まえてきたにゃ」
「ええー!!」
ユリが揚げたてを持ってきた。
「リラちゃんとユメちゃん、半分ずつね」
ユリは1だけ揚げた鮭フライを半分にして私とリラにくれた。
私はすぐに食べたけど、リラは戸惑っているみたいだった。
「おいしいにゃー!」
すぐリラも食べたらしい。
「美味しいー!! 川の魚が美味しいなんて!!」
「このソースも美味しいにゃー」
「タルタルソースも絶品ですね!!!」
ユリが作ったタルタルソースか!
ソウ待望の鮭フライとタルタルソース、先食べちゃったな。
「二人とも良かったわね。提供は35食だけれど、売れ残るかもしれないから、おすすめしてね。小デッシャーで、フライの横にソースを添えて出します。付けて食べてくださいと説明してね」
「はい!」
「任せるのにゃ!」
そうか、リラが躊躇したみたいに、皆、敬遠するのかもしれないのか。
ランチが始まると、カツカレーばかりの注文だった。
ユリは、鮭を揚げることなく、残念そうだった。
なのに、豚カツがいっぺんに片付いて良かったわ。と言っていた。
悩んでいる人がいたら、フライをすすめるぞ!と意気込んでいると、リラに聞いた人がいた。
「女給さん、看板の『鮭』とは、川魚かい?」
「はい!」
「旨いのかい?」
「味見させてもらいました!ビックリするくらい美味しくて、早くお昼ご飯が食べたくて、もう楽しみで、楽しみで!」
私もうんうんと首を振って頷いて見せた。
お客がこちらをちらっと見たので、気がついたと思う。
「んー、騙されたと思って食べてみるか」
「絶対に美味しいので、騙されません!」
リラは笑顔で答えていた。
「そこまで言うなら楽しみにしておくよ」
「はい!お持ちしますね」
カレーの方が多かったけど、やっと一食だけ注文が入った!ユリ喜ぶかな?
できたフライをリラが運んできた。
「このタルタルソースを付けてお召し上がりください」
お店にいる全員が、フライを食べる人を見ていた。お店の中が静になり、サクッと音が聞こえた。
「旨い!!なんだこれ!!激旨だ!! ご飯は要らないから、フライだけもう一人前持ってきて!」
「はい!お持ちします!」
「リラちゃん!こっちも、ご飯なしでフライだけ頼めないかな?」
「ユリ様に確認してきます!」
リラが厨房へ行ってしまうと、私に注文された。
「黒猫様!ユリ・ハナノ様に頼んでもらえませんか?」
「今、リラが聞いてくるにゃ。ユリは、きっと大丈夫にゃ。少し待つのにゃ」
戻ってきたリラが、希望者を聞いて注文を受けていた。
7人が、フライだけの注文をしていた。
「黒猫様は食べてみたのですか?」
「ランチの前に、ユリに味見もらったにゃ。後で食べるにゃ!」
そしてフライが届くと、食べた全員がものすごく誉めていた。
「魚がこんなに旨いとは知らなかったが、それにしてもこのタルタルソースというのは、野菜と食べても旨いな!」
「このソース、なにで出来ているんだろうな?ものすごく旨いな」
「この魚はなにか特殊な魚なのか?」
「ユリ・ハナノ様はやはり凄い!」
「こんなに旨い魚は知らない!もっと泥臭いものだと思っていた」
「栗ご飯といい、魚といい、魔法使いのようだな」
確かにユリは魔法使いだけど、癒し系だな。
ユリの料理は魔法じゃない。ユリの勉強と努力だと思う。
最初にフライを頼んだ人は、リラにものすごく感謝しているみたいだった。
そのあとは、たくさんフライの注文があって、カレーライスよりも早く売り切れた。
お店が終わる頃、ギリギリに来た人が、何でも良いから食べさせてほしいと言って、リラが、親子丼を作っていた。
リラは凄いな。もう普通にお客に出せるんだな。
お客が帰って、ユリはみんなにフライを用意してくれた。
やっと食べられる!
マーレイも食べる前に怖がっているみたいだった。
ソウは特別に3切れだった。みんなより多い。
「ソウの分だけフライ3つよ」
「ソウがとってきたからにゃ」
「ホシミ様凄いです!」
こわごわと口にいれていたマーレイも、美味しいと言って喜んでいた。
ソウはものすごく嬉しそうだった。自力でとってくるほど食べたかったのだから、なおさらなのだろう。と思った。




