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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇幼女ユメ◇
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夢の成長

俺は色々思い出したことと、あまりの体力のなさに困って、力をあげるべく、少し旅に出ることにした。


朝、出かけようとしていたところにユリが来て、市場に行くと言うが、断ったらお菓子の弁当をくれた。


ユリのお菓子の弁当はありがたい。


何度か行ったのでユリがお菓子を教えている家も歩いていけると思う。

あの石にもう一度触れてみたいのだ。


あの魔力は思い出せそうで、ここまで出ているのに、といった感じなのだ。


ハンカチに包んで貰ったお菓子を背中に巻き付け、斜めにしょった。


よし、出発しよう。


ひたすら歩き、迷わずついた。

思ったほど遠くなかった。

今日は入り口に誰もいないので入りやすかった。


石がある場所まで歩き、再度石に触れた。

やはり知っている魔力に思える。

そして、同じような場所の記憶が残っていた。

その場所も知っている気がする。


それは何となく南に思えたので行ってみることにした。


3日くらい歩いた。

休み休みだが、ひたすら歩いた。


お腹が空いたが、貰ったクッキーを1枚だけ大事に食べた。


そこは草原のようで何もない場所だった。

盛り土がされた低めの舞台があり、魔力の残りかすのようなものが漂っていた。


すぐそばにその石はあった。

やはり薄い幕の結界の中だ。

ただ、この結界は他を拒んでいるようで本当に見えにくい。

人間には全く認識できないかもしれないと感じた。


構わず侵入する。


石に触れると、それは自分自身の記憶だった。

部分的ではあるが、大魔導師だった頃の結界を張る準備の記憶だった。

ふいに人形(ひとがた)になり、体が熱くなった。

なんだ?と思っていると、成長したらしい。視界が変わった。地面が遠くなった。


もうひとつある石の場所がはっきり思い出される。

もう一度石に触れると魔力を充填され、転移した。


残りの石の場所だ。


目の前にある。

ただ、触ったらもう戻れない気がする。


丸1日悩んだ。


うろうろしたり、少し離れてみたり。


ユリに貰ったパウンドケーキを食べた。

癒しの力をもらい気分が落ち着いた。


何があっても、ユリとソウのところに戻りたい。

決意をして、石に触れた。


それはこの国を作った記憶だった。


魔法使いたちが一般人を迫害し、争いを止めるためにこの場所に魔力を持つものを隔離した記憶だった。


まだ全てではないが、自分が何者であるかを理解した。


この国の最終的な管理者、女王であり国王だった。


当時の名前を思い出せないので、全て思い出したわけではないが、自分はどうも転生したわけではないと、それだけはわかった。


あまりの情報にしばらく呆けていたが、重大なことに気がついた。


黒猫に戻れない。


魔力が多過ぎて安定せず、小さな黒猫に戻れないのだ。

しかも、今、確実に以前より大きな子供である。

これでは、ユリやソウに自分だとわかってもらえないかもしれない。


遅くても週末までには戻りたい。

ユリの役に立ちたい。


夜になって、転移で戻ってみた。

家の中に直接は入れなかったので、いつもの西側の通り抜け魔力扉に来たが、体が大きいままでは入れなかった。


ユリはお菓子を作っているのか、ユリと小娘の声が聞こえた。

美味しそうな匂いもする。


悲しくなったが、どうにもならず再び転移して結界の中で過ごした。

残っていたクッキーを食べた。


翌日、今日がタイムリミットだと思うが、やはり黒猫に戻れなかった。

それでもユリとソウのそばにいたくてお店のそばまで転移して来た。


そして思った。

特に役立つわけでもない自分がいなくなったからって、ユリもソウも困らないんじゃないかと。

ユリもソウも自分なんか必要ないんじゃないのかと。


そう思ったら怖くなり、泣いてしまった。


するとなぜか黒猫に戻ったので、これを逃すわけにはと思い急いで魔力扉をくぐった。


急いで2階に上がり、リビングに行った。

ご飯を食べているらしいユリの声が聞こえた。


「ユメちゃん、もう帰ってこないのかなぁ?寂しいな・・・」


ユリは寂しいと思っていてくれたんだ!

すると、また人形(ひとがた)になった。


「ユリ、ビックリしないでにゃ」

「え!ユメちゃん!?」


大きいままでユリの前に行くと、ソウもいた。


「でかい・・・」

「ユメちゃんが、おっきくなったー!」


意外と二人は驚かなかった。


なんだかいつもの二人に安心した。


魔力が多くなって、黒猫に戻りにくくなったこと、昔、大魔導師だったことを話した。


「ユメちゃんすごーい!」


ユリは大喜びで話を聞いてくれた。


「ユメちゃんは大きくなっても可愛いねー。身長は120cmくらいだねー」


いつもの調子のユリだった。

ふとソウを見ると、優しく笑っていた。


「ユメ、遅かったな、お腹はすいてないか?」

「あ!そうだよ、ユメちゃんごめん。何か食べるよね?新しいお菓子もいっぱいあるよ」


ユリは次々新しいお菓子を出してきた。

でも全部同じような器に入っていた。


「残しても良いから、好きなのを好きなだけ食べると良いよ」


色々貰ったけど、パンプキンプリンと言うのが一番美味しかった。


気持ちが落ち着いたら黒猫に戻れるようになった。

でも、人形(ひとがた)でいるほうが楽なようだ。


ユリは、無理せず好きなようにしたら良い。と言っていた。

でも、明日は黒猫にならないとユリが困るだろうと思う。


ソウに、入り口について相談したら、でかくて入れないなら普通にドアから来ればどうだ?と言われた。確かにその通りだ。

そんなことは全く思い付かなかった。


人形(ひとがた)の時はドアから入ることにした。


二人に歓迎されて、本当によかった。

次回 08月13日 13時00分です。

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