夢の魚卵
リビングのそばに来たらユリとソウが話しているのが聞こえた。
ソウと顔を合わせ辛い。
どうしようかと悩んでる間に、ソウは転移したらしい。
「おはようにゃー。なに騒いでるにゃ?」
今来たとばかりに、ユリに挨拶した。
「おはようユメちゃん。ソウが、鮭捕まえに行くって、手ぶらで行ったわ」
熊が素手で魚をとってる映像が脳裏に浮かんだ。
「・・・熊なのにゃ?」
「ふふふふふ、私も同じこと思ったわ!」
考えるほどにおかしくて笑ってしまった。
ユリも笑っていた。
「ユリは行かなくてよかったのにゃ?」
「午後から栗持った人が来るのよ」
また栗剥きの人が来るのか。
ユリは、栗が売っていないと嘆いていたけど、栗は向こうからやって来るものだったらしい。
「あ、でも、ソウはお弁当も持たずに行ったけど、昼ご飯の頃には帰ってくるのかしら?」
手ぶらで鮭、午前中で帰ってこられるのかなぁ?
「届けるにゃ?」
「ユメちゃんが届けてくれるの?」
「昼に戻ってこなかったら、届けても良いにゃ」
「じゃあ、帰ってこなかったらユメちゃんお願いします」
「任せるのにゃ!」
弁当くらいは届けてやろう。
ユリは、いつものように、パウンドケーキとミルクを出してくれた。
掃除すると言って、自分の部屋に行ってしまったので、リビングに戻ってきたときに、手伝うと伝えておいた。
掃除機を持って自分の部屋を掃除することにした。
掃除機は楽しい。カワイツバサだったときは、いろんな意味でさわらせてもらえなかった。
自分で掃除をするのは、ユメになってからだ。
それまで自分で掃除をする環境にいなかった。
こんなことでも恵まれていたことをわかっていなかった。
掃除機を返しにリビングに行ったけど、ユリはいなかった。
紙雑巾付きワイパーも、ちょっと楽しい。
滑らすように動かしているとユリが来た。
「ユメちゃん、ありがとう」
「これの取り替えるのはどこにゃ?」
「替える専用の紙雑巾はここにあるわ」
ユリは掃除用具が入っている場所から取り替え用の紙雑巾を出してくれた。
付け方が面白そうだったので、やらせてもらったけど、なかなか上手くつかなくて、何度もやり直していたらポイントがわかった。
「外掃いて来るわねー」
「わかったのにゃ」
ユリは外の掃除にいってしまった。
せっかく紙雑巾が上手につけられたので、廊下も掃除することにした。
廊下が全部拭き終わっても ユリが戻ってこないので、また何かあったのかもしれないと階段を降りると、知らない声が聞こえた。
「誰か来たにゃ?」
ユリがいたので、聞いてみた。
「お休みを知らずに遠くから来たらしいから、凍結ドリアを出そうかと思ってね」
ユリはドリアを3つ持って階段を上がっていった。
上で調理するのかな?
見ていたら、電子レンジに入れて、オーブントースターに入れて、もう一度、電子レンジに入れていた。
ユリはお店に、ドリアを持っていった。
「こちら、キノコドリアです。お熱いのでお気をつけてお召し上がりください」
お客はボソボソしゃべるひとみたいで、離れていると良く聞こえない。
ユリは忙しいだろうと思って、「お店を見ておくにゃ」と言うと、今度は、冷凍してあるお菓子を持って又2階に行った。
今度はすぐに戻ってきて、鍋で冷凍フルーツを煮ていた。
ジャムかな?
次に、食べ終わったお客のところに行って、話していた。
「デザートも提供できますが、どうされますか?」
ユリはココットの上に、さっき作っていたブルーベリーのやわらかいジャムみたいなのを乗せて持っていった。
「まだ少し凍っていますが、レアチーズケーキです」
あ、あれ、チーズケーキなのか。
レアチーズケーキか。たしか冷たいチーズケーキだったかな?
「なんと旨い料理と旨い菓子だ!」
「ありがとうございます。冬箱か真冬箱をお持ちなら、先ほどのドリアは持ち帰り販売をしていますよ」
「冬箱なら持っている、是非売ってくれないか!」
「おいくつ必要ですか?」
「先ほどと同じ容器であれば、4つ、いや5つ入る」
「では、5つお持ちします。馬車から冬箱を下ろされると良いですよ」
「了解した」
今度ははっきりしゃべっていたので、何言っているか良く聞こえた。
一人が店の外から大きな冬箱を持ってきた。
ユリが色々説明してドリアを冬箱に入れていた。
そのあと会計していたけど、又多かったらしく、ユリが黒猫クッキーを持っているか聞きに来た。
クッキーを渡せば良いんだなと思って、渡しに行った。
「黒猫クッキーにゃ!」
「これは素晴らしい黒猫クッキー!」
「パウンドケーキです。お疲れの際に召し上がってください」
ユリは更に、パウンドケーキを渡していた。
お客は何度もお礼を言って帰った。
「ユメちゃん、レアチーズケーキ食べる?」
私の分もあるらしい!
「食べたいにゃ!」
「持ってくるから休憩しましょ」
「食器下げとくにゃ!」
「ありがとう」
レアチーズケーキを出してもらい食べていると、ソウが帰ってきた。
なんかの枝に鮭がぶらさがって、それを肩に担いで、あーこういう熊の置物見たことがあるかも。
「熊みたいにゃ・・・」
「ただいまー!なんか言った?」
うっかり呟いたけど、ちゃんと聞こえなかったみたい。
「お帰りなさい。何で鮭吊ってるの?」
「道具持っていくの忘れたから、枝に吊るしてきた!」
戻ってくれば良くない?
「どうやって捕まえたの?」
「川の中に結界張って、水だけ抜いた」
「そんな結界の使い方があったのにゃ・・・」
衝撃的な使い方に唖然とした。
「お魚担いで服汚れないの?」
「俺自身に結界張ってるから汚れないよ!」
「そんな結界の使い方があったのにゃ・・・」
そんな細かな制御ができるのもすごいけど、その使い道が想定外すぎる。
いったいどれだけの魔力で制御しているのだろう?
「流しにおいて良い?」
「あ、うん。後でさばくわ。ソウもレアチーズケーキたべる?」
「うん!」
ソウも食べるらしく、ユリに出してもらっていた。
食べ終わった食器を片付けに厨房へ行くと、ユリが鮭をさばいていた。
魚をさばくのは初めて見たけど、少し怖かった。
ユリは簡単そうにどんどんさばいていった。
「やったー!4匹とも卵!」
あのつながった赤い塊が卵なのか。
あれが美味しいイクラになるの?
ユリは魚を冷蔵庫にしまって、鍋で何か作り始めた。
次に、沸いているお湯に水を足してボールに入れていた。そこに何か粉を入れて、さっきの赤い塊を4つ入れていた。
それを、わざわざ割り箸を出してきて、かき混ぜていた。
少しすると、手を入れて混ぜているみたいだった。
段々と、きれいな色のイクラが見えてきた!
やっと知ってるイクラに見えてきたのに、ユリが水を変える度に、イクラが白っぽくなっていった。
少し白っぽいイクラの水を切ってから、最初に作っていた鍋にイクラを入れていた。
そばまで覗きに行ったら、鍋の中のイクラは見たことがある美味しそうな色のイクラになっていた。
魔法みたい!
「イクラの醤油漬け出来たわ!」
「おおー!」
「お寿司のイクラにゃ?」
「お寿司やさんのは、塩漬けかな?」
「ユメ、寿司屋のイクラより旨いぞ!」
そうか、お寿司屋のイクラより美味しいのか!
楽しみだな。いつ食べるのかな?
ユリはイクラを4個の瓶に分けていれていた。
「ソウ、転移組の人、招待ってできるかな?」
「手紙出すだけなら構わないよ」
ユリはみんなにイクラを分けるつもりらしい。
あんなに食べたがっていたのに、みんなに分けるユリは凄いな。
ユリが手紙を書いて、ソウが配りに行った。
しばらくしてソウが戻ってくると、みんな食べたいと言っていたと話していた。
でも、遠くて来られないらしく、二人は困っていた。
王都からここまでは、一回の転移では人は運べない、全員を転移で連れてくるにはソウの負担が大きすぎるのだろう。
重たい「人」を連れてくれば。
「ご飯の方を運べば良いにゃ」
「なるほど!」
ソウは転移するときに、いきなりこっちを見て腕をつかまれ連れていかれた。
「ホシミさんのお子さん?の訳ないか、目の色が違うな」
おおむね同じようなことを言われながら4件をまわって、各店から器を預かってきた。今度持っていくときは、半分担当してくれと、ソウは言っていた。
「皆、楽しみにしてるって」
「そうなのね。良かったわ」
ユリが嬉しいなら、まあ、良いかな。




