夢の連絡
家につくと、悪趣味な馬車と派手なおばちゃんが待ち構えていた。
「ライラックさんだ、めんどくさそう」
ユリが呟いた。
こいつダメなやつなのか?
ライラックとか言う派手なおばちゃんはユリが馬車を降りるなり話しかけてきた。
「ごきげんよう。どちらにいってらしたの?」
「はあ。何のご用ですか?」
ユリが嫌そうに答えている。
俺はクーファンから飛び降り、先に家に入ることにした。
これはソウに連絡するべきだろう。
ユリ嫌がっているし。
「あ、ユメちゃん!」
ユリに呼ばれたが、心を鬼にして、ソウに連絡するためにその場を去った。
「猫なんてどうでもよろしいではありませんのこと?」
おばちゃんの声が聞こえていた。
あ!こいつ、前に小娘に絡んでいたやつか。
確実にユリは絡まれている。
ソウの結界のある階段まで来て『以心伝心』を使った。
「ライラックの襲撃にゃー!!」
最大量の魔力をぶちこんで『以心伝心』を送った。
これですぐソウが来るだろう。
階段で待ったがソウは来なかった。
直接ユリのもとへ転移したのだろう。
しばらくするとユリが外で呼んでいる声が聞こえたが、魔力不足で動けなかった。
優しい声だったし、危機ではないのだろう。
階段で丸まっているとユリが来た。
「ユメちゃん、こんな所に居たのね。何か作るけど、リクエストはある?」
「あるぞ」
俺は意見を伝えるため変身した。
「ユリのお菓子が食べたいにゃ」
「今日作った若鮎と冷凍庫のアイスとお店にあるパウンドケーキならすぐ出せるわよ?」
魅力的だが量が多すぎる。
「全部は食べきれないにゃ」
「じゃあ、全部を少しずつ出しましょうか?」
「良いのにゃ?」
ユリの提案は素晴らしい。
「じゃあ用意するわね。ユメちゃんそのまま抱っこしましょう」
ユリは俺が動けないことに気づいたのか、変身したままの俺を抱き抱え階段を上がっていった。
3~4歳児くらいある俺を抱っこするのは流石に重たいだろう。
若鮎1つと、パウンドケーキを半分と、アイスクリームが提供された。
「ユメちゃんどうもありがとう。ソウに聞いたわ」
ソウがしゃべったのか?
「ソウおしゃべりにゃ」
「あら、内緒だったの?」
「ソウを呼んだだけて何にもしてないにゃ」
「呼ぶのが大変ってソウが言ってたわよ?」
そんなことまで言ったのか。
「ソウ、おしゃべりにゃ」
「ソウはすぐ戻らないといけなかったみたいでね、ユメちゃんに甘い物作ってくれって言ったのよ」
あ、俺のためだったのか。
「なら仕方ないにゃ」
「ふふふ、二人は仲良しねー」
それは違うぞ?
ソウも俺もユリが大事なんだぞ?
「そんなことないにゃー」
黒猫に戻ってとりあえず逃走した。
照れた訳ではない。
しばらくするとソウが戻ってきたみたいだ。
充分休んで少し眠ったらユリが呼んでいた。
「ユメちゃーん、冷たいお蕎麦あるわよー」
声が聞こえた所へ顔を出した。
「よんだ?」
ユリがお椀を低くして中身を見せてくれた。
見たことないけど、うまそうだ。
俺は変身した。
「初めて見るにゃ。少しだけ食べて見るにゃ」
「はいどうぞ。おつゆは足りなくなってから少しずつ足してね」
「少しずつにゃ?」
「汁を一度にいれると具が浮いちゃって食べにくくなるのよ」
「成る程にゃー」
ユリは食べやすさまで気にしてくれてすごいなぁ。
先に食べ終わったらしいソウが満足そうに言っている。
「あーうまかった!」
「うふふ、美味しいわよね」
お試し量だったのですぐ食べ終わった。
「ユリ、まだあるにゃ?」
「あるわよ、おかわりする?」
「おかわりするにゃ!」
「はい、どうぞ」
ユリはおかわりまで見込んでるなんてすごい!
「ソウはアイスクリームでもいかが?」
「食べる食べる!」
ソウはアイスクリーム好きだな。
「あ!思い出した!ミートミンサーだ!」
ユリが突然叫んだ。
「なに?どうした?」
ソウも驚いたらしい。
「以前、ミートミンサーのことで転移組の人たちが来たときも、ソウが助けに来てくれたのが今日と似てるなぁって」
「そうだな。一緒だしな」
あーあれか。
「あの時もユメちゃんがソウに連絡したの?」
「連絡しただけにゃ」
「うふふ、ユメちゃん、ありがとう!」
この後ソウが、森林トリオについて話していたが興味がなかった。
「へぇ。名前知らなかったわ。誰も名乗らなかったし」
え?あいつら、名乗りすらしなかったのか?
次回 08月02日 13時予定です