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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の返却

朝起きると、昨日より前が思い出せない。

とうとう最後の日が来たようだ。


リビングに行くと、ユリとソウが心配そうな顔をして待っていた。


「今日は何日にゃ?」


少し微笑(ほほえ)んだユリが答えてくれる。


「今日は12月31日よ」

「わかったにゃ」


なんだか泣きそうになり、一旦部屋に戻ることにした。

部屋で私物の入った袋を確認していると、キボウが来たらしい。


「ユメー」

「入って良いにゃ」


「ユメー、だいじょぶ?」

「心配してくれてありがとにゃ。キボウ、これ受け取ってにゃ」

「なにー?」

「私の日記が入っているにゃ。ユリかソウに、明日以降に渡してにゃ」

「わかったー」

「他に、ユリに買ってもらったお皿が入っているにゃ。キボウにあげるにゃ」

「いーのー?」

「貰ってくれると嬉しいにゃ」

「わかったー。ありがとー」


この皿は、ココナツ食器店で買ってもらったものらしい。長細い横向きのハートのような形で、螺鈿細工で世界樹様と初代様(ルレーブ)が描かれている。


「リビングに戻るにゃ」

「わかったー」


私は用意してあった紙袋を2つ持ち、リビングに行った。


「ユリ、これ受け取ってにゃ」

「え?」

「ソウ、これ受け取ってにゃ」

「なに?」

「私の日記に書いてあるのにゃ。12月31日に、ユリとソウに渡す。ってにゃ」


2人は慌てて紙袋を覗き込み、物凄く驚いた顔をしていた。


「その日記に書いてあるままを伝えるにゃ。

私はこの時代に生きるべきではないが、あまりにも心地よい。しばし、ユリとソウに甘えよう。そして去り際には、痕跡の1つも残すことなく、潔く旅立とう。にゃ」


その日記は、キボウに渡してある。今読み上げたのは、ちょうど1年前の日記の記述だ。


「え、ユメちゃん、どこか行っちゃうの?」

「どこにも行かないにゃ。本来あるべきところに帰るのにゃ」


ユリが泣きそうだ。だからこそ、私は泣かない。


「私はずっとユメちゃんと一緒に居たいよ」

「ユメ、俺はユメは家族だと思っているよ」


私も一緒にいたいけどね。


「今日1日頼むにゃ」


私が微笑むと、ユリが更に泣きそうな表情をしていた。


「ユメー、ごはん」


キボウが、張り詰めた空気を壊してくれた。


「キボウ、お腹空いたのにゃ?」

「あ、ご飯にするわ。ユメちゃんも食べるわよね?」

「ありがとにゃ」


どうやら、みんな食べずに待っていてくれたようで、キボウだけでなく、ユリとソウも、今から食べるらしい。


黄色っぽい色のスープと、昨日作ったパンが並べられた。昨日食べきれなかったパンで、食べてみたかったものから食べてみることにした。そう言えば、なんでパンを作ることになったのかな。でも、どのパンもとても美味しい。


「美味しく出来て、良かったのにゃ」

「ユメちゃんとても上手だったわよ」

「ユメの作った黒糖クリームパン、旨いな」


黒糖クリームパン? それ、私が作ったの? 聞いても良いかな?聞かない方が良いかな。


ユリがお茶を取りに席を立った。


「ユメ、俺が作ったパンも食べてみてくれ」

「ありがとにゃ。ソウ、なんでみんなでパンを作ったのにゃ?」

「リラがパンを作ってはどうかって提案したんだよ」

「ありがとにゃ」


ソウのパンは、色々のっていてなんだか面白い。


「ソウ、いろんな味がして美味しいにゃ」

「そうか。そりゃ良かった」


ソウがニコニコと喜んでくれた。ユリが戻ってきた。


「ユリが作っていたパンも食べたいにゃ」

「どうぞ。クルミとメイプルシロップを巻き込んであるわ」


これは、まだ覚えている。ユリが楽しそうに作っていた。


「どーぞー。キボーのー」


キボウは、甘い匂いのパンをすすめてきた。


「それは、イチゴジャムを巻き込んで、イチゴ味のアイシングがかかっているわ」


全部食べてみたい。ちぎって、少しずつ食べてみた。


「みんな美味しいにゃ」

「作って大正解だったわね」

「リラに感謝なのにゃ」


パンを食べられるだけ食べて、お腹いっぱいになった。

食後は、少し休んでからゲームをすることになった。たぶん、私が忘れているだけなんだろうけど、ソウが丁寧にゲームのルールを教えてくれた。


私としては、今日覚えたばかりのゲームだけど、なぜか、何度もユリに勝った。1番いっぱい勝っていたのはソウだけど、私よりユリは弱かったのに、ユリはなぜかニコニコしていた。


お昼ご飯は、クリーミーな麺料理だった。なんだかコクがあって美味しい。


「美味しいにゃ!」

「よかったわ」


ソウとキボウは何も言わずに、こちらを見てニコニコしながら食べていた。


食休みをしてから少しして、散歩に行く事になった。

外の景色は、空気が澄んでいて、遠くまで見渡せそうな冷たさだったけど、気持ちが良かった。


家に戻って少しすると、「ゆうはん」だと言われた。知らない料理が出され、食べてみるとどれも美味しかった。


またゲームでもするか?とソウから聞かれ、良くわからなかったけど、うなずいた。


カードを使った簡単なゲームだった。裏返してある同じカードを探すものだ。


なんだか眠い。


だんだんカードがわからなくなってきた。


とにかく眠い。


「少し疲れたのにゃ」

「ユメちゃん?」


ユリが不安そうにこちらを見ていた。

あ、私は感謝を伝えなければ。


「ユリ、ソウ、キボウ、いつも一緒にいてくれてありがとにゃ。おかあさま、私を生んでくれて ありがとう」


最後まで言えた。

私は意識が遠退き、なんだか体が楽になった。




寝ている私のそばで、ユリが私が起きるのを待っている気がする。


早く起きなければ。


私は立ち上がり、ユリとソウとキボウに笑いかけた。



遠くから、おかあさまが優しく私を呼ぶ声が聞こえた気がした。

次回 2月14日です。

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