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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の好物

朝ご飯を食べながら思い出していた。昨日作った蒲鉾は、今食べている茶碗蒸しに入っているのだ。みんなが、私の作った蒲鉾を食べてくれている!


「昨日の蒲鉾作り、楽しかったにゃ」

「今日も何か作る?」

「作りたいにゃ!」


また、何か楽しい物を食べたり作ったり出来るみたい!


「あの、私ここに居て良いのですか?」


リラが、私のわがままで昨日も泊まってくれた。引き留めたのが私だったから、ユリに確認したかったのかな?


「リラちゃんの予定がないなら構わないわよ」

「今年は実家なので、特に予定もないです」


問題なさそうで良かった。ちゃんと、用事がないかは確認したからね。


「何が良いかしらね」

「陶芸やったし、俺は思い付かないな」

「そうねぇ」


ユリとソウが考えてくれているけど、良い案が思い付かないみたい。出来れば、今日中に終るものが良いな。でも、良い案がなくたって、みんなでワイワイしていれば楽しい。


「あの、パンを作るのはどうでしょう? 以前ユリ様が仰った、メロンパンやクリームパンなど、お話に聞く限りでは、今日中に出来そうですし」


リラが楽しそうな案を出した!


「それが良いにゃ!」

「ユメちゃんが作りたいならそれにしましょう」


ユリもすぐOKしてくれた!


「つくるー、つくるー!」


キボウもニコニコで、参加してくれるみたい。


「パン生地からこねる? 生地を作って、仕上げを楽しむ?」


ユリがわざわざ確認するのは、大変な作業なのかな?


「私に出来そうなところからが良いにゃ」

「だったら、パン生地は機械でこねて、みんなで仕上げを楽しみましょう。計量は一緒にお願いね」

「わかったにゃ」「はーい」「わかったー」


笑顔で聞いていたソウが、ユリに買い物を聞いていた。足りないものは、買ってきてくれるらしい。


ユリの手書きのノートを見て、粉や砂糖やバターをたくさん量った。量りながらリラが、猫型食パンと、配合がずいぶん違うんですねえと話していた。これはリッチタイプだからねとユリは答えていて、なんのことか聞くと、バターや卵がたくさん入る生地のことを、リッチと表現するらしい。粉以外の物が多いと、パンが柔らかく仕上がるんだって。


量り終り、ユリとリラが仕込んでいる間に、私は洗い物をしていたんだけど、本当は時間がかかる発酵と言う作業を、キボウが魔法で終らせてくれたんだって。キボウ、凄いね!



「まず、メロンパンは、こちらのクッキー生地を上にのせて焼きます。イチゴジャムを入れたジャムパン、あんこを入れて塩漬けの桜花を飾ったこしあんパン、芥子の実を飾った粒あんパン、コーンとマヨネーズをのせて焼くコーンパン、シナモンとグラニュー糖を巻き込んでつくるシナモンロール、他にも作りたいものがあったら相談してください」


たくさんのパンがのっている綺麗な紙を指差しながら、説明してくれた。とてもわかりやすい。大きな丸いパンが、美味しそう。たしか、メロンパンと呼んでいた。


「メロンパン作りたいにゃ!」

「はい。では、メロンパンから教えます」


パン生地を丸める作業が難しそうだなと思ったけど、やってみると、簡単に出来た。


「予想より簡単に出来たにゃ」

「肉まんとお餅で鍛えましたからね!」

「そうなのにゃ?」

「はい。ユメちゃんも、上手でしたよ」


リラによると、似た作業を、過去にたくさん経験したらしい。


見せてくれた絵のメロンパンより、かなり小さい気がするなと思っていたら、パンはこの後膨らむんだって。でも、色々食べられるように、小さめに作っているとも説明してくれた。


模様を付けるのに、ナイフの背を使うと説明されたけど、危険だと言って、私とキボウには、定規のようなものが渡された。ナイフの背を使うと、刃が自分の方に向くから、怖いなと思っていたので、ありがたいね。


「はい、次は、あんパン、ジャムパン、クリームパンを教えます」


ユリは1番難しいらしいジャムパンを教えると、何か違うものを作っているようだった。


「ユリ、何作ってるにゃ?」

「うふふ、かめろんぱん」


聞いてもわからないや。


「なんにゃ?」

「本体がメロンパンで、頭や手足が、クリームパンやジャムパンなのよ」


手足? あ、わかった!


「亀とメロンパンにゃ!」

「正解!」


なんか面白そう。私もそういうの作りたいなと思ったら、リラが作るみたい。


「ソウは何作ってるのにゃ?」

「3色パン」


あんパン、ジャムパン、クリームパンをくっつけただけに見えるけど、そういうパンがあるらしい。


「キボウは、何作ってるにゃ?」

「わかんない」


本人もわからないものを作っているらしい。

私は中にカスタードクリームが入ったメロンパンを作ってみた。


「良い時間なので、メロンパンを焼きます」


最初にみんなで作ったメロンパンを焼くらしい。


「楽しみにゃ」

「次は、調理パンを作りましょう」


コーンにマヨネーズをかけるだけの、簡単なものを教えて貰った。お皿みたいにパンを平たくして、その上にのせるだけで、とても簡単!


「カレーパンも作りましょう。過剰なくらいしっかり閉じることが重要です。油の中で破裂すると、かなり跳ねて危険です」


カレーを中に入れ、言われた通りにしっかり潰すようにして、中身が出ないように作った。その後の仕上げは、ユリがしてくれた。パンにパン粉を付けているのが、なんだか面白かった。


オーブンのタイマーが鳴り、メロンパンが焼き上がったらしい。


「温かいうちに、メロンパンを食べますか?」

「食べたいにゃ!」


片手サイズのメロンパンは、凄く美味しくて、あっという間になくなってしまった。もう少し食べたいな。


「シナモンロールは、1個では作れないので、まとめて作ります」


ユリが作り方を説明しながら作っていき、応用できるから覚えてねと言っていた。


「カレーパンを油で揚げます。適度にひっくり返しながら、両面綺麗な色が付くまでしっかり揚げたら、網の上に取り出します」


揚げたてが配られたけど、メロンパンと違って、なかなか冷めなくて、食べるのが大変だった。でも、これもとても美味しい。


「一通り教えたので、残りの生地は、好きなものを作ってください」

 

私は早速、メロンパンを量産した。

悩んでいたキボウが、ユリに何かを聞きに行って、戻ってきたら、パン生地に切り込みを入れていた。そして平らに伸し、イチゴジャムを塗っていたのだ。


ユリは、調理パンとシナモンロールを焼いた後、シナモンロールの作り方で、胡桃とメイプルシロップを使い、特製くるみパンを作っていた。私も何か違うのを作りたい。


「ユリ、私も何かオリジナルを作りたいにゃ」

「入れたいものとか、味とか、作りたい形とかある?」


そう聞かれてもわからなかった。


「私、何が好きだったにゃ?」

「黒蜜とか、こってり料理とか好きだわね」

「にゃー」


聞いても、答えが出てこない。


「黒糖で、カスタードクリームを作ろうか?」

「良いのにゃ?」

「勿論よ。すぐに作るから少しだけ待ってね」

「ありがとにゃ!」


ユリが私の好きなもので、美味しそうなものを作ってくれるらしい。出来た茶色いクリームは、ユリが魔法で冷ましてから渡してくれた。


「ユメちゃん、それ、美味しそうですね」


リラが声をかけてきた。


「ユリが中身を作ってくれたのにゃ」

「後は、模様でも付けたら、完全オリジナルになりますね」

「どうやって、模様を付けるのにゃ?」

「例えば猫の模様なら、クッキーの型に、ココアでも付けて、軽く押せば、猫模様がつくと思います」

「それ良いにゃ! リラ、ありがとにゃ!」

「どういたしまして」


リラは、キボウみたいに四角く伸していた。


「リラのは何を作っているのにゃ?」

「明日食べたいパン?」

「なんで疑問系なのにゃ。何が入っているのにゃ?」

「コーンと、ほうれん草です」

「美味しそうにゃ」


ユリはオーブンの前からみんなを見ているみたいで、ニコニコしていた。

ソウは何だか具をたくさん載せて作っていた。


ユリとリラが作っていた亀だけど、ユリは2つ作っていたみたいで、私とキボウにくれた。リラは、持ち帰る予定みたい。


特製黒糖クリームを入れたクリームパンが焼き上がったと、ユリに呼ばれた。


「猫が、大きくなったにゃ!」


小さなクッキー型で付けた猫は、パンが膨れて大きくなっていた。


焼き上がったコーンパンを食べたら、コーンとマヨネーズくらいしか使っていないのに、本当に美味しかった。ちょっと不思議。


「今食べない分は、鞄に預かるわよ」

「あー、そうか、パンだから明日には固くなっちゃうのか」


リラは今気づいたのか、残念そうに呟いていた。


「あなたは、預かる鞄に入れれば良いわ」


ユリはそう言って、キボウからリュックサックを受け取り、リラに渡していた。


美味しそうな個人で作ったパンは、みんなで1つずつ交換した。ステンレスのトレーに並べ、ユリはそのまましまっていた。いつでも出してくれるって。


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