夢の林檎
朝ごはんの時、今日からクリスマスのお菓子を売ると、ユリは話していた。
「私とキボウも手伝うにゃ?」
「手伝いたいなら作るものはいっぱい有るけど、無理に手伝わなくても大丈夫よ。それより、大きいアップルパイを焼くから、声をかけたら食べに来てね」
「わかったにゃ!」
「わかったー」
去年の日記にも、クリスマスの販売は、物凄く売れて物凄く忙しかったと書いてあった。
出来ることを何か手伝いたいなと思う。
キボウに誘われ畑を見に行き、殆どが枯れてしまっている少し寂しい情景を眺めていると、キボウが騒ぎ始めた。
「ユメー、あっぷうぱい!」
「キボウ、アップルパイは、林檎のパイと言う意味の名前にゃ」
「アップル!」
「それにゃ」
「ユメー、ありがとー」
「わかって良かったにゃ。それで、アップルパイができたのにゃ?」
「いいにおい!」
キボウは手早く手を洗うと、私の手を取り転移した。畑から厨房だ。
「いいにおーい」
「林檎の匂いがするにゃ!」
畑ではわからなかったけど、さすがに厨房に来たら、アップルパイの焼けた匂いが充満していた。
「ユメちゃんとキボウ君も食べる?」
「食べるにゃ!」
「たべるー、たべるー!」
ユリは切れていないアップルパイを、切り分けてくれた。
「おいしー、おいしー!」
「リンゴがたっぷりにゃ。美味しいにゃ」
「あれ? ユメちゃんとキボウ君は、昨日も食べたのではないのですか?」
紅茶を持ってきたシィスルに聞かれた。
「これと同じのは、食べてないにゃ」
「あ、なんか、色々作ったって、リラさんが言ってましたね」
「まだ林檎は残ってるにゃ」
「私もリラさんのお話にあった花っぽいアップルパイが作ってみたいです」
「それが、一番簡単だったにゃ」
「そうなんですか? ユリさまに頼んだら、作らせてくれるかなぁ」
「林檎はあるから、パイだけあれば良いと思うにゃ」
「今日の予定にパイの仕込みがあるので、あとで聞いてみます」
「作れると良いにゃ」
「はい」
私とシィスルが話し終わった頃、みんなも食べ終わっていて、片付け始めていた。
「食べ終わったら、ブッシュ・ド・ノエルの仕上げから始めます」
「はい」「はい」
シィスルとリナーリが、ユリからケーキの指示をされていた。
ユリは、市販のお菓子と言うキノコがたのお菓子を取り出し、色々説明をしていた。
「これがお話にあったお菓子なんですね! ユリ様、この赤っぽい方って、本物の茸は、毒茸ではないのですか?」
え?ドクキノコなの?
「その通りです。よく知っているわね」
うわ、ユリが肯定した。
「美味しいけど猛毒なので、死ぬ間際に食べたい茸 と呼ばれています」
「酷い名前にゃ」
思わず呟いてしまった。
その後、食べる郷土料理がある話をしていて、ドクキノコを食べるなんて、怖いなぁと思った。
ユリが見本を作り、シィスルとリナーリにブッシュ・ド・ノエルを任せていた。薪に蔦が這い、茸が生えている感じのケーキだ。
「これが見本です。そんなに難しい工程はないので、作ってみてください」
「はい」「はい」
次にユリは内倉庫から、畳まれた箱を持ってきた。
「メリッサさん、イポミアさん、この箱を組み立ててください。片側だけ閉じて、片側は開けたまま積んでおいてください。こちらの厚紙の上にある、ケーキストッパーの金具をスプーンなどを使い、立てて起こしておいてください」
「はい」「はい」
箱は、メリッサとイポミアが担当するみたい。
「ユリ、私とキボウはどうしたら良いにゃ?」
「クリスマスバージョンの、世界樹様のクッキーを作ります。まずは、いつもの通りにクッキーを作りましょう」
クッキーの生地は、ユリが作っておいたみたいで、型抜きをまずは頼まれた。
キボウと2人で楽しく型抜きをして、綺麗に天板に並べると、ユリが焼いてくれた。
全ての生地の型抜きが終わる頃、最初に焼いたクッキーは冷めていたので、上に塗るのを作ってもらい、私が塗っていった。
今日は、乾く前に少し飾りをつけるとユリが説明し、デザインを教えて貰った。
黄色い星形のお菓子を木の上に付け、色とりどりの飾りを配置良く飾り、それから時送りで乾かすらしい。
「かっこいー」
「素敵にゃ」
「よろしくお願いね」
「わかったー!」
「任せるのにゃ!」
クッキーはどんどん焼けてきて、ケーキクーラーという台にのせて冷ましている。
私とキボウは、楽しくクッキーを飾り付け、キボウが時送りして乾かしたものを、私が紙に挟んで番重に片付けていった。
ユリが、たぶん並ぶ人がいるだろうから、早くご飯で良いですか?とみんなに聞いていた。この寒いのに外に並ぶのは大変だよね。
早めのご飯になり、クッキーの飾りが終わらなかった。
手早くお昼ご飯を食べ、クッキーを再開したときに困らないように、少なくなった飾りを探してこようと、キボウと話し合った。
キボウが取りに行くと言い、なぜかお店に探しに行った。
「キボー、わかんない」
「キボウ、何やってるのにゃ」
お客に何か聞かれたのか、悩みながらキボウが答えていた。
「あ、ユメ様、質問してもよろしいでしょうか?」
「なんにゃ?」
「このメニューにある、アップルパイとは、持ち帰れるのでしょうか?」
お1人様1つ限りと書いてはあるけど、持ち帰れるかどうかは書いていない。
「ユリに聞かないとわからないにゃ」
「いつもは2日間同じメニューなのに、何で今日だけなのですか?」
「そうなのにゃ? とりあえずにゃ、アップルパイのりんごは、私が貰ったりんごなのにゃ。ユリには予定外なんだと思うにゃ」
「成る程! そんなご事情があったのですね!」
「もう良いにゃ? 手伝いの途中なのにゃ」
「これは、申し訳ございませんでした。どうもありがとうございます」
「よかったねー」
キボウを内倉庫につれていき、飾りを一緒に探すと、すぐに見つかった。
「開店します。今日もよろしくお願いします」
ユリの掛け声に、全員が「はい」と返事した。
しばらくクリスマスの世界樹様のクッキーを仕上げて、全部終わったので、少し休憩することにした。
部屋でゆっくり小説を読み、日記を読み返し、そろそろまた手伝おうかなと思っていたら、夕飯に呼ばれた。
夕飯には、ブッシュ・ド・ノエルをユリがカットし、私とキボウが先に選んで良いと言われた。
お菓子とはわかっているけど、何となく怖くて、黒いキノコのお菓子の方を選んだ。
赤いきのこのお菓子を選んだシィスルによると、赤いキノコは、イチゴ味らしい。




