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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の果物

「ユリ、今日も早く開けるのにゃ?」

私的(わたしてき)には、13時オープンなんだけど、きっと早くから並ぶわよねぇ」

「並ぶと思うにゃ」

「でもどんなに早くても、9時前には開けないわよ」

「わかったにゃ。9時に間に合うように行くことにするにゃ」

「ユメちゃん、お願いね」


朝ご飯の時に、今日の予定を確認した。

座っているので、体力的には疲れず、あまりお腹は空かないけれど、精神力や気力はごっそり持っていかれるらしく、体は重い。


何か、癒されるものを用意しなければ。


「ユリ、昨日のクズキリが、又食べたいにゃ」

「わかったわ。10時頃出すわね」


「ユメー。キボー、みずやりー。ユメー、やすむー」


私が少し疲れているように見えたのか、キボウから、植物の世話はキボウが1人でするから休んでいるようにと言う意味だろう事を言われた。


「キボウ、ありがとにゃ。少し休んでから、お店に行くことにするにゃ」

「わかったー」


私は、なるべく相手を判断できるようにと、過去の日記を読み返していた。


ところで私は、なんでお別れ会をしているんだろう?


早速日記を読み返すと、11月23日に来たらしい、ソウの妹と言う相手がわからなくて、お別れ会を開催して欲しいと、自分からユリに頼んだようだ。


どうやら私の記憶は、11月すら忘れてしまったらしい。


以降、お店を手伝うのは無理そうだな。と思った。忘れた物事が多すぎて、誰かに迷惑をかけてしまうかもしれない。


8時45分、そろそろお店に行って、準備でも手伝おうかなと階段を下りた。


「もうみんな居るのにゃ!?」


メリッサは居ると思ったけど、イポミアやリラも居た。


「おはようございます!」

「おはようにゃ」


さすがにイリスは居ないなぁと思っていると、ユリが声をかけてきた。


「ユメちゃん、今日は、リラちゃんがユメちゃんの助手をする予定よ」


イリスの代わりを探してくれたんだと、ホっとした。


「リラ、頼んだにゃ!」

「はーい。よろしくお願いします」


椅子の場所を直していると、なんと、イリスが来たのだ。


「おはようございます。ギリギリ間に合いました」

「おはよう。無理しなくて良いのよ。イリスさんありがとう」


ユリすらも、イリスに無理しなくて良いと言っている。


「いえ、途中からの方が大変なので、今日は最初から間に合うように来るつもりでした」


イリスはこっちを見ると、ニコッと笑ってから、着替えに行った。


「おはようございます」


なんと、シィスルまで来た。


「おはよう。シィスルちゃんどうしたの?」

「リラさんがろくに動けないと思いますので、少しお手伝いに参りました。私が9~12時まで。マリーが12~3時まで。リナーリが3~6時までお手伝いに来る予定です」


凄い。今日はみんな大集合なのかな?

マリーは多分マリーゴールドの事だと思うけど、リナーリって誰かな? 本人が来る前に聞いておいた方が良いよね?


「リラ、今、シィスルが言った、リナーリとは誰にゃ?」

「リナーリは、ミア姉、イポミアさんの末の妹です」

「ありがとにゃ」


9時ぴったりに開店になった。


私は見ているだけだけど、すぐ満席だ。


「ユメ様、ユメ様に会いに参りました」

「どうもありがとにゃ。この中から、好きなお菓子を選んでにゃ」

「ありがとうございます。ユメ様は、もう戻られないと聞きました。訳を伺ってもよろしいでしょうか?」

「一番は、世界樹様との約束にゃ。あとは、もう年なのにゃ。物忘れが酷すぎて壊滅的なのにゃ」

「そのようなご事情だったのですね」

「もしかして、遠くから来たのにゃ?」

「はい」


はいと返事をされた瞬間リラを見たけど、リラは心当たりがない人らしい。


「どこから来たのにゃ?」

「これは失礼いたしました。私は、果物の農園をしておりまして、ユメ様も、2度ほどお越しくださったことがございます」

「覚えていなくてごめんなのにゃ。私の記憶は、既に今年の11月が失われているのにゃ。ソウの妹すらわからなかったのにゃ」


リラを含めた全員が、二の句が繋げなくなっていた。


「キボー、きたー」


タイミング良く、キボウが来てくれた。


「これはキボウ様、ご無沙汰しております」

「ごぶさ?」

「キボウ、久しぶりって意味にゃ」

「わかったー。パイナップルー、バナナ、ピターヤ!」

「はい。その農園です」


最初はユリとソウとキボウと4人で行って、2度目は、ユリとソウの結婚のお祝いの果物を選ぶために、キボウと2人で行ったらしい。


「プレゼントはお受け取りにならないと伺ってはおりますが、いらした時に、ライチがお好きだと話されていたので、少しお持ちしました。よろしければ、おやつにお召し上がりください」

「どうもありがとうにゃ。リラ、渡せるお菓子を、全種類お願いにゃ」

「はい。こちらをどうぞ」


リラは既に用意していたらしく、さっと渡してくれた。


「ありがとうございます。お次の方に、お席を譲りますね」

「来てくれて、ありがとうにゃ」


空いた席に移っていった。


「ユメちゃん、ライチは冷やしておきますね」

「ありがとにゃ」


リラが持っていこうとすると、キボウに両手を出され、全て渡していた。キボウがしまってくれるらしい。


ユリから葛切りが届いた。キボウも一緒に食べるらしく、2人前有る。

頼んで良かった。本当に美味しい。


その後も、キボウはたまに来て、小さい子供にだけ、リーフパイを配っていた。大人しか居ないときは、店内をふらふらしている。


時計が11時を指したとき、マリーゴールドがキボウを迎えに来た。


ふと、店内で騒がしい一角があるのを見つけた。イポミアが何かお客から聞かれて、イリスに交代し、それでも解決しないのか、ずっと困ったように話しているようだった。イポミアもおたおたしてその場にとどまっている。


「お母さん、大丈夫かなぁ?」

「レモンの香りがする酸っぱくない飲み物って言ってるにゃ」

「ユメちゃん、あれ聞こえるんですか!?」

「イリスが、レモンシロップを入れた飲み物ではダメでしょうか?と言っているにゃ」

「ユメちゃん、凄いです」

「全部は聞こえないけどにゃ。大体聞こえるにゃ」

「ユメちゃん、耳が良いんですね!」


少しして、メリッサがそこへ近づき、条件にぴったりのハーブティがあると説明していた。


「なら、それを貰うよ」

「かしこまりました」


「あ、メリッサさん、俺もそれ飲みたい」

「こっちも!」


どんどん頼まれていた。


「値段を含め、確認してきます」


メリッサは、厨房へ確認に行ってしまった。


「なんとかなったみたいですね」

「良かったにゃ」


注文した人に出したあと、私とリラに確認に来た。


「ユメちゃんとリラは、冷たいのが良い? 温かいのが良い?」

「私は温かいのが良いにゃ」

「私は冷たいのを飲んでみたいです」


すぐに持ってきてくれたそのお茶は、透き通った美しい黄色いお茶だった。


「甘味があって、美味しいにゃ」

「あれ? これって、バタフライピーティが濃くなった感じに似てる? あ、そうか、材料、レモングラスか!」

「何かわかったのにゃ?」

「お茶は、濃いめに入れると、別物になると言うことがわかりました!」


次に席に座る人が来て、話を始めた。

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