夢の古語
今日は、10月5日Wの日。女性と未成年者の日。
「たぶん朝からお店をすると思うけど、朝から手伝ったら疲れちゃうから、手伝うにしてもお昼ご飯の頃からで大丈夫だからね」
「わかったにゃ。また、引き継ぎ時間にお店手伝うにゃ」
「ユメちゃん、どうもありがとう。ものすごく助かります」
朝、ユリとそんな話をしたので、ゆっくりしたあと、キボウと畑を見に行っていた。
収穫物をざるに入れ、使った道具類を片付けようとしたとき、キボウが言ったのだ。
「ユメー、ユリよんだー」
「ユリが呼んでるのにゃ?」
「ユメよんだー」
「にゃ! 私のことを呼んでるのにゃ?」
「あたりー」
私にはユリが呼んでいる声は聞こえなかったけれど、キボウが言うのだから、探されているのかもしれない。
「厨房に行ってみるのにゃ!」
「わかったー」
急いで手を洗い、収穫物だけ持って厨房に駆けつけた。
「ユリ、呼んだにゃ?」
「呼んでいないわよ?」
「にゃー。キボウが、ユリ呼んでるって言うのにゃ」
「あ、それなら、リラちゃんと話している中に、ユメちゃんの名前が出たわ」
「成る程にゃー」
キボウは、誰の話でも聞こえているのかなぁ? 普段からあまりしゃべらないし、わからないことが多いからなぁ。何て考えていたら、キボウの目的はリラに有ったみたいで、何かをリラに頼んでいた。
「ユメちゃん、クロ猫ッカン作らない?」
ユリに声をかけられた。
「それは何にゃ?」
「パイ生地で作る、クッキーみたいなお菓子よ」
「作ってみたいにゃ」
私が作れるものなら、作ってみたい。
ユリは、トレーにのっている切れ端みたいなパイ生地と、薄切りのアーモンド、胡桃、黒胡麻、グラニュー糖、ブラックココアをリラに渡し、私たちに任された。
「ユリ様、抹茶使って良いですか?」
「構わないけど」
「ありがとうございます」
リラが、材料になかった抹茶の使用許可を取っていた。
「リラ、抹茶は何に使うのにゃ?」
「クロ猫ッカンは、ユメちゃんのパイクッキーなんですけど、キボウ君もオリジナルが欲しいそうなので、作ろうかと思いまして」
「リラ、凄いのにゃ」
「ありがとうございます。ユメちゃん、先ずはこのパイ生地を、この波型のカッターで、切り分けてください。1cmくらいが理想です」
「わかったにゃ」
ピザを切るときに使った、丸い刃のピザカッターに似た形で、切ると、波なみに切れる。
その間に、リラは丸いカップ型に、何かをセットしていた。
「リラ、全部切れたにゃ」
「ありがとうございます。次に、このカップの、この猫型の部分に、切ったパイを薄く敷き詰めます。その上に、アーモンドスライスとクルミと黒ゴマを適当にのせてください」
丸い型だと思っていたら、中が、猫型だった!
「猫型にゃ! 凄いにゃ!」
「先ほど、この型のお話をしているときに、ユメちゃんの名前が出たので、キボウ君は来たみたいですね」
「成る程にゃ!」
パイ生地は焼くと大きくなるから、薄めにのせるらしい。
私が、言われたとおり作っていると、リラは世界樹様のクッキーに使う抜き型を持ってきて、同じようにパイ生地を詰めていた。
キボウが、私の方を手伝って、各種ナッツを均等にのせてくれた。
「リラ、出来たにゃ」
「そうしたら、ブラックココアを、茶漉しを使って、振りかけてください。少しで良いですよ」
リラは、抹茶を振りかけて作っていた。
「オーブンセットしてあるから、焼けるわよ」
「ありがとうございます」
ユリに声をかけられ、リラが全部オーブンに入れてくれた。
「焼き上がりが楽しみにゃ」
「たのしみー、たのしみー!」
リラに聞くと、焼くのに10分以上はかかると言われたので、畑に戻ることにした。片付けをせずに来てしまったのだ。
畑に出しっぱなしだった、じょうろなどを片付け、厨房に戻ると、先ほど作ったクロ猫ッカンは焼き上がったらしい。
あれ?キボウに頼まれたっていう、木の形のもクロ猫ッカンって呼ぶのかな?
そして、キボウは出来上がったパイのクッキーを渡されるときに、名前を告げられていた。
「キボウ君、これで良いですか? 名前は、『クロロッカン』です。古語の、ロロックァをもじりました」
「キボー、ロロックァ! キボー、ロロックァ! リラ、ありがとー!」
キボウが大喜びだった。どういう意味だろう? キボウには意味がわかったみたい。後でリラに教えてもらおうかな。
当然のように、キボウは転移して消えた。きっと、世界樹様に見せに行ったんだろうね。




