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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の説明

「王妃殿下がお見えになりました」

「お入りください」


入ってくるなり、ハイドランジアはハイテンションだった。


「美容ジュースが持ち込まれたのですか!?」

「ユリが作ったのを持ってきたにゃ」


私を見て、少し驚いていた。


「ユメちゃん、ユリ様の、なのですか?」

「ジュースを知っているということは、今までどうしてたのにゃ?」

「ローズマリーが、ごく少量を持ち込む以外、作り方も原料も、謎に包まれておりました」

「ユリが、ローズマリーから材料をたくさん分けて貰ったって言ってたにゃ。これは、赤紫蘇(あかしそ)という植物を煮出して作るのにゃ。葉っぱを洗うのを私もキボウも手伝ったのにゃ。6人くらいで洗ったのにゃ。大変だったにゃ」

「たいへん、たいへん!」


ありがとうございますと言いながら、ハイドランジアとアネモネが頭を下げていた。


「成る程、ローズマリーが作らせていたのですね」

「たぶん、教えたのはユリにゃ。ユリは、パールホワイト伯爵の屋敷で、サンフラワーにも教えていたにゃ。リラと一緒に教えに行ったのにゃ。ホワイト侯爵からの依頼だったらしいにゃ」

「なぜ、ホワイトは知っていたのでしょうか?」

「夏休みに遠足に行ったのにゃ。洞窟と滝を見に行ったのにゃ。その途中に、赤紫蘇が生えていたのにゃ。少し分けて貰ったからソウがホワイト侯爵に報告したのにゃ。それで、何に使ったのか、サンフラワーから代理で問い合わせがあったらしいにゃ」

「その様なことが!?」


ちなみに、ホワイト侯爵は、すぐに赤紫蘇を探させたが、農民すらも雑草と思っているので、探し出せないでいる。ユリは洗った赤紫蘇を持ち込んだので、パールホワイト家で作ったのを見ていたメンバーも、生えている姿は確認しておらず、ホワイト侯爵に頼まれて現地を歩いてみたが、探せなかったのだ。


「ハイドランジアの分も持ってきたにゃ」

「え?」

「希釈して飲むのにゃ」


減っていないボトルを1本渡した。


「3~5倍に氷水で割って飲むのにゃ」

「え、こんなにいただいてよろしいのですか?」

「3本持ってきたにゃ。ハイドランジアとアネモネが1本ずつにゃ、残りをみんなで分けたら良いにゃ」

「ユメちゃん、ありがとうございます! 大変失礼いたしました。どうぞごゆっくりお過ごしください」


ハイドランジアは、さっさと退室しようとしていた。


「クッキーは食べたのにゃ? クッキーの方が、おすすめなのにゃ」

「これからいただこうと思います」

「先に言っておくにゃ。ローズマリーのところで教えるのは、10月になってかららしいにゃ」

「かしこまりました」


ハイドランジアは、優雅に挨拶をして退室していった。


「あんなに浮かれているハイドランジアは、初めて見たにゃ」

(わたくし)もです。でも、わかる気が致します。美容ジュースの入手は大変でした。すっかり忘れておりました」


世界樹の森に行っていた5年で、すっかり忘れていたらしい。


「アネモネも、飲みすぎない程度に飲んでにゃ」

「ありがとうございます。ところで、うかがってもよろしいでしょうか?」

「なんにゃ?」

「こちらのクッキーを教えるのが10月というのは、なぜでしょうか?」

「今クッキーに使っている菊の花は、ソウがむこうの国から買ってきたのにゃ。この国で用意できるのは、群青領らしいけどにゃ。この赤い色のジャムに使う花が、9月の下旬からしか収穫できないらしいにゃ」


成る程と納得しかけたアネモネだが、ふと思ったらしい。


「もしや、黄色い花は用意が出来るのですか?」

「そうらしいにゃ。ジャムは赤いけどにゃ。花は、薄紫色なのにゃ」

「そうなのですか?」

「面白いからにゃ、紫色の菊を入手してから教えたいらしいにゃ」

「それは、納得しかない理由ですね」


アネモネは、笑いながら納得したらしい。


「ユメちゃん、キャラメルを見たら、知らない味が入っていました」

「プラタナス、どれが知らないにゃ?」

「この、キウイフルーツと書いてあるのは、初めて見ました」

「販売に当たって、種類や数を調整したらしいにゃ」

「今なら、売っているということですか?」

「その通りにゃ。それは売っているのを持ってきたのにゃ」


全種類入りのセットを、袋ごとプラタナスとカンパニュラに渡した。


「これは分けずに、自分の分にして良いにゃ。残りを分けるのにゃ」

「ユメちゃん、ありがとうございます」

「ユメちゃん、ありがとうございます」


「どーぞー」


キボウは、矢車菊ののったラング・ド・シャを配っていた。


「キボウ、残してたのにゃ?」

「ユリ、キボーくんどーぞー」

「ユリがキボウに、くれたのにゃ」


キボウは、侍女やメイドにも配り歩いていた。


「ユメちゃん、これはなんですか?」

「こっちの菊花ジャムのクッキーは、売り物だけどにゃ、この、矢車菊の花弁(はなびら)がのったラング・ド・シャは、サービスで配ったのにゃ」

「この色がきれいなのは、花ビラなのですか!?」


ピンク色と青紫色の花弁がのった場所を見て、カンパニュラが驚いていた。


「9月9日が、重陽(ちょうよう)の節句という、菊のお酒を飲んだり、菊の花を愛でたりする日らしいにゃ。それで、菊のお菓子を作ったみたいにゃ。お店はたくさん菊が飾ってあったにゃ」

「なんだか、すごいですね」

「ユリは凄いのにゃ」


ユリの予想通り、アネモネとハイドランジアが特に大喜びしていた。


私が伝えた通りに、水玉サイダーが用意され、5人分並べられた。持ち込んだのは、同じ種類をまとめて入れた容器だったので、3玉ずつをグラスに入れ、サイダーを注いだ見た目はとても華やかで、すぐにカンパニュラとプラタナスは、食いついてきた。


「ユメちゃん、これはなんですか?」

「水玉サイダーにゃ」


早速いただくと、カンパニュラとプラタナスは、赤いジュースより、こっちが良いと言い、シソジュースの残りの1本は侍女たちで分けることになり、侍女たちの目が輝いていた。


「くばったー」


キボウが、好きに配り気が済んだのか、戻ってきた。いったい何処まで行ってきたのだろう。


「水玉サイダー、キボウの分もあるにゃ」

「たべるー」


プラタナスが質問に来た。


「ユメちゃんとキボウ君は、いつも色々食べられるのですか?」

「世界樹の森にキボウが持ち込んでいたものは、全部食べているにゃ」

「それは、ユメちゃんとキボウ君のおやつでですか?」

「お店にいる全員が、食べているにゃ」

「働いている者たちも全員ですか!?」


何だか、部屋にいる全員が驚いているようだった。


「ユリが言っていたにゃ。急ぎの時は、味見程度でも仕方ないけどにゃ、ちゃんと1人前食べないと、試食したことにはならないらしいにゃ。味見でどんなに美味しくても、1人前食べたらくどかったなら、製品としては失敗らしいにゃ。だから、必ず1人前提供されるにゃ」


貴族とは根本から違うとは思っていたが、そもそも目指すものが違うんだなと、みんなが思ったらしい。


「商売人の考え方なのですね」


聞いていたアネモネが呟いていた。


「平民に安く美味しいものを出すお店が、ユリの理想らしいにゃ。ユリに自覚はないけどにゃ、ユリは仕事中毒にゃ」

「ユリ様は働き過ぎだと、誰もが感じておりますが、ユリ様ご本人に、ご自覚がなかったとは」


「今日はカエンの結婚式で向こうに行ってるからにゃ。少し休めると良いなと思ってるにゃ」

「そういえば、その件でお尋ねしようと思っておりましたが、名誉国民であるカエン様に、国からお祝いを出させていただきたいのですが、どのようなものなら喜ばれるのでしょうか?」

「私もわからないにゃ。ユリとソウに、後で聞いておくにゃ」

「よろしくお願いいたします」


国としては、女神の慈愛・パウンドケーキを100本と時送り・世界樹様のクッキー100枚を御祝いに贈っているので、これ以上の贈り物は必要ないのだが、王宮としては、なにか贈りたいのだろう。

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