夢の延長
リラは本を2冊取り、「これにします!」と嬉しそうに抱え、部屋を出た。私はリラと一緒に厨房へ戻り、菊の処理の続きをしようとした。
「キボウ、お待たせにゃ」
「だいじょぶー、キボー、ぜんぶー」
「あんなにたくさん有ったのに、全部終らせたのにゃ!?」
「おわったー」
「キボウ、手伝えなくてごめんなのにゃ」
「だいじょぶー、だいじょぶー」
10分程度だったのに、キボウは凄い。もしかして私が手伝わない方が、キボウ的には早く終らせることが出来るのかもしれない。
「お昼いただきまーす」
少し落ち込んでいると、イポミアがお昼を食べに来た。よし、ここで挽回しよう。今、配膳が一人のはずだから、お店を手伝おう!
「メリッサ、何を手伝ったら良いにゃ?」
「ユメちゃんありがとうございます。持ち帰りのサファイアクリームソーダゼリー5個を、預かっている冬箱に入れたいんですけど、手がまわらなくて、お願いしても良いですか?」
「任せるのにゃ!」
わかりやすい仕事を頼まれたので、早速手伝いを始めた。
冷蔵庫からサファイアクリームソーダゼリーを、預かり場所に置いてある冬箱に詰め込み、ぐらぐら動かないように、ボール紙の輪っかも詰め、冬箱を預かり場所に戻した。
「メリッサ、詰めて箱は戻しておいたにゃ」
「ありがとうございます!」
「他にはないにゃ?」
そこへ新しいお客が入ってきた。
「いらっしゃいませー」
メリッサが忙しすぎて指示が出せそうにないので、ユリに聞こうと厨房へ行ってみた。
ユリはクッキーを焼いているみたいなので、ジャムをのせるのを手伝おうとしていたら、キボウが声をかけてきた。
「ユメー、クッキー」
「黒猫クッキーを欲しい人がいるのにゃ?」
「あたりー」
私はキボウと一緒にお店に行き、頼んだ人は誰なのか教えてもらった。
「黒猫クッキーにゃ」
「黒猫様、ありがとうございます」
ニコニコと受けとる高齢のご婦人は、大事そうにハンカチに包んでいた。
「私の名前は、ユメにゃ。ユメと呼ぶと良いにゃ」
「かしこまりました。ユメ様」
「あの、ユメ様、おいくらお支払すればよろしいのでしょうか?」
連れの若い男性か質問してきた。孫かな?
「黒猫クッキーは、私の言い値らしいからにゃ。貴族やお金持ちがたくさん払うから、子供からは貰わない事もあるのにゃ。大人は、200☆以上なら、いくらでも構わないにゃ」
若い男性は、500☆支払ってくれた。
厨房に戻ると、メリッサがユリに告げていた。
「ユリ様ー、水玉サイダーの丸いのの在庫が残り少ないです」
「ごめんなのにゃ。すぐに用意するにゃ」
これはユリに頼まれた、私の仕事だ。急いで用意しなければ。ソウが冷蔵庫から丸い寒天を容器ごと出してくれ、お椀を50個用意して分けていくと、43椀しか作れなかった。
「ユリ、43人前しか作れないにゃ」
「午前中に仕込んだ水玉を使います。今取り出すから少し待ってね」
「手伝うにゃ!」「手伝うよ」
出して貰うのを待っていても仕方がないし、手分けした方が早いよね。ユリとソウと3人で丸い寒天を取り出した。
「あの、ユリ様、水玉サイダーの、水玉だけ持ち帰りたいとおっしゃるお客様が」
「容器はどうするの?」
「何か売って欲しいそうです」
「ちょっと直接聞くわ」
ユリはお椀に入っているフルーツ寒天を大きいココットに入れかえ、お店に行ってしまった。
これは、この後あの状態のフルーツ寒天が注文されるはず!私は急いで大きいココットを用意し、先読みで作ることにした。
「ユメ、何してるんだ?」
私が並べた大きいココットを見て、ソウが聞いてきた。
「ユリが大きいココットに入れて持って行ったにゃ。きっと注文されると思うにゃ」
私は大きいココットを20個用意したのだ。それを数えたソウが言った。
「そんなにたくさん出るか?」
ソウはもっと少ないと考えているみたい。誰に聞いたら良いだろう?
「にゃー。リラはどう思うにゃ?」
「え?私ですか? 今だけで25くらい注文がくるんじゃないかと思います」
リラの意見は、私よりも多かった。
「俺は今回だけなら、20以下だと思うな」
「いくつ来るか楽しみにゃ」
3人でワクワクして待っていると、ユリが戻ってきた。
「今ので注文が殺到するかも」
「大きいココットに作ってるにゃ!」
「ユメちゃん、優秀ね!」
やった、ユリに褒められた! ユリの後から来たメリッサは、ワクワクの結果を発表した。
「持ち帰り、水玉だけ、合計25お願いします」
「リラの予想が当たったにゃ!」
「リラさすがだな」
「リラ凄いにゃ」
「当たって良かったです」
ユリとメリッサが話していたけど、持ち帰りも飲食と同じ700☆らしい。
ユリは、足りなさそうなフルーツ寒天を計量しようとして、リラに止められていた。
「ユメちゃんとキボウ君は、私と一緒で良いわよね?」
昼ご飯の時間を聞かれた。
「もう30分手伝おうと思うにゃ」
「そうなの?」
「イポミアも復帰したら、少し長めに休むにゃ」
「わかったわ」
「キボウ君は、私と一緒にご飯食べる? ユメちゃんと一緒にご飯食べる?」
キボウは少し考えた後答えていた。
「ユメー」
私に付き合ってくれるらしい。
「キボウ、付き合ってくれて、ありがとにゃ」
「よかったねー」
「ユメちゃん、メリッサさんを呼んで貰える?」
「わかったにゃ」
ユリに頼まれて、お店にいるメリッサを呼びに行った。
「メリッサ、そろそろご飯に入ってにゃ」
「ありがとうございます。イリスさんに引き継いでから休みたいと思います」
メリッサが厨房へ行き、イリスがお店に来るあいだ、私は1
人でお店にいた。
「黒猫様、この水玉サイダーは、明日もありますか?」
「ユリが仕込むって言っていたから、有ると思うにゃ」
「明日も楽しみです」
「明日は、イベントだと思うにゃ」
「そうなんですか?」
「午前中に、明日配るクッキーを作ったにゃ」
店内がざわざわした。あれ? 内緒だったのかな?
「あ、そういえば、3月3日、5月5日、7月7日とイベントだったから、9月9日もイベントなのか!」
「それであってると思うにゃ。でもユリが飛んだりはしないと思うにゃ」
「おとなしく、楽しみにすることにします」
イリスがお店に来たので、イポミアが来るまで手伝うと伝えた。
「ユメちゃん、ありがとうございます」
「なにしたら良いか教えてにゃ」
「今日扱っているのは、キャラメルセット、サファイアクリームソーダゼリー、アフォガード、バニラアイスクリームコーヒーシロップ、バニラアイスクリームチョコソース、水玉サイダーです。軽食は、普段通りです。サービスは、キャラメルを配っています」
「大丈夫にゃ。今言われたのは把握してるにゃ」
「完璧ですね」
イリスからは、持ち帰り希望のフルーツ寒天を頼まれたり、キャラメルセットの持ち帰りの対応を頼まれた。
「ユメちゃん、お時間です。ゆっくりお昼休み取ってくださいね」
「イポミアお昼休み終りにゃ?」
「はい。とても助かりました。ありがとうございます」
「キボウ、お昼ごはんにゃ」
「わかったー」
キボウを誘って厨房へ行き、ユリに声をかけた。
「ユリ、ご飯頼むにゃ」
「キボーも、キボーも!」
「はい。用意できているわよ。ユメちゃん、キボウ君、人が少ない間の配膳、ありがとう」
「役立って良かったにゃ」
「よかったねー」
すぐ食べられるように、ごはんが用意されていた。
「おやつは何を食べる?」
「キボー、あおぜーりー!」
「私は水玉サイダーが良いにゃ」
「食べ終る頃用意するわね」
「わかったー」
「頼んだにゃ」
キボウは、サファイアクリームソーダゼリーを3つ食べていた。これ、今日残ったら、キボウが食べて良いらしい。
ゆっくり休めるので部屋でのびていたら、眠ってしまったらしく、起きたときは17時を過ぎていた。




