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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の店内

ユリが募集要項の紙を、外に貼り出して戻ってきた。


「これで、誰か応募してくれると良いわね」

「えーとユリ様、断る用意を考えた方が良いと思いますよ?」

「え?」


応募が多すぎて、断る方法を考えた方が良いとリラは言っていた。その言葉を証明するがのごとく、すぐに人が来たのだ。


「あのー、どなたかいませんかー?」


ユリよりも、リラの反応が早かった。


「はーい。外の貼り紙ですか?」

「はい。読めないところを教えてください」


リラが丁寧に説明しているのが聞こえた。戸が開けっぱなしなのかもしれない。


「私でもできますか?」

「大丈夫だと思いますけど、ユリ様に伝えてきますね」


リラがユリを呼びに来た。


「早速応募者です」

「そうみたいね。リラちゃん知り合い?」

「たぶんお母さんが知り合いです」


リラの言葉に、慌ててイリスが覗いて見ていた。


「あー、最近嫁いできたご近所の奥さんです。愛想の良い働き者な感じの人です」

「なら、採用しましょう」


なんか、面接前に採用が決まったみたい。それでも面接はするらしく、店内に呼んで椅子をすすめていた。


面接はユリに任せて、仕事をしよう。


「リラ、何したら良いにゃ?」

「世界樹様のクッキーのアイシング塗って貰えますか?」

「わかったにゃ」


すぐにキボウも付いてきて、クッキーを並べるところから手伝ってくれた。


重ねられるケーキクーラーを全て使い、キボウと2人で世界樹様のクッキーを天板から並べ替え、私は端からアイシングを塗っていった。

ケーキクーラー1枚分が塗り終わると、キボウが時送りをして、青い食用インクで、Alstroemeriaのスタンプを押し、出来上がったクッキーをスリーブに挟んで番重に並べていく。


ちょっと前まで、時送りするだけだったような気がするけど、しまうまでしてくれるのは、とても助かる。


ユリは戻ってきたと思ったら次の人が来て、バタバタ厨房とお店を行ったり来たりしているようだった。


クッキーが終わり、ユリが又いないので、リラに聞いてみた。


「リラ、次は何するにゃー」

「お昼ごはんの用意を手伝って貰っても良いですか?」

「何すれば良いにゃ?」

「このお鍋を焦げないように、ゆっくり混ぜていて貰えますか?」

「わかったにゃ」


「キボーは? キボーは?」

「切ってある野菜をサラダ用に並べて貰えますか?」

「わかったー」


ユリの希望通り、6人決まったみたい。


「ユリ様、募集の紙を剥がさなくて大丈夫ですか?」

「そうよね、剥がした方が良さそうね」


リラとユリが話しているとき、次の人が来た。


「こんにちはー」


「遅かったー」

「リラちゃん待って、話を聞くわ」


ユリが言ったのど同時くらいに、イポミアが言った。


「カーシア?」

「イポミア、知り合いにゃ?」

「妹かもしれません、見てきます」


本当に妹だったらしい。イポミアって、3人姉妹なのかな?


「短期のお仕事があるとトゥリーパさんから聞きました。私も雇って貰えないでしょうか?」

「ユリ様、カーシアを、よろしくお願いいたします!」


イポミアの声がはっきり聞こえた。

その後和やかに話しているみたいで、少しするとリラとイポミアは戻ってきた。でも、ユリはしばらく話し込んでいるみたいだった。


「ユメちゃん、ありがとうございます。このくらいで充分です」

「次は何するにゃ?」

「もうお昼ごはんなので、カトラリーをおねがいします」

「わかったにゃ」


私がカトラリーを揃え終わった頃、ユリは戻ってきた。「あらー」と言いながら、リラに全て任せてしまったことを謝っていた。


「時間だし、お昼ごはんを食べましよう」

「ホシミ様をお待ちしなくて良いのですか?」

「ソウは、そのうち帰ってくると思うわ。今日は頼んだものを受け取りに行っているはずなのよ」


そういえば朝ご飯の時、そんな話を聞いた気がする。


「ただいまー!」


良いタイミングでソウが戻ってきた。


「ユリ、受け取ってきたよ」

「ありがとう」


ソウが鞄から小さな箱に入った何かをたくさん取り出していた。同じ柄の箱が10個くらいずつあって、15~16種類あるみたい。模様の他、100枚入りと書いてある。そばまで見に行ってみた。


「うわ!苺の絵が描いてある!」

「こっちはヨーグルトって字が書いてあるにゃ」


他にもバラの絵だったり、珈琲豆の絵が書いてある紙がある。


「なにー? なにー?」

「キャラメルの包み紙にゃ?」

「そうだぞ、凄いだろ?」


おしゃれな文字で「Alstroemeria」と入っていた。これは、ゴブレットグラスと同じデザインの文字かな?


「あれ? これって、切らなくて良い大きさですか?」

「そうよ。作って貰ったのよ」

「凄ーい! 紙を切るの、地味に大変でしたものね」

「ユリ、見たことがない種類の名前もあるにゃ」

「そのうち作るわ」


それは楽しみだ!


「さあ、ご飯を食べてしまいましょう」


ユリは、ソウとマーレイとイリスに朝作ったコーヒーゼリーを出すついでに、私とキボウに2個目を出してくれた。


「2個目を食べて良いのにゃ?」

「ユメちゃんとキボウ君のために作ったものだからね」

「ありがとにゃ」

「ありがと、ありがとー」


後から食べた3人も美味しいと言っていたし、今度売るためにも作るみたい。リラが凄く喜んでいた。


食べ終わる頃、ふと外を見ると、又、人が並んでいるのが見えた。ユリも見えたのか、ドアの外まで見に行っていた。


「まだ開店はしませんが、外は暑いので、店内で待ちますか?」

「ありがとうございます!! 大変助かります!」


食べ終わった食器を片付けていると、並んでいた人が、汗をかきながら店内に入ってきた。店内は、氷風機(ひょうふうき)・冬風のおかげで涼しいのだ。


「店内は別世界ですな。本当にありがたい」

「ハナノ様に直接お声をかけていただけるなんて、帰ったら自慢しよう!」


店内で話す客が気になったのか、リラが客に聞きに行っていた。キボウと厨房の出入り口から覗いていると、リラは冷茶をすすめているようだった。


「まだ、お菓子や軽食は出せませんけど、冷茶くらいならコップを出すだけなので出せますけど、注文しますか?」

「リラちゃん、頼みます!」

「こっちもおねがいします」


全員希望みたい。よし、私も手伝おう!


「キボウ、コップを持っていくのにゃ!」

「わかったー」


私たちの後ろから、メリッサとイポミアが、各テーブルに置く冷茶を持ってきてくれた。リラが少し驚いていて面白かった。

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