夢の青苺
朝ご飯の時、ユリとソウが話していた。
「頼まれたもの揃えてきたぞ」
「ソウもお休みだったのに、ごめんね。ありがとう」
「食品店1件で済む買い物だから手間はないよ」
ソウは、お肉の塊を4つと、店ではあまり見かけない野菜を取り出し、ユリに渡していた。これはセロリらしい。
「何を作るのにゃ?」
「コンビーフよ。多分リラちゃんが来ると思うわ」
昨日は、1日休みにするから何か作るなら日を空けるようにと、ソウがリラに直接頼んだらしいので、今日は絶対来るだろうと予測を話していた。
「ユリ、コンビーフは難しいのにゃ?」
「簡単よ。塩を揉み込んで、香味野菜とハーブと一緒に、3~7日くらい冷蔵庫で漬け込んでから、ゆっくり茹でて、柔らかい繊維を細かく裂くのよ」
「今日は、漬け込むだけにゃ?」
「私の予定では、そうだけど」
それ、キボウに頼んで時送りして貰えば、今日中に出来上がるってことなのでは?
ユリとキボウも気づいたらしく、ユリが慌てだした。
「キボー、てつだう?」
「リラちゃんが気がついたら、時送りして貰えるかしら?」
「わかったー」
ソウは、笑いながら見ていた。予測済みだったらしい。
ご飯のあとは、キボウと畑の様子を見に行き、昨日の世話について説明した後、暑さでぐったりしている植物に、日除けをかけたり、鉢を半日陰に移動したりしていた。
ほどよい時間になったので、出掛けようかとキボウに話しかけようとしたとたん、キボウが転移で消えた。
これはきっと、リラに呼ばれたのかな?
私は、使った道具を片付け、手をきれいに洗ってから、厨房を覗きに行ってみた。
「キボウ、ここにいたのにゃ」
「あら、ユメちゃん。ユメちゃんもコンビーフ見る?」
テーブルの上に、朝見たお肉はのっていない。
「今から作るのにゃ?」
「今、塩と香草で漬け込んで、キボウ君に時送りして貰ったので、これから茹でます」
「それ、作業ほとんど終わってるにゃ?」
「まあ、そうね」
「にゃはは。キボウと出掛けてくるにゃ」
なんだか予想通り過ぎて、笑ってしまった。
「ユメちゃん、明日はキャラメルを持っていけると思うわ」
「ありがとにゃ。期待してるにゃ」
「キボウ、出掛けるにゃ」
「わかったー」
世界樹の森では、今日は持ち込むものがないので、ホワイトボードに、「次回は、美味しいキャラメルを持ってきます。お楽しみに!」と書いてキボウに渡した。
返ってきたホワイトボードには、「どんなものだかわかりませんが、楽しみに待っております」と書いてあった。もしかすると、キボウに詳細を聞いてみて撃沈したのかもしれない。
城につくと、複数の兵士がバタバタ走り回っていた。キボウが、いつものソウの部屋に行く前に、城の見晴台に一度転移して、状況を見せてくれたのだ。
「どうなってるのにゃ?」
「わかんなーい」
ソウの部屋に転移して貰い、メイドに聞いてみた。
「今日も演習があるのにゃ?」
「ユメ様。いいえ、兵士の一部が、野営地に何かを取りに行くと、話しておりました」
え? 野営地? それってまさかブルーベリー狩り?
「ギプソフィラか、話がわかる人を呼んで貰えるにゃ?」
「かしこまりました」
指揮を取っていたらしいギプソフィラが、こちらに呼ばれてきた。
「ユメ様、バタバタしておりまして、大変申し訳ございません」
「野営地に何しに行くのにゃ?」
「魔力の増強の練習を面倒がる兵士が、ブルーベリーの乾燥は楽しんで進んでするらしく、ブルーベリーを採って来ることになりました」
「わりとまともな理由だったにゃ」
「なーにー?」
「キボウが採ってくれたブルーベリーが、みんなも欲しいらしいにゃ」
「わかったー」
ギプソフィラについていき、集まった兵士たちと一緒に、ブルーベリー狩りに行くことにした。
「籠は持たないのにゃ?」
私の疑問に、持ち帰る容器がないと初めて気がついたのか、慌ててメイドに、籠を用意してくれるよう頼んでいた。
屈強な兵士たちが、メイドたちが慌てて用意した可愛らしい籠などを持ち、王城の転移陣から、キボウが転移をしてくれた。
キボウのことだから、直接ブルーベリーの前かと思ったら、野営地の転移陣の上だった。
私以外、ほとんどの人が知っているらしいブルーベリーの有る場所まで、歩いていった。途中、棘だらけの枝があり、払おうとした人が止められていた。
「キボウ、あの棘の枝は何にゃ?」
「ラズベリィー」
「木苺なのにゃ!?」
「あたりー」
それは、払うのを止められるわけだ。そばにいた兵士に聞くと、甘酸っぱくて美味しいらしい。
木苺の枝を避けて進むと、目の前にブルーベリーの大きな木が何本もあった。
「凄いにゃ」
「キボー、とるー?」
「頼んで良いのにゃ?」
「いーよー」
「みんな、籠を前に出すのにゃ!」
「はい!」「かしこまりました!」「わかりましたー」
「ブルーベリィー!」
籠めがけて、ブルーベリーが飛んできた。
「おおー!」「凄い!」「キボウ様万歳!」「お見事です」
ギプソフィラがこちらに歩いてきた。
「キボウ様、どうもありがとうございます」
「よかったねー」
ふと見ると、キボウも自前の籠に、ブルーベリーを山盛り持っていた。
転移陣まで歩いて戻り、又キボウが、王城の転移陣迄、転移してくれた。
「そう言えばにゃ、ギプソフィラ」
「なんでございますか?」
「キボウが採った果物は、普通より美味しいのにゃ」
「そうなのですか!?」
カンパニュラの部屋に案内して貰い、今あったことを話すと、カンパニュラからは、サンダーソニアが結構上手に乾燥させてくれたと、聞いた。
カンパニュラも、大きくなって早く魔法が使ってみたいと話していた。
キボウの転移で、家のリビングに戻ってきた。特になにもしていなそうなソウが、一人で待っていた。
「ユメ、キボウ、戻ってきたのか」
「ソウは、何してるのにゃ?」
「下、女性だらけだ」
成る程と思い、一緒に様子を見に行ってみた。すると、キャラメルは出来上がっていて、新たな種類が加わったキャラメルを又3個ずつ渡された。合計27個もある。9種類も作ったの!?
「みんな、何か食べる?」
「はーい、手伝いまーす!」「私も!」
ユリの呼び掛けに、リラとリナーリが応えていたので、私は、食べた後の片付けを手伝った。
コンビーフも出来上がり、後は冷めてから作業があるらしい。




