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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の鰻重

「お、みんな揃ったな」

「そろった、そろったー」


5分くらい前に来たけど、すっかり出発の準備が整っていた。


「良い翡翠はあった?」

「何個か見つけました」

「綺麗なのあったにゃ」

「あった、あったー」


みんなで見つけた翡翠を、ユリに見せた。


「素敵ね。良かったわね」


リラの黒い猫型の石を見ても、ユリはなにも言わなかったので、もしかしたらそれも翡翠なのかな?


「忘れ物無いか?」

「ちゃんと積み込んだと思うわ」


ソウとユリが確認していると、キボウが馬車の座席の前に進み出ていた。


「キボー、まえー」

「あ、私も前に乗ってみたいにゃ」

「でしたら、私が操縦するのはいかがでしょうか?」


リラが、操縦してくれるなら、ユリとソウは後ろに一緒に座れば良いと思うし、良い案だと思う!


「ソウが良ければ、私は後ろでも荷台でも何でも構わないわよ」


ユリを荷台に乗せるのは駄目だと思うけど、前でなくても良いと言ったから、ソウも譲ってくれた。


ソウが転移陣に馬車をのせ、キボウが転移していた。そこから前の座席に座り、景色を堪能した。後ろに座り隙間から見える前方と、横だけの景色と違い、進む先が見渡せるのは、かなり楽しい。


ふと気になり後ろを振り向くと、ユリはうとうとしているらしく、ソウに寄りかかって半分寝ているみたいだった。


キボウと一緒に、少しだけ静かにしながら、引き続き景色を楽しんだ。


家に着くと、馬車を置いたまま、ソウは鰻重を取りに行ってしまった。目が覚めたらしいユリと、リラが、荷台から荷物を下ろし片付けるので、手伝おうとしたら、そんなにたくさん無いから大丈夫よと断られた。ならばキボウと畑の様子でも見に行こう。そう思ってキボウを誘おうとしたら、キボウはとっくに畑に行ったらしく、私も慌てて畑を見に行った。


「キボウ、何を手伝ったら良いにゃ?」

「だいじょぶー。アンチャンー、かわかすー」


どうやらあとは、バタフライピーの花を乾かすだけらしい。


私はキボウが使ったと思われるじょうろ等を片付けていた。


「ユメちゃん、キボウ君、鰻料理が届いたそうですよ」


リラから声をかけられた。

水やりも終わったので、手を洗い、お店まで行った。歩いているときにリラから教えて貰ったけれど、今日の鰻重は、向こうの国では5万(スター)相当の料理らしい。リラのお陰で食べられることを感謝しようと思う。


「うわー。鰻、久しぶりー」

「旨そうだな」


箱の蓋を開けると、知ってる気がする良い匂いがした。


「なんか知ってる気がする匂いがするにゃ」

「美味しそうな匂いー」

「なーにー?」


キボウは、見たことがない料理について、ユリに尋ねていた。


「キボウ君、これが鰻重よ。リラちゃんが釣っていたお魚ね。このまま全部食べられるわよ」

「わかったー」


キボウには、食べられる部分を確認するのは重要なのだろうと思う。

みんなで一斉に食べはじめた。


「美味しいにゃ!」

「美味しいわね」

「旨いな」

「おいしー!」

「!? 魚の味じゃないです! 何だか物凄く美味しいです!」


予想よりも更に美味しくて、箸が止まらない!


「小骨が有るかもしれないから、ゆっくり良く噛んで食べるのよ」

「はい」

「わかったにゃ」

「わかったー」


これをゆっくり食べるなんて、無理難題だと思う。

無我夢中で食べたので、あっという間に無くなった。でも、お腹いっぱいだ。


「あー、美味しかったー。ごちそうさまですー」

「たべたー!」

「美味しかったにゃ。ごちそうさまにゃ」

「3人とも早いわね!」


見ると、ユリの鰻重は、まだ半分くらい残っていた。ソウの鰻重は三分の一くらい。


「ホシミ様、鰻はお刺身はないんですか?」

「鰻は血に毒があるから、加熱しないと食べられないんだよ」


リラの質問にソウが答えていた。へえ、鰻って、生だと毒なのか。ソウが質問に答えている間、ユリはせっせと食べ進めていた。


何だか、難しい話を始めたので、キボウと相談してお城に行くことにした。


「ユリ、出掛けてくるにゃ。ブルーベリー少し欲しいにゃ」

「良いけど、どうするの?」

「お城で乾燥させるのにゃ」

「なら、見本も渡すわね」


ユリは見本用に、セミドライのブルーベリーも作って渡してくれた。


「ありがとにゃ」

「キボーも、キボーも」


ちゃんと2つに分けて、キボウにも別に渡してくれたので、安心して出掛けられる。


キボウに転移して貰い、世界樹の森に来た。

ホワイトボードに、ブルーベリーを乾燥の魔法で、軽く乾燥をかけて作った旨を書き、生と、ドライフルーツを少しキボウに持っていって貰った。


すぐに、楽しそうなキボウが戻ってきた。


「アネモネーじょうずー、プラタナスーじょうずー、メープルーこまるー」

「にゃ!? プラタナスの方が、メイプルより魔法が上手なのにゃ?」

「あたりー!」


プラタナスがカンパニュラの兄で、メイプルは父のはず。子供の方が上手だと、親は形無(かたな)しだね。

実のところ、出力が弱いせいで、乾き具合がちょうど良かっただけなのであった。


少し気の毒に思いながら、城に転移して貰った。

いつもと全く違う時間に来たので、部屋には誰もいなかったけれど、ベルを鳴らすとすぐにメイドがやって来た。


「ギプソフィラを呼んでにゃ。試して貰いたいことがあるのにゃ」

「かしこまりました」


少しして、いつものメイドと一緒に、ギプソフィラがやって来た。


「お呼びと伺い、参上いたしました」

「ユリが面白いものを作ったのにゃ。ソウによると、王国軍が野営をする場所のそばのブルーベリーなのにゃ。ちょっと食べてみるのにゃ」


話だけで、どの場所のことが理解したらしく、生を手に取るのを躊躇していた。


「味を知ってるなら、こっちだけ食べてみるのにゃ」


私は、ユリが作ったセミドライのブルーベリーを差し出した。


不思議そうにしながら口にいれ、すぐに笑顔になった。


「干し葡萄のような食感で、ブルーベリーの味がします!これは美味しいですね」

「ユリが、乾燥の魔法を唱えたのにゃ」

「なんと、調理したのではなく、魔法なのですか!」


羨ましそうにメイドが見ていたので、生とドライと双方すすめてみた。


「ありがとうございます。んん、知ってるブルーベリーより美味しいです! では、こちらも、んふ、干し葡萄みたいな感じで、更にブルーベリーが甘いです!」

「生のままのでも美味しいのは、キボウのお陰にゃ」

「キボウ様、ありがとうございます」

「よかったねー」


「ユリによるとにゃ、乾燥の魔法の加減で作るか、3日ほど天日干しをすると作れるらしいにゃ。野営に行ったときにでも作ったら良いにゃ」

「素晴らしいご提案をありがとうございます。是非試してみたいと思います。それで、本日は、カンパニュラ様のご訪問はされますでしょうか?」

「カンパニュラが大丈夫そうなら、顔を見に行くのにゃ」

「では、ご案内いたします」


カンパニュラには、セミドライのブルーベリーを渡し、一緒にいたサンダーソニアには、ギプソフィラと同じ話を聞かせ、生の方を渡した。

すぐに挑戦してカラカラに乾燥させていたので、粉にしてお菓子に混ぜると良いらしいと助言もしておいた。


カンパニュラとサンダーソニアには、各種、松ぼっくりも渡し、少しだけキャンプの話をしてから家に帰ってきた。


家に帰ると、既にリラはいなかったけれど、リラは、とりあえず家に帰り、遊びに行ったはずなのに、月給相当を稼いできたと、両親に驚かれたらしい。

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