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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の湖底

みんなで岸に戻ると、ソウが見本を見せてくれた。

地上で張る結界は、薄ぼんやり見えるけど、さすがに水に入ると、その形がはっきりわかる。ソウの回りだけ水が寄ってこない。ソウは、湖面が頭上20~30cmになるまで湖に入ってから戻ってきた。


「水圧には立方体より球が理想だが、それだといずれ息ができなくなる。浅瀬なら全面、深いところに行くなら上部以外に円柱状の結界を張って、浅い場所から水に入り、無理の無い場所までで()めるようにな。50mの水底(みなそこ)は6気圧かかる。そこで結界を崩壊させた途端、肺がつぶれて死ぬからな?」


ソウの説明の後、リラから質問された。


「ユメちゃん、円柱は、丸い柱で合っていますか?」

「合ってるにゃ」

「ろっきあつってなんですか?」

「簡単に言うと、息をする大変さが6倍にゃ。いきなり水中で6気圧かかったら、間違いなく死ぬにゃ」


あれ? なんで私はこんなことがわかるのかな? 昔覚えた知識なのかな?


リラが一番最初に挑戦したけど、浅瀬で既に結界から水が入ってきてしまい、どうにも直せなかった。


「リラの結界は、目が荒いようだな。わかりやすく言うと、網やザルのように、水を通しているように見えるな」

「ザル。あー、石が避けられても、水は避けられないのかぁ」


リラが、失敗の理由に納得して項垂れていた。


私が次に試した。思ったよりは簡単に実行できたので、どんどん歩いてみたけど、頭上の湖面が身長の5~6倍くらいになると、だんだん結界の維持が辛くなってきた。こんなの攻撃を受けたときみたいな感覚だ。無理しないように言われていたので、安全のためにも戻ることにした。


「なんだかすごく重たかったにゃ」

「ユメ、初めてで出来るのは優秀だな。俺、昔も教えたことあるけど、なかなか出来るやつ居なかったんだぞ」

「そうなのにゃ?」

「リラと同じ感じのが大半で、なんとか出来るのが0.1%いるかいないかくらいだったよ。ユメ、10m以上歩いただろ?本当に凄いよ」


魔法のことで誉められる日が来るなんて、なんだか物凄く嬉しい!


「次は、私ね!」


ユリが試すと言って、水に入っていったけど、なぜか2mくらい進んだところで引き返してきた。どうしたんだろう?


「ソウ、聖なる炎の時の、真ん中から結界を広げていくようなのは、どうやるの?」

「自分自身に張らない結界は、体から離れた所に灯す明かりと同じで、ポイントを定めれば、出来ると思うよ」

「成る程ね! なら」


何するのかな?と思ったら、なんとユリは、湖を割った。

湖の中に道ができた。割られた水の壁が、物凄く輝いている。


「出来たわ!」

「ユリ様、凄ーい!」

「ユリ、凄いにゃ」

「すごーい、すごーい」


ふとソウを見ると、固まっていた。驚きすぎみたい。


「えっ、マジか」


ソウが機能停止しているから、ここは、私が聞くことにしよう。


「ユリ、どうやるのにゃ?」

「えーとね、赤い物理結界に、金色の増幅結界を合わせて、モーセの十戒をイメージしたわ」

「増幅結界はできないにゃ」

「俺も出来ない」

「私、願張ることにします!」


聞いてどうにかなる感じじゃなかった。ユリは、湖面が波ただないようになのか、ゆっくり狭めながら結界を消していた。


「キボーのばん!」


次はキボウが試すらしい。そう思ったのに、キボウは、何と、湖面に乗り、走り始めた。


「えーー!!!」

「マジか!」

「キボウ凄いにゃ」

「さすがキボウ君! 教えてくださーい!」


リラが教えてと言ったからなのか、キボウは歩いて戻ってきた。


リラがキボウに聞くと、キボウは飛んでるのだと説明したらしい。すると、リラの通訳を聞いたユリが、呪文を唱えていた。


「成る程、ウオキフ!」


ユリは水面に立っていた。凄い!


「歩くのは難しいわね」

「ユリ様、凄ーい!」

「ユリ凄いにゃ」

「うわ、ユリまで」

「ユリー、いっしょー」


ユリは、キボウと一緒に水面を歩き、楽しそうだった。


「なんか、そういうの発表する機会が有ると良いな」

「ソウ、大丈夫にゃ?」


なんだかソウが疲れている感じ。ソウ、大丈夫かなぁ?


泳いだり、結界を張ったり、一部、水面を歩いたり、遊び過ぎて疲れてきた。キャンプ地に戻ることになり、キボウが全員を転移させた。


さすがに濡れた服は、普通に着替えた。ソウは着替えるのが早かったみたいで、すでに火の用意をしていた。寒くはないけど、水に入ったりして少し冷えたから、火のそばに行こうかな。


ユリがおやつを食べるかと聞いていた。いっぱい候補を上げていたけど、リラの強い押しで、マシュマロサンドと言うものに決まったらしい。


「ましゅまるー! ましゅまるー!」

「キャンプらしくて良いな。それにしよう」

「それは、何にゃ?」


ユリがマシュマロサンドの説明をしてくれた。どうやら、私は食べたことがあるらしい。


ソウは、キボウの案内で集めた乾いた松ぼっくりや小枝も使い、キャンプファイヤーの火力を調節していた。


ユリから、串の刺さったマシュマロを渡された。キボウはリラから渡されていた。同じくユリから渡されたソウが、私に説明してくれるらしい。


「これをゆっくり炙ると柔らかくなるから、そうしたらビスケットやクラッカーに挟んで食べるんだよ」

「味変用に、チョコレートもあるわよ」

「チョコレートを挟む場合は激甘になるから、塩味のするクラッカーが良いぞ」


お菓子を火で炙るなんて、面白いなあ。私も挑戦しよう。そう思い、ふとキボウを見ると、最初白かったマシュマロが、なんだか良い色になっていた。


「キボウ君、上手ですね!」

「キボー、じょうずー、キボー、じょうずー」


リラが誉めているし、キボウはセンスが良いみたい。私もユリやキボウを真似て焦がさないように頑張ってみた。


「ユメ、そろそろ良いぞ」


そう言ってソウが、ビスケットを渡してくれた。いまいちどうすれば良いかわからずにいたら、ソウが、食べられるようにマシュマロを挟んでから渡してくれた。


「ソウ、ありがとにゃ!」


なんだか物凄く甘い食べ物だったけど、火で炙るのが面白くてもうひとつ作った。これは薄いチョコレートも挟み、更に甘い食べ物だったけど、自分で作ったお菓子はとても楽しかった。みんなも堪能して、気が済んだらしい。


「では、夕飯を仕込みましょう」


ユリの声掛けで、夕食作りが始まった。野菜などの材料は、午前中に、ユリとリラが切っているし、特に手伝うことが見当たらなかったので、ユリの仕込みをじっと見ていた。お店で見かけたことがないと思う鍋を使って、ユリは、材料を炒めていた。


トマトの缶詰と、鶏肉を入れて蓋を閉めたので、しばらく煮るのだろうと思い、ソウの方を見に行くことにした。


「ソウは何をするのにゃ?」

「飯盒で、ご飯を炊くぞ」

「この変な形の入れ物がはんごうにゃ?」


まるで、双眼鏡が入っていそうな形の入れ物だ。


「これが飯盒だよ。これに研いだ米と水を入れて、火にかけてご飯にするんだぞ。鍋で作るのと同じ手順だから、見ていると良いよ」


ソウは、米を家で研いでから持参してきたらしい。吸水時間を取らなくても良いので、キャンプ1日目に使う分には、有効な手段だと説明していた。


「米4合(約600g)を研いでから吸水に30分おいて、あ、水の量は上のメモリまでな。飯盒の中蓋と外蓋をしっかり閉めて、火にかけるぞ。薪の直火でも、ガスバーナーの火でも炊けるぞ」


ソウは、火加減を調節しながら、2つの飯盒でご飯を炊いていた。このタイミングで火を弱めて、等教えてくれたけど、見極めが難しすぎて私には無理そうだった。でも、リラは普通に理解していたから、料理人なら理解できるのかもしれない。  


「何か焦げてるみたいな匂いがするにゃ」

「お、ユメ、鼻が良いな」


そう言ったソウは、飯盒を火から下ろし、ひっくり返していた。


「なんで逆さまにしたのにゃ?」

「残ってる水分が均等に蒸らされるようにだな」

「ここは、鍋とは違いますね」


あ、リラは、ベルフルールで鍋でご飯を炊くから理解が早かったのか!


少しすると、ソウは飯盒の蓋を開け、皿にご飯をよそっていた。私が1つ運び、ソウとリラは2つ皿を持って、カレーを作っているユリのもとへと運んだ。

ユリが全ての皿にカレーを盛り付けてくれた。


「まだ残っているから、足りなければお代わりしてくれ」


ユリもソウも、お店で出す時の量で考えると、12人前相当作ったらしい。


「カレーもまだあるわよ」


リラはカレーの鍋を覗き込み、なにやら感心していた。


「水を入れなくても、カレーって出来るんですね」


どういうこと!?


「これ、水入ってないのにゃ!?」

「無水カレーと言って、野菜の水分だけで煮込むのよ。本当はフレッシュトマトで作るんだけど、昨日売ってなかったのよね」


それで缶詰のトマトを使っていたらしい。たくさん遊んでお腹がすいていたみたいで、私も少しだけおかわりをした。リラに聞くと、リラも初めて食べる味のカレーだと言っていた。


「ユリ、これ切ってもらえる?」


ソウが丸いものを抱えて持ってきた。


「あら、これどうしたの?」

「昨日、買っておいた」


大きくて丸く黒っぽいそれは、果物らしい。ユリが、食べやすいように切り分けてくれた。外側は黒っぽいけど、中は綺麗なオレンジ色だった。


「さすがユリ! お袋の切り方とは違うなぁ」

「世間一般のお母さんは、お母さん切り(くし切り)なのよ。私は商売で切ることがあるから、均等に切るだけで、私の実家でも母は、お母さん切りに切っていたわよ。そして私が真ん中をもらっていたわ」


ソウとユリは何を言ってるのかなぁと聞いていたけど、良くわからなくて、食べながらリラに聞いてみたら、多分ですけどと断り、食べやすい切り方と、均等な切り方の差を話しているんだと思います。と教えてくれた。中心が一番甘いので、その部分を均等に切り分ける方法の話だったらしい。


「ホシミ様、これはなんですか?」

「リラ、西瓜知らないのか?」


え、リラは知らないものの説明をしてくれたの!?


「あ、やっぱりスイカなんですね。スイカは知っていますが、もっとさっぱりした食べ物で、こんなに甘い果物のようなスイカは初めて食べました」


リラによると、知っているスイカの色は中が赤いんだそうだ。


「え、甘いスイカ、無いの!?」

「はい。レモン汁などをかけて、暑い時期にサラダのように食べます」


甘くて美味しいと言って、みんなでたくさん食べた。


食べ終わった皮をソウが回収していたので、どうするのかと思ってついていくと、大きな穴を掘った場所に埋めていた。そういえば最初に、生ゴミを埋めて良い場所として教えてくれた辺りだ。


一緒に戻ると、みんな火のそばに集まっていて、ユリが飲み物を渡してくれた。夏とは言え、日が落ちると周りは暗いし少しだけ肌寒くなる。


「ユメちゃん、今日は疲れたと思うから、眠かったらテントに行って寝て大丈夫だからね」

「わかったにゃ。テントはどうやって分けるのにゃ?」

「俺とキボウでひとつ、ユリとユメとリラでひとつで良いんじゃないか?」


その振り分けを、真っ向から反対したのが、キボウだった。


「キボー、リラー、いっしょー、ユメー、いっしょー」

「ユリ様とホシミ様で、おひとつ使われてはいかがですか?」


あ、そういう意味か!


「それが良いにゃ!」


「あ、うん、そうします」

「お、おう。そうするか」


ユリとソウが、少し照れていた。この後みんなで色々話したけど、昼の疲れもあって、いきなりここでコロンと寝込んでも他の人に悪いと思い、私は先に寝るとみんなに告げ、テントに来て横になった。

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