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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇私はユメ◇

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夢の侍女

目が覚めると力がみなぎる感じがした。

試しに変身してみると、黒猫にもユメにもなれた。もう一度変身すると、ルレーブにもなれた。


「良し!!」


二人に報告しよう! 一番落ち着くユメになってリビングに行くと、ユリとソウは朝ご飯を食べているところだった。


「おはようにゃ!戻ったにゃ!」

「え!ユメちゃん!?」

「縮んだ・・・」


ソウが失礼なことを呟いた。


「もう大きくならないの?」


ユリに質問された。


「大きくもなれるにゃ! でも着替えがいるにゃ」

「私にはこちらの服は用意できないから、ローズマリーさんに相談しましょうか」

「それで頼むにゃ」

「今から行くか?」

「私は構わないわ」


ソウがローズマリーのところに送ってくれるらしい。


「侯爵邸に行くから、ユリとユメは客車に乗ってくれ」

「はい。ありがとう」

「ありがとにゃ!」


馬車に乗ると、ユリは心配して質問してきた。


「ユメちゃん、何を揃えれば良いの?私はドレスとか全くわからないけど」

「ローズマリーに言えば大丈夫にゃ」

「大きくなる時、服がいるんだよね? 大きなシーツとか必要?」

「王族だったときは使用人の前では普通に裸だったにゃ」

「なるほど。湯浴みとか着替えとか手伝うのね」

「一人でもできるにゃ。子供の頃は一人でやってたにゃ」


私が生まれてすぐに御母様は亡くなった。物心ついた頃には最低限のメイドしかいなかったから、子供の頃はなんでも自分でするしかなかった。

女王になってから使用人が一気に増えて、むしろ煩わしかった。

ドレスを着るときはともかく、自分でできることは自分でしたい。



屋敷に到着して執事が来た。

そういえば、シツジさんではなく、執事ね。

どうも、ローズマリーは居ないらしい。


「奥さまはもうすぐ戻られます。お部屋の方へご案内いたします」


正式に公表するまでは、今まで通りでいきたいので、ユリが色々対応してくれて助かった。

少し待っていると、ローズマリーが帰ってきた。


「ユリ様、ユメ様、ようこそお越しくださいました」

「突然ですみません。私ではわからなく、ローズマリーさんに相談があって来ました」

「どのようなことですの?」


ローズマリーにはきちんと伝えるべきだろう。

私が指示を出した。


「ローズマリー、信頼のおける侍女以外下がらせるのにゃ」

「仰せの通りに。サリー以外下がりなさい」

「ユリが気にするにゃ、シーツを1枚欲しいのにゃ」

「かしこまりました」


サリーにシーツを持ってきてもらい、片方の肩の上で結んでから変身した。


ローズマリーが、初代様と呟いていた。

その呼び方良いな。

以前変身して驚かせてしまったが、今回は驚かなかったようで、感心した。


(われ)登城(とじょう)する為の衣装を整えよ」

「かしこまりました。サリー、サリー?」

「も、申し訳ございません。針子(はりこ)を呼んで参ります」


サリーは驚いていたらしく、正気に戻るのに少し時間がかかったようだ。

ローズマリーは目を潤ませてこちらを見ていた。



サリーは、薄い下着をもって2人の針子をつれてきた。

「失礼致します」と、薄い下着を私に着せ、針子がサイズを計っていった。


計っている間に、ユリが靴の手配をローズマリーに頼んでくれていた。


部屋着の測定が終わり、針子が退室したのでユメに戻った。



「なんとお呼びしたらよろしいのでしょうか?」


ローズマリーは、ユリに聞いていた。

私に直接聞けば良いのに。


「ユメちゃん、今の姿の時はユメちゃんで良いのよね?」

「ユメで良いにゃ」

「金髪の時は?」

「難しいにゃ。現王がいるからユグドラシルだと誰かわからないにゃ。ルレーブでも初代でも何でも良いにゃ」

「ローズマリーさんが困っちゃうから決めた方が良いと思うわよ?」

「ローズマリーは、ルレーブでも初代でも好きに呼んで良いにゃ」

「他の人は?」

「初代か、グリーンと呼ぶと良いにゃ」


「ありがたき幸せにございます」


ローズマリーがニコッと微笑んでいた。


デザイナーが来るまでお茶をしようと言われた。

サリーがソウとパープル侯爵を呼んできた。


パープル侯爵もソウに、「なんとお呼びするべきでしょうか?」と聞いていた。

直接は聞き難いか。


「初代か、グリーンと呼ぶと良いにゃ」

「初代陛下」

「ユメの時は今まで通りユメで良いにゃ」


「では ユメ様、馬車も(しつら)えますか?」

「あ、馬車は要らないよ。うちの使うか、転移するから」

「確かに、ホシミ様の馬車より上等な馬車は無理でございます」


ソウが答えると納得していたので、ソウの馬車は最上級なのだろう。

昔乗った馬車は、そういえば、もっとガタガタと揺れていた気もする。


「衣装はいつできるにゃ?」

「今日計って、最短で3週間ほどかと」


ローズマリーに流れを聞くと、一月(ひとつき)かからないらしい。


「正装1着で良いにゃ」

「え?」「は?」


ローズマリーと、パープル侯爵が驚いていた。


「ユメは城には住まないよ」


ソウが分かりやすく説明した。


「城には私物を取りに行くにゃ。あと、引き継ぎにゃ」

「君臨されないのですか?」

「今の政治はわからないにゃ。最後の仕事をしに行くにゃ」


ローズマリーは思い当たることがあったらしく、ユリに正装を作ることをすすめていた。


「ユリ様、正装お作りいたしますか?」

「え!? 私? 私も何か着るんですか?」

「俺は一応礼装持ってるよ」


ソウ、持ってたのか。

普段着のまま城に転移していたから持っていないのかと思っていた。

略礼装に、マントだけでもすれば良いのに。

それとも今はマントはしないのかな?



「作った方が良いなら、まあ、・・・コルセット絞めない礼装だか正装ってありますか?」


「他国の民族衣装でも大丈夫でございます」


ユリは、あまり正装を作る気がないようで、及び腰だ。

きつい服が嫌なようで、なんとか逃げようとしていた。

するとソウが言い出した。


「聖女の正装なら普通に歩けるし、苦しくないよ!」

「え? 聖女?」

「ユリ、癒し使えるし、問題なし!」

「それは名案ですの! 是非そう致しましょう!」

「それが良い!」

「良いと思うにゃ!」


それは確かにユリにぴったりだ!

きつくないと言うユリの要望にも合うならなおさらだ。


「どんな服なの?」

「ユリ、来る時の門の呪術者覚えてる? あんな感じ」

「白くてヒラヒラした?」

「そう、それ」

「んー、どうしても必要ならそれで良いわ」


ユリが納得したようなので話を進めよう。


「正装ができたら主要の貴族を呼ぶのにゃ」

「あ、それは俺が声かけとく」


ソウが事務手続きをしてくれるらしい。

まあ、現王に丸投げする気もするが。



「ユリ様、どうされましたの?」


考え込んでいるユリに、ローズマリーが声をかけていた。


「あ、みんな貴族で私だけ平民かなって」


ユリが平民だったら、この国に貴族はいないんじゃないかな。


「ユリ、ユリの魔力は貴族よりはるかに多いにゃ。今の王族よりもはるかに多いにゃ」

「そうなの?」


やっぱりわかっていなかったのか。


「今、300pのアイス箱の充填どのくらいかかるにゃ?」

「ポンというか、ペタっと触るくらいかしら?」


見てたから知ってるけど3秒はかかっていなかったと思う。

するとローズマリーがユリに説明してくれた。


「現実的にはいたしませんが、普通の貴族が300ポイントの魔鉱石を充填するのにかかる時間は、約3分でございます。普通は2~3人で交代しながら行います」

「つまり100倍くらいにゃ」

「え?あれ?普通の人の100倍なの?」

「それくらい有るんじゃないか?俺も同じくらいだし」


ソウも充填するのは早かった。

以前のユメのときの私だと1分近くかかっていたのに。


ユリは自分のなかで納得したのか笑顔になった。

ホッと ひと安心だ。



「ローズマリー、魔力増やしたいにゃ?」

「増えるのですか?」

「登城するとき、侍女が要るにゃ。侍女の特典にゃ」


喜んで手伝ってくれるらしい。ローズマリーが手伝ってくれることになり、ユリの負担が大幅に減った。


「ローズマリー、花、草、葉、木、どれが好きにゃ?」

「植物のローズマリーは薬草なので、(くさ)が好きでございます」

「では、ローズマリー・グラス・パープルと名乗るが良いにゃ。登城したあとになるが、名前を書き換えるにゃ」

「ありがたき幸せにございます」


ローズマリーは正式な挨拶で応えた。

なるべく早く書き換えようと思った。



「奥様、デザイナーが到着致しました」

「では、一旦失礼しよう」


ソウとパープル侯爵が退室したあと、メイドたちを外に出し、下着を被ってから再び変身した。



デザイナーがつれてきた針子達に、ユリと一緒にサイズを計られた。

最近の正装はわからないので、ローズマリーに指示を任せた。

大分形式も変わったらしく、色の指定などが無くなったらしい。

昔は、染めにくい色が衣装として高価だった。


ならば、ユリから聞いた、ルレーブの色をいれてもらおう。

上品な桃色をどこかに入れてくれるように頼んだ。


靴の希望なども聞かれたが、ローズマリーに任せた。


後でローズマリー聞いたのだが、最近の王族はマントの着用はしないそうだ。


外の者が帰ったので、ユメに戻った。

なんだか疲れた。


少し落ち着いてからローズマリーに聞かれた。


「ユメ様、宝石や王冠等はどうされますか?」

「ソウと王宮に行って持ってくるにゃ」

「え?どこから?」


ユリが驚いて聞いてきた。

勝手に持ち出すと思われたのかな?


「自分の部屋にゃ。他の誰も入れない部屋があるにゃ」

「調整とかしないと、金属が劣化してたりしない?」

「とりあえず見てくるにゃ」

「なら、ソウと一緒に行ってくるのね」


ユリは来たいとは言わないんだな。


「ユリはどんな宝石が好きにゃ?」

「うーん、タンザナイトかなぁ」

「タンザナイトにゃ?聞いたことがないにゃ」

「青紫色の透明な宝石で、あ、タンザナイトは商標かもしれないわ。今度調べておきます」


青紫の石なら良いのだろうか?

何かあった気がする。


タイミングを見てローズマリーが話しかけてきた。


「ユメ様、ユリ様、お食事は如何ですか?」

「ソウに聞いてみないと・・・」

「硬いのは嫌にゃ」


以前の固すぎる揚げ物を思い出した。

あれはもう食べたくない。


ソウたちが戻ってきた。


「衣装換えは終わった?」

「あ、ソウ。お昼すすめられたけど」

「ハンバーグらしいよ」


それなら柔らかい!


「食べるにゃ!」

「ローズマリーさん、お願いします」


ユリが頼むと、サリーが部屋を出ていった。

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