夢の考察
奥に進むと、何だかとても寒くなってきた。
そろそろ上着を着た方が良いかなあと考えていると、ユリがみんなに声をかけていた。
「うわ、寒いわね。皆さんも寒かったら上着を羽織ってくださいね」
丁度良いと全員が上着を取り出していた。私も取り出した上着を着て、寒いのが落ち着いた。
「ユメちゃん、その服、とても可愛らしいですね!」
「イポミアありがとにゃ。この服は、ユリが買ってくれたのにゃ」
「凄く似合ってますね!」
「ユメ様、どうなっているんですか?」
「リナーリも、私の事は、ユメちゃんと呼ぶと良いにゃ。フードに大きな猫耳がついているのにゃ」
「かっこいいですね!」
みんなから誉められて、なんだか良い気分だ。
そう言えば、と思い、キボウを見ると、キボウは着替えていなかった。寒くないのかな?
「キボウ、上着持ってないのにゃ?」
「もってるー」
「着ないのにゃ?」
「だいじょぶー」
キボウは冬の間も、袖の無いキトンみたいな服を着ていたらしいから、寒さには強いのかもしれない。
歩き出して少しした頃、シーミオが上の方を指し、何かを母親に尋ねていた。
「まーま、あれなあにー?」
指差す先には、垂れ下がる鍾乳石の、氷柱石が見えた。
「なーにー?」
私が、キボウの問いに答えようとすると、回りも騒ぎだした。
「うわ!氷柱!」「牙!?」「刺だらけ!」
「あれは、鍾乳石。上から垂れ下がるのが、『氷柱石』、下に落ちて山になっているのが石筍、そして繋がったのが、『石柱』だ。この鍾乳石が有るのが、鍾乳洞だ」
ソウが全員に向け、分かりやすく説明してくれた。
あれ? ソウの説明は、王国語で繰り返しているようで、単語の覚え方みたいな不思議な話をしていた。
「キボウ、ソウの話分かるにゃ?」
「わかるー」
「キボウは、今のこの国の言葉以外は、分かる言葉があるのにゃ?」
「こごー」
「古語にゃ?」
「あたりー!」
鳴る程、たまにキボウが呟く分からない言葉は古語だったのか。日記によると、私はろくに勉強せず王位を継いでしまったから、学習していないことが多いらしい。
ふと気付くと、みんなは石筍を触っていた。
「ちゅめたーい」
シーミオが自分の背くらいの石筍を触っていて、とても楽しそうだった。キボウも恐々触り、感触を楽しんでいた。
私も触っておこう。
そっと触れ、その冷たさに感心していると、レギュムの声が聞こえてきた。
「ホシミ様、この足元は、なぜ整えられているのでしょうか?」
あ、それ、私も不思議だった。行き先に他の人がいないのはいつもの事だとしても、各所に有る手すりや、歩く道がかなりなだらかなのだ。なのに、明かりの設備はない。
「この先に、氷穴があってな、未だに現役の氷室として利用しているらしいぞ」
ソウが疑問に答えてくれていた。
成る程!荷物を運ぶ必要があるから、道が整えられているのか。氷は、どうやって運ぶのかな?
進みだし、改めて足元を見てみたけど、轍は無いみたいなので、人力かもしれない。そんなことを考えながら歩いていると、「この先立ち入り禁止」と書いた看板があり、道が分かれていた。ソウが、氷穴は立ち入り禁止だと説明していた。
「水の音が聞こえるにゃ」
「え?そうですか?」
イポミアには聞こえないらしく、キョロキョロしていた。でもすぐに音が聞こえ始めたらしく、段々うるさいくらい聞こえるようになってきた。
ゴーゴーと、ものすごい音が聞こえている。
「この先に何があるんですか?」
「滝の裏側が見えるぞ」
「滝の裏?」
ソウが先頭の方で説明しているのが聞き取れた。先の景色に、光が差し込んでいるのが見えてきて、段々回りが明るくなってきた。
「うわ!凄い!」
誰かがはしゃいでいるのが聞こえる。
外が見える窓のように、ぽっかり空いた穴の先に、大量の水が降っているのが見える。最後尾のユリが到着するのを待って、ソウが説明を始めた。
「そこの横道に入ると、何とか水に触れる距離まで近づけるぞ」
せっかくだから、私も見に行こう。キボウと一緒に、ソウについていってみた。
崖の外側に、道のようなものがあり、本当に滝の真裏に出られた。
「凄いにゃ。でもちょっと怖いにゃ」
「だいじょぶ、だいじょぶ」
キボウがしっかり手を握っていてくれた。とてもありがたい。来てはみたけど、シーミオは、滝の裏までは来なかった。確かに危険だからやめておいて正解だと思う。
ソウは容器に水を汲んでいたけど、何に使うのかな?
直接滝の水を触ったり、皆気が済んだので、もとの道に戻った。ユリとリナーリは見に来なかったみたい。
再び歩き始めると、また暗くなってきた。消してしまった人も「イビソモチ」と唱え、手元に明かりを確保していた。
またしばらく歩くと、うっすら明るくなってきた。何かの鳴き声が聞こえる。鳥かな? 道も広くなってきて、外からの光だけで完全に明るくなり、同時に気温の暑さを感じた。
前の方の人から上着を脱いでいるので、私も脱いでリュックサックにしまった。
最後に出てきたユリが、声をかけた。
「この辺でお昼ごはんにしたいと思います」
ユリがソウと一緒に、テーブル2台に、料理を大量に並べていた。全部ユリの杖から出しているので、手伝いようもない。
「細工寿司、袋サンドイッチ、鶏丼、ポテロン、モカムース、お茶、冷茶があります。食べきれないものは持ち帰って構いませんが、運ぶのはこちらでしますので、今預けるか、残してから預けるかしてください」
そう言えば、かなり大量に作っていたので、最初からみんなに振る舞う予定だったんだなぁと感心した。
みんな欲しい料理を取りに行っている間に、ユリとソウは、食べるための場所まで作っていてくれていた。
「ゆめたんたまー」
「にゃ?」
どうやら、シーミオから呼ばれたらしい。
「シーミオ何にゃ?」
「いっちょにたべまちょ」
「わかったにゃ。シーミオ、私を呼ぶなら、ユメちゃんで良いにゃ」
「はーい。ゆめたん!」
「仲間に入れてください!」
「私もお願いします」
リラとマリーゴールドだった。シィスルは、グランと二人で食べているらしい。
私たちは、一番大人数の集まりになった。
レギュム、クララ、マーレイ、イリスは、荷物が空いたテーブルを使って座っていて、ユリとソウは、何か話していたので、みんなが気を遣って、2人にしておいた。
「ユメちゃん、ポテロンおかわりしても良いですか?」
「大丈夫だと思うけどにゃ。ユリに確認してにゃ」
「はい」「はい」
セリとカンナに聞かれたけど、私では分からない。
「ユメー、ぜーりー!」
「キボウは、ゼリーを食べたいのにゃ? 一つくらいは良いと思うけどにゃ、私がユリに確認してくるにゃ」
ユリに確認に行くと、セリとカンナが先に確認していた。
「ユリー、ゼリーは残さなくて良いのにゃ?」
「誰にも頼まれていないから、残ったらキボウ君が全部食べても大丈夫と言ってあるわよ」
「わかったにゃ」
私もついでにポテロンを貰い、もとの場所に座った。
「キボウ、他に食べたい人がいなければ、ゼリーの残りは全部キボウが食べて良いらしいにゃ」
「ありがとー!」
みんなで仲良く話ながら食べていると、セリとカンナが面白いことを言った。
「ホシミ様って、たまに納品に来てくださるけど、もっと怖いかただと思ってたわ」
「うんうん、リラさんには笑って話してること有るけど、基本怖い感じだよね」
わざとしている部分もあるらしいから、仕方ないよね。
「ソウは、ユリしか興味が無いのにゃ。リラは昔からユリと食べ物と作ることにしか興味を持たないから、ソウはリラには笑うんだと思うにゃ」
「成る程! あれだけの美形で、苦労されているんですかね?」
「そんなところにゃ」
「それにしても、ユリ様と一緒にいらっしゃる時は、別人のようですね」
皆でチラッとユリとソウを見て、静かに頷いた。ソウの笑顔が眩しい。
しばらくすると、おかわりする人もいなくなったのか、ユリが呼び掛けながら色々しまっていた。
「もう食べる人はいませんかー? 一旦しまいますよー」
ユリはお弁当を置いていた方のテーブルを片付け、色々しまっていた。
食べたいものを食べ、休憩時間もたっぷりとり、帰りの出発をすることになった。
「この後は、渓谷を歩いて帰るだけなので問題もないとは思いますが、引き続き、怪我や体調不良は早めに申し出てください」
みんなが元気よく返事をして、洞窟ほど狭くないので、少し広がって、話ながら歩いた。
「結構暑いですね」
「鍾乳洞が涼しかったのにゃ」
「まるで冬みたいでした」
手拭いを出そうかなと考えていると、ユリが呼び掛けた。
「汗を拭うのにタオルが必要な人は、声をかけてくださいね」
ナイスタイミング!と、みんながタオルを受け取りに行った。
「長くて首にかけやすい!?」
リラが騒ぐので、私もタオルを広げてみた。確かに細長い。首にかけやすいタオルらしい。
「まーま!」
シーミオが何かを手に持って、見せていた。




