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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の考察

奥に進むと、何だかとても寒くなってきた。

そろそろ上着を着た方が良いかなあと考えていると、ユリがみんなに声をかけていた。


「うわ、寒いわね。皆さんも寒かったら上着を羽織(はお)ってくださいね」


丁度良いと全員が上着を取り出していた。私も取り出した上着を着て、寒いのが落ち着いた。


「ユメちゃん、その服、とても可愛らしいですね!」

「イポミアありがとにゃ。この服は、ユリが買ってくれたのにゃ」

「凄く似合ってますね!」


「ユメ様、どうなっているんですか?」

「リナーリも、私の事は、ユメちゃんと呼ぶと良いにゃ。フードに大きな猫耳がついているのにゃ」

「かっこいいですね!」


みんなから誉められて、なんだか良い気分だ。

そう言えば、と思い、キボウを見ると、キボウは着替えていなかった。寒くないのかな?


「キボウ、上着持ってないのにゃ?」

「もってるー」

「着ないのにゃ?」

「だいじょぶー」


キボウは冬の間も、袖の無いキトンみたいな服を着ていたらしいから、寒さには強いのかもしれない。


歩き出して少しした頃、シーミオが上の方を指し、何かを母親に尋ねていた。


「まーま、あれなあにー?」


指差す先には、垂れ下がる鍾乳石の、氷柱石(つららいし)が見えた。


「なーにー?」


私が、キボウの問いに答えようとすると、回りも騒ぎだした。


「うわ!氷柱つらら!」「(きば)!?」「(とげ)だらけ!」

「あれは、鍾乳石。上から垂れ下がるのが、『氷柱石つららいし』、下に落ちて山になっているのが石筍(せきじゅん)、そして繋がったのが、『石柱せきちゅう』だ。この鍾乳石が有るのが、鍾乳洞だ」


ソウが全員に向け、分かりやすく説明してくれた。

あれ? ソウの説明は、王国語で繰り返しているようで、単語の覚え方みたいな不思議な話をしていた。


「キボウ、ソウの話分かるにゃ?」

「わかるー」

「キボウは、今のこの国の言葉以外は、分かる言葉があるのにゃ?」

「こごー」

「古語にゃ?」

「あたりー!」


鳴る程、たまにキボウが呟く分からない言葉は古語だったのか。日記によると、私はろくに勉強せず王位を継いでしまったから、学習していないことが多いらしい。


ふと気付くと、みんなは石筍を触っていた。


「ちゅめたーい」


シーミオが自分の背くらいの石筍を触っていて、とても楽しそうだった。キボウも恐々触り、感触を楽しんでいた。

私も触っておこう。


そっと触れ、その冷たさに感心していると、レギュムの声が聞こえてきた。


「ホシミ様、この足元は、なぜ整えられているのでしょうか?」


あ、それ、私も不思議だった。行き先に他の人がいないのはいつもの事だとしても、各所に有る手すりや、歩く道がかなりなだらかなのだ。なのに、明かりの設備はない。


「この先に、氷穴(ひょうけつ)があってな、未だに現役の氷室として利用しているらしいぞ」


ソウが疑問に答えてくれていた。

成る程!荷物を運ぶ必要があるから、道が整えられているのか。氷は、どうやって運ぶのかな?


進みだし、改めて足元を見てみたけど、(わだち)は無いみたいなので、人力かもしれない。そんなことを考えながら歩いていると、「この先立ち入り禁止」と書いた看板があり、道が分かれていた。ソウが、氷穴は立ち入り禁止だと説明していた。


「水の音が聞こえるにゃ」

「え?そうですか?」


イポミアには聞こえないらしく、キョロキョロしていた。でもすぐに音が聞こえ始めたらしく、段々うるさいくらい聞こえるようになってきた。


ゴーゴーと、ものすごい音が聞こえている。


「この先に何があるんですか?」

「滝の裏側が見えるぞ」

「滝の裏?」


ソウが先頭の方で説明しているのが聞き取れた。先の景色に、光が差し込んでいるのが見えてきて、段々回りが明るくなってきた。


「うわ!凄い!」


誰かがはしゃいでいるのが聞こえる。

外が見える窓のように、ぽっかり空いた穴の先に、大量の水が降っているのが見える。最後尾のユリが到着するのを待って、ソウが説明を始めた。


「そこの横道に入ると、何とか水に触れる距離まで近づけるぞ」


せっかくだから、私も見に行こう。キボウと一緒に、ソウについていってみた。

崖の外側に、道のようなものがあり、本当に滝の真裏に出られた。


「凄いにゃ。でもちょっと怖いにゃ」

「だいじょぶ、だいじょぶ」


キボウがしっかり手を握っていてくれた。とてもありがたい。来てはみたけど、シーミオは、滝の裏までは来なかった。確かに危険だからやめておいて正解だと思う。

ソウは容器に水を汲んでいたけど、何に使うのかな?


直接滝の水を触ったり、皆気が済んだので、もとの道に戻った。ユリとリナーリは見に来なかったみたい。


再び歩き始めると、また暗くなってきた。消してしまった人も「イビソモチ」と唱え、手元に明かりを確保していた。


またしばらく歩くと、うっすら明るくなってきた。何かの鳴き声が聞こえる。鳥かな? 道も広くなってきて、外からの光だけで完全に明るくなり、同時に気温の暑さを感じた。

前の方の人から上着を脱いでいるので、私も脱いでリュックサックにしまった。


最後に出てきたユリが、声をかけた。


「この辺でお昼ごはんにしたいと思います」


ユリがソウと一緒に、テーブル2台に、料理を大量に並べていた。全部ユリの杖から出しているので、手伝いようもない。


「細工寿司、袋サンドイッチ、鶏丼、ポテロン、モカムース、お茶、冷茶があります。食べきれないものは持ち帰って構いませんが、運ぶのはこちらでしますので、今預けるか、残してから預けるかしてください」


そう言えば、かなり大量に作っていたので、最初からみんなに振る舞う予定だったんだなぁと感心した。

みんな欲しい料理を取りに行っている間に、ユリとソウは、食べるための場所まで作っていてくれていた。


「ゆめたんたまー」

「にゃ?」


どうやら、シーミオから呼ばれたらしい。


「シーミオ何にゃ?」

「いっちょにたべまちょ」

「わかったにゃ。シーミオ、私を呼ぶなら、ユメちゃんで良いにゃ」

「はーい。ゆめたん!」


「仲間に入れてください!」

(わたくし)もお願いします」


リラとマリーゴールドだった。シィスルは、グランと二人で食べているらしい。

私たちは、一番大人数の集まりになった。


レギュム、クララ、マーレイ、イリスは、荷物が空いたテーブルを使って座っていて、ユリとソウは、何か話していたので、みんなが気を遣って、2人にしておいた。


「ユメちゃん、ポテロンおかわりしても良いですか?」

「大丈夫だと思うけどにゃ。ユリに確認してにゃ」

「はい」「はい」


セリとカンナに聞かれたけど、私では分からない。


「ユメー、ぜーりー!」

「キボウは、ゼリーを食べたいのにゃ? 一つくらいは良いと思うけどにゃ、私がユリに確認してくるにゃ」


ユリに確認に行くと、セリとカンナが先に確認していた。


「ユリー、ゼリーは残さなくて良いのにゃ?」

「誰にも頼まれていないから、残ったらキボウ君が全部食べても大丈夫と言ってあるわよ」

「わかったにゃ」


私もついでにポテロンを貰い、もとの場所に座った。


「キボウ、他に食べたい人がいなければ、ゼリーの残りは全部キボウが食べて良いらしいにゃ」

「ありがとー!」


みんなで仲良く話ながら食べていると、セリとカンナが面白いことを言った。


「ホシミ様って、たまに納品に来てくださるけど、もっと怖いかただと思ってたわ」

「うんうん、リラさんには笑って話してること有るけど、基本怖い感じだよね」


わざとしている部分もあるらしいから、仕方ないよね。 


「ソウは、ユリしか興味が無いのにゃ。リラは昔からユリと食べ物と作ることにしか興味を持たないから、ソウはリラには笑うんだと思うにゃ」

「成る程! あれだけの美形で、苦労されているんですかね?」

「そんなところにゃ」


「それにしても、ユリ様と一緒にいらっしゃる時は、別人のようですね」


皆でチラッとユリとソウを見て、静かに頷いた。ソウの笑顔が眩しい。


しばらくすると、おかわりする人もいなくなったのか、ユリが呼び掛けながら色々しまっていた。


「もう食べる人はいませんかー? 一旦しまいますよー」


ユリはお弁当を置いていた方のテーブルを片付け、色々しまっていた。


食べたいものを食べ、休憩時間もたっぷりとり、帰りの出発をすることになった。


「この後は、渓谷を歩いて帰るだけなので問題もないとは思いますが、引き続き、怪我や体調不良は早めに申し出てください」


みんなが元気よく返事をして、洞窟ほど狭くないので、少し広がって、話ながら歩いた。


「結構暑いですね」

「鍾乳洞が涼しかったのにゃ」

「まるで冬みたいでした」


手拭いを出そうかなと考えていると、ユリが呼び掛けた。


「汗を(ぬぐ)うのにタオルが必要な人は、声をかけてくださいね」


ナイスタイミング!と、みんながタオルを受け取りに行った。


「長くて首にかけやすい!?」


リラが騒ぐので、私もタオルを広げてみた。確かに細長い。首にかけやすいタオルらしい。



「まーま!」


シーミオが何かを手に持って、見せていた。

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