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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の御泊

8月1日Mの日(つきのひ)


朝起きたら、既にリラはいなかった。ユリによると、ユリが仕込みに厨房に下りた時には起きていて、その時間に帰ったらしい。7時に起きたのでは会えないみたい。


ご飯の時、リラの話のあと、メイプルたちの話をしていた。


「あと1か月ね」

「メイプルたちか。ユメとキボウも、毎日ご苦労様だな」

「キボー、がんばるー」

「あと1か月頑張ってくれ」

「わかったー」


メイプル、いつ行ったんだっけ? 確か3月1日に。考えていると、考えが霧散していく。そろそろ3月も限界の始まりなのかな?


ユリが今日の持ち物を渡してくれたけど、あまり確認せず受けとり、そのまま出掛けた。


世界樹の森の前でキボウを少し待ち、城に行ってカンパニュラに先に話した。


「カンパニュラ、来月戻ってくるメイプルを、私がわからなかったらごめんなのにゃ」

「え?」

「ユメちゃん。わからなかったら、また知り合ってください」


カンパニュラは固まってしまい、サンダーソニアが答えてくれた。


「サンダーソニア、ありがとにゃ。変なこと聞いたらごめんなのにゃ。でも、なるべく教えてほしいにゃ」

「かしこまりました」


カンパニュラとサンダーソニアと楽しく話したあとの帰る時、ふと、さっき話していたメイプルって誰だっけと思った。でも、カンパニュラの悲しそうな顔を思い出したので、ここでは聞かない方が良いかなと思ったのだった。


お店に戻って少し手伝ったけど、途中から休ませてもらった。

昨日まで配膳をしていたはずなのに、何と言うか、上手く行かない。ユリは「お部屋でもリビングでも好きな場所で休んでね」と言っていた。


部屋に行って、ソウから渡された小説や漫画を読んで過ごした。手で持てるサイズの板みたいなテレビの中に、沢山の小説や漫画が入っていて、これらは私がリクエストしたらしい。確かに、読むと面白いと感じる、好みの内容だと思う。


ユリの持ち物は、紙の本が多いけれど、ソウから渡される本は、この板の中に皆入るらしく、ソウがたまに板に何かを挿し込んでいる。



夕飯の時、昼に思ったことを聞いてみることにした。


「ユリ、どうして私とキボウは、毎日世界樹の森に行くのにゃ?」

「メイプルさんとアネモネさんとプラタナス君に、カンパニュラちゃんと同じ差し入れを届けるためだと思うわよ?」

 

名前が出た。ここでしっかり聞いておこう。


「メイプルって、誰にゃ?」

「メイプルさんとアネモネさんは、カンパニュラちゃんのご両親で、プラタナス君は、カンパニュラちゃんのお兄さんよ」


そうなのか。それは、カンパニュラに悪いことをしたね。


「カンパニュラの家族は、何であんなところに住んでいるのにゃ?」

「プラタナス君の治療のために、離れて暮らしているのよ」

「そうだったのにゃ。ありがとにゃ」


あの場で聞かず、ユリに聞いてよかった。私は安堵したのだった。笑顔で答えてくれるユリも、ショックを受けているとは、私は考えもしなかった。



8月2日Fの日(かえんのひ)


ユリは、どうしてもお祝いをしたかったらしく、ベルフルールのメンバーを全員呼んで、シィスルとグランの結婚のお祝いの食事会を催していた。


ベルフルールで配膳をしているセリとカンナが来たとき、私は彼女たちの仕事と名前を知っていた。ユリは二人の名前を把握していなかったので、ユリから聞いたのではないみたい。確か、こどもの日に、(ちまき)を作りに、ここへ来ていたと思う。


(ユメが、カンナとセリに初めて会ったのはバレンタインの黒猫サンドをベルフルールで販売した時なのだが、2月の事は記憶に無い)


ユリの作った料理は、絵のように美しいテリーヌと言う柔らかくて色々な味のするパウンドケーキみたいな形のものや、お皿に絵を描いたような盛り付けの、普段とは違ったおしゃれな料理ばかりだった。


リラは最初遠慮していたみたいだったけど、シィスルがユリに「この料理を教えてください!」と言った辺りから、マリーゴールドまで参加して、作り方の話や料理の基本などを話し込んでいた。グランが笑っていたので、そのままで良いみたい。良く見れば、リナーリとイポミアも作り方の話に参加していて、グランはソウと経営について話し込んでいるみたいだった。


食事会が終わると、リラは一旦帰り戻ってきた。今日は泊まっていく約束なのだ。どうやら、着替えなどの荷物をとりに戻ったらしく、服を入れた包みを持ってきた。


ソウが結界を通過させてくれるので、私は先にリビングに行き、キボウと一緒にリラを待っていた。


「リラ、くるー?」

「今日はここに泊まるのにゃ」

「ここー?」

「リビングじゃなくてにゃ、私の部屋か、作業部屋だと思うにゃ」


キボウと話していると、ソウがの声が聞こえてきた。


「 が多いんじゃないか? もしくは、リラ、結界張れるかもしれないぞ?」

「そうなんですか!?」


何か、リラが驚いている。リビングにみんなが現れた。


「何の話にゃ?」

「リラちゃんがね、結界が見えるみたい。そういえば、イリスさんも見えていたわね」

「シッスルも見えていたにゃ」

「結構いるのかもな」


そういえば、私は結界はできるのかな? 転移はできなくなったけれど、今度何処かで試してみようかな。

私が考えている間に、ユリがリラに結界を教えることになったみたい。


「そういえば、さっき思ったんだけど、俺、キボウには許可出してなかった。今更だけど、キボウ、ちょっと来てくれる?」

「なーにー?」


キボウの転移は、ソウの部屋ではなく、色々な場所に来るよね。


「うふふ、だからキボウ君は、リビングに直接来られるのね」

「にゃるほどにゃー」

「皆さん本当にすごいですよね」

「私は、貴女の絵の才能やデザインセンスの方が凄いと思うわよ?」

「ありがとうございます」


みんな優秀な人ばかりだ。ソウとキボウも戻ってきた。みんな揃ったところで、私は疑問を聞こうと思った。


「そう言えば、全員で出掛ける話は、どうなったのにゃ?」

「それ、リラちゃんに聞こうと思っていたのよ。シィスルちゃんやマリーゴールドちゃんの休暇は、いつにするの? 帰る前に皆で出掛ければ、お店を休まないで済むと思うのよね。そして、前回みたいに途中まで送れば良いと思うのよね。うふふ」

「あ、ユリ様、マリーは実家に帰ると思いますので、シィスと方向が違うと思います」


リラが訂正するということは、ユリは、方向が同じだと認識しているの?


「そう言えば、ハニーイエロー男爵家は北東方向って聞いたわね」


あれ? 把握しているの?


「そう言えば、コバルトブルー伯爵家は、どこにあるの?」

「ブルー公爵家のそばにあるぞ、馬車だけで行くより、転移陣を使った方が、移動は早いだろうな」


ユリの疑問に、ソウが答えていた。


「ベルフルールの休みはいつにゃ?」

「今年は、少し長くとろうと考えています。シィスはお兄ちゃんを連れて挨拶に回るみたいだし、マリーも色々準備が有ると思いますので」

「そうよね」

「ユリ様の予定はどうなっていますか?」

「8月の後半に1週間(実質9日)くらい休もうかなって考えているわ。また、夏バテしたら困るからね」

「それなら、シィスとマリーに少し相談しますけど、おおよそ合わせて休むことにします。そうすれば、シィスもマリーも気にせず休めると思います」

「では、詳しい日程は任せるわ」

「ありがとうございます」


ユリとリラで、休みを調整してくれることになった。どこに行くのかな? 楽しみだな。


「ユメちゃんは、どこか行きたいところはある?」

「少し涼しいところに行きたいにゃ」


夏だから仕方ないけど、ここのところ暑すぎる。


「滝と、渓谷(けいこく)と、鍾乳洞(しょうにゅうどう)の見学とか行くか?」

「どこにあるのにゃ?」

「王城と世界樹の森の間くらいの辺りだな」

「滝なんてあったのにゃ」

「方角的に、世界樹の森にあるらしい湖の水源じゃないかと思うよ」

「そこに行きたいにゃ」


楽しみだな。リラにも確認していた。勿論賛成だ。


ご飯と予定の話が終わったあとは、トランプと、ボードゲームをした。ソウが骨董品と言って、持ち込んだ。私は覚えていないけれど、何だか懐かしく感じる すごろく風のゲームだった。


20時30分頃まで遊び、私は寝る用意のため、お風呂に入った。すごく楽しかったので、またリラを呼びたいな。

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