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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の聖炎

「そう言えばリラちゃん、それどこで売るの?」


ユリの質問に、どういう意味だろうと考えていると、リラが答えた。


「あー、昨日売っていないものはこちらでは売れませんね」


あ、そう言う意味か。


「はい、ユリ様! 椅子付きテーブルを出して、ベルフルールとして外で売ったら良いと思います」


シィスルが正解を言っていた。


「あ、それ良いわね。誰か販売をお願いする? そうすれば、あなたたちは、休みも取れるし追加も作れるわよ?」

「そうします! そうしたいです!」


ユリの弟子たちは、休まない方向に頑張るのが通常営業らしい。追加も作ったら、やっぱり休めないと思うよ?


結局、マーレイが探しに出たけど、エルムが人材を連れてきた。4人いて、全員が商売人らしい。


ユリがタイムスケジュールを説明していた。その後、リラも挨拶し、プリンの名前が「聖炎のプリン」に決定していた。

聖なる炎を使うから、聖炎か。そう言えば、クッキーの色は、ユリからの指定らしい。何か考えがあるのだと思う。


私は慣れていたので、みんなよりも炎のクッキーの色替えが早かった。

あれ? 慣れていると思ったのは、なんでだろう? いつこんなクッキーを作ったんだろう? いつ覚えたんだろう? もしかして記憶に無い手仕事で慣れているのかなぁ。


作業の早い自分自身に驚きながら、淡々と作っていった。


ユリがリラに声をかけていた。


「リラちゃん、私がいない間、よろしくね」

「はい。お任せください!」

「少し早いけど、行ってくるわね」


ユリは、先にご飯を食べて、でかけていった。私が無心でクッキーを作っている間に、リラは色々指示を出して、すでに外でプリンを販売していたらしい。


「リラ、私も12時20分くらいには出掛けるにゃ」

「ユメちゃんも先に食べちゃって、そのあと調整したら楽ですよ」

「わかったにゃ。キボウと私の分のご飯お願いするにゃ」

「はーい。プリンも食べますよね?」

「ありがとにゃ」


リラは、私とキボウの分のご飯を先に用意してくれた。外の販売担当の人が2人一緒のご飯だった。


「ユメ様、この後楽しみですね」

「ユリの魔法にゃ?」

「はい」

「ユリは、聖なる魔法を使うらしいにゃ。私も見るのは初めてにゃ」

「そうなのですか!? それはとても貴重でございますね」


私が話していると、リラがキボウに何か頼みに来た。


「キボウ君、キボウ君、この冬箱を、屋上に置いてきて欲しいのですが、頼んでも良いですか?」

「いーよー」

「では、お願いします」

「わかったー」


冬箱には、メモが張り付けてあり、中身がプリンであることがわかった。数が足りないと困るなと思い、開けてみてみたけど、中には聖炎のプリンが20個と、紙のスプーンと、冷茶と、重ねたコップが入っていた。これなら安心だ。

私は持ち帰る人のために、持ち帰り用の箱を何枚かキボウに渡した。


「キボウ、一緒にこれも頼むにゃ」

「わかったー」


私たちが食べ終わる頃、ソウが戻ってきた。ベルフルールの笹を取りに行っていたらしい。重量は可能でも、持ちきれなかったため、何度かに分けて取ってきたそうで、それを聞いて王宮の笹も一度では持ってこられないと考えた。


「ソウ、王宮の笹、キボウ一人では、不安にゃ」

「確かにな。俺も見に行くよ」


ソウが食べ終わると、ソウは休憩せずに、王宮へ行った。


「キボウ、私たちも出掛けるのにゃ」

「わかったー」


キボウは私と冬箱に手を掛け、まずは屋上に転移した。そこには椅子付きテーブルが置いてあったので、その上に冬箱をのせ、今度は王宮に転移して貰った。


王宮につくと、ソウの部屋には物凄い数の笹が、物凄い数の短冊をつけ置いてあった。


「これはなんにゃ!」

「足りなければ、笹も短冊も増やして良いと言われたと言っていたぞ?」

「にゃー。私が言ったにゃ。ソウ、ごめんなのにゃ」

「いや、問題ないよ。大勢で楽しんだ方が、ユリも喜ぶと思うぞ」


ソウは笑って許してくれた。


「ソウ、どこいくー?」

「あー、家のそばに、笹をたくさん積んである場所わかるか?」

「わかるー!」

「そこに全て運びたいんだよ」

「わかったー」


キボウは返事をすると、全ての笹を持って、転移していった。


「ユメ、俺、先に向こうに行ってるよ」


ソウも慌てて追いかけて転移していった。入れ替わるようにキボウは戻ってきた。


「おいたー!」

「キボウ、ありがとにゃ」


ソウの部屋には、実はメンバーが全員揃っていて、唖然として今の転移を見ていた。


「あ! 私の笹が」


カンパニュラの手には、1mの笹が握られていた。


「移動してからもう一度置きに行ったら良いと思うにゃ。大丈夫にゃ」

「だいじょぶ、だいじょぶ」


カンパニュラが落ち着いてから、再びキボウが声をかけた。


「ちいさいー」

「キボウ、どういう意味にゃ?」

「ちいさい、さきー」


「ユメ様、背の低い方が先とおっしゃっているものと」


シッスルが、そっと教えてくれた。

今背が低めなのは、キボウ、私、カンパニュラ、シッスルで、サンダーソニア、ハイドランジア、ローズマリー、ギプソフィラは、背が高めだ。


「キボウ、カンパニュラは、護衛がいないと駄目らしいにゃ」


キボウは驚いた顔をした後、見学メンバーは、列をなすように並ばせられた。


「てー、つなぐー!」

「シッスル」

「はい。皆さん前の方の肩に手を置かれると良いと思われます」


電車ごっこのような状態になり、キボウは全員を一周して確認した後、転移した。

そこは屋上の西側で、東側にいたユリがラベンダーを残し、転移していくのが見えた。


「カンパニュラー」

「はい、キボウさま」


キボウはカンパニュラだけを連れ、笹が積まれたそばに転移していった。みんなで見守っていると、カンパニュラが笹をユリに渡し、即、転移で戻ってきた。


カンパニュラがあまりにもニコニコしているので、誰もキボウに怒れず、とにかく見学の用意をしようと、ローズマリーが、ソーラーパネルの下を背を屈めて通っていった。


背の低い組は、ソーラーパネルの下でも問題ないので、広々と見やすい場所を確保した。私、カンパニュラ、シッスル、キボウの順に並び、安全のために、カンパニュラとは、手を繋いだ。


私たちの用意が終わった頃、ソウが結界を張ったのが見えた。中心からだんだん大きくなる結界だ。ところが、途中停止して、ユリとソウが慌てて移動したので、何事かと、みんな心配していたけど、どうやら人がいたらしく、ソウがその人ごと街道側に転移して安全を確保してから、ユリのそばに戻り、結界を広げていった。


「いまは、なにをしているのですか?」

「今は、ソウが結界を張っているにゃ。たぶん弾かれた人を発見して、移動させたんだと思うにゃ」

「ユメちゃんは、すごいのですね」

「結界を張れる人には、見えるのにゃ」


「あ、あの、結界とは、薄い幕のようなものでしょうか?」

「シッスルは見えるのにゃ!? その通りにゃ。ユリに習えば、結界が張れると思うにゃ」

「そうなのでございますか!?」


全員がシッスルを見て驚いていた。


「ソウが、内側に、もうひとつの結界を張ったにゃ」


すると、それを確認したらしいユリが浮かび上がり、空中に停止した。


「ユリさまがういてる!!!」

「ユリのは、飛行魔法だと思うにゃ」


「ユリ様、凄いです!!」


ラベンダーが興奮している声が聞こえた。下からも、観衆が興奮している声が響いていた。


ユリは、内側の結界の回りを一周すると、もう一度停止し、声を張り上げていた。


「聖なる炎!!!」


みんながユリに釘付けになった。

なんと、青い色の炎をユリは放ち、笹は、その炎に包まれた。


「火が青いです!」

「青い炎ですわ!!!」

「これが、聖なる炎なのでございますね!」


炎が青いのは、酸素が大量に有る燃焼状況で、高温の火だったと思う。何でそんなことを私は知っているのだろうと考えていたけど、みんなが喜んでいるので、黙っていることにした。

あ、ソウの計画って、これかな!と気がついた。それを事前に教えられていたリラたちは、青い炎の柄のクッキーを作っていたのだなぁと色々納得した。


そこへ、ユリが転移で現れた。


「ユリさま! すごいです!!」

「ユリ様!」「ユリ様!」


「カンパニュラちゃん、ありがとう」


ユリはにっこり笑い、カンパニュラにお礼を言っていた。


「ユリ様、すぐにお着替えされますか?」

「ラベンダーさんは燃えるのを見なくて良いの?」

「はい。充分堪能致しました」

「では、レッド邸に行くわよ」


ユリはラベンダーと転移していってしまった。


(わたくし)たちも、戻りましょうか」

「待つのにゃ。リラからの差し入れがあるにゃ」


東側にいたローズマリーが、冬箱をもって、ソーラーパネルを気にしながらこちらに歩いてきた。


箱を開けてみると、18個しかなかったので、ラベンダーはしっかり確保したのだろうと思った。


「あおい火のおかしだ!」

「聖炎のプリンにゃ。みんなひとつ、にゃ、2つずつ持ち帰ると良いにゃ」


一緒に置いてある箱を組み立てていると、キボウとシッスルが手伝ってくれた。


「ローズマリー、城に戻るにゃ? 家に帰るにゃ?」

「選択してもよろしいのですか?」

「キボウ、ローズマリーをパープル邸に連れていけるにゃ?」

「いーよー」


そのまま、私とローズマリーを、パープル邸のソウの部屋に連れ転移してくれた。


「キボウ、ありがとにゃ」

「キボウ様、ありがとうございます」

「よかったねー」


キボウは私を連れ、屋上に戻ってきた。


「プリンは受け取ったにゃ?」


カンパニュラとギプソフィラは箱を持っておらず、シッスルが箱を3つ重ねて持っていた。警護の為かなと思った。


「シッスル、落としてしまっては大変だから、1つ貸しなさい」


サンダーソニアが、1つ無理矢理受け取り、負担を軽減させていた。誰も声をかけなかったら、私が持とうと思っていたので、サンダーソニアは優しいなと感心した。


「ならんでー、ならんでー」


キボウの声かけでみんなが並ぶと、キボウは城のソウの部屋に転移した。


「ユメちゃん、キボウ様、どうもありがとうございました」

「キボーくん!」

「キボウ君、ありがとうございました」

「よかったねー」


「私は、カンパニュラのを貰うから、皆で食べなさい」


サンダーソニアは、箱をシッスルに渡していた。


「キボウ、家に帰るのにゃ。あ、冬箱が屋上のままにゃ」

「わかったー」


転移するとき、みんなのお礼がもう一度聞こえた。


屋上に転移し、冬箱を回収した。中には、冷茶と未使用のグラスと聖炎のプリンが2つ入っていた。


もう一度転移して貰い厨房に顔を出すと、すでにユリが仕事をしていた。


「キボウ、色々ありがとにゃ。パウンドケーキ食べるにゃ?」

「ありがとー」

「キボウは、少し休むと良いにゃ」

「わかったー」


受け取ったパウンドケーキを食べながら、キボウは階段を上がっていった。


私はバタバタしているリラたちに声をかけ、クッキー作りを再開した。


途中、ユリから休憩を促されて、アイスココアを貰い少し休んだけど、クッキーよりもプリンが足りないらしく、リラたちは、追加を作り続けているようだった。


夕飯は、ユリがカツサンドを出してくれた。だけど食べに来た人は私とキボウとソウくらいで、他のみんなは、仕事をしながら食べていた。なんと一度帰ったメリッサまでが、もう一度来て、販売を手伝っていた。


私もクッキーを再再開し、リラが宣言した数を作り続けた。これは、並んでいる客に聞いた注文分らしい。


ユリは笑いながら、蒸し器で蒸しプリンを作り、釜で焼きプリンを作っていた。オーブン3段だけでは製造が追い付かないからと説明してくれた。今回大事なのは、プリン本体ではなく、青い色の炎のクッキーなのだ。


「ユリ様が、販売制限をする理由がよくわかりました」


全ての客が帰った後、イポミアが呟いた言葉が印象的だった。

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