夢の提案
今日は7月7日Tの日、七夕当日。
急いで城から戻ってきた。畑に行こうと外に出ると、うろうろしている若い人に捕まった。
「ユメ様、短冊をつけるところが、もう届きません」
「私の方が背が低いにゃ」
「ベルフルールの笹も、短冊でいっぱいでした」
「笹を追加できないか、聞いてくるにゃ」
「お願いします!」
キボウは畑に行ってしまったけど、私は店内に戻り、ユリを探した。
「ユリかソウは居ないのにゃ?」
厨房にいるマリーゴールドに聞いてみた。
「ユリ様は、内倉庫にいらっしゃいます。ホシミ様は、まだお戻りになられていらっしゃらないようでございます」
紙紐を持ったユリが内倉庫から出てきた。
「ユリ、短冊をつける場所が足りないにゃ」
「さっきソウに以心伝心を送ったから、帰ってくるときに笹を持ってきてくれると思うわ」
すでに対策済みだったらしい。私は外に出て、先ほどの背の低い若者に伝えた。聞いていた回りも喜び、届かない子供たちは、少し待っていると話していた。
そこへ、ソウが笹を持って転移してきた。お店側の入口からでないと笹が通らないらしく、正面に回っていた。
笹を待っていた人たちが群がり、ソウは「ちょっとだけ待っていてくれ」と断って、店に入っていった。
「ユメ様、短冊をつけられそうです。ありがとうございます」
「お礼は、ソウに言ってやってにゃ」
「はい!」
少しして、飾りをつけた笹を持って、ソウが出てきた。
「好きな場所に短冊をつけて良いぞ」
「ホシミさまー。ひもがじょうずにむすべません」
「どの辺につけたいんだ?」
「あとでみえるところ!」
「なら、下の方の枝に結んでおくからな」
「ありがとざいます!」
ソウって、子供の相手出来るんだ! そう言えば、キボウの無茶にも親切に対応しているかもしれない。私はソウを見直した。
次々と頼まれ、ソウは代わりに短冊をつけていた。
少しすると、マーレイが来てソウに声をかけていたけど、マーレイも短冊を結ぶのを頼まれ、背の低い女性の短冊を主に受け取っていた。
二人とも背が高いから、こういう時役に立てて良いなぁ。
キボウがフラフラとこちらを見に来たけど、何もせずに帰っていった。
役立たないので私は見ていたけれど、そのうちイリスが呼びに来て、全員で戻った。
「ユリ、王宮の笹は、明日持ってくれば良いのにゃ?」
「そうね。明日のお昼ご飯のあと、街道の向こう側の広いところに結界を張って、お焚き上げをするわ」
結界内で燃やすなら安全そうだね。
「見物客が多そうにゃ」
「うふふ。派手に行こうと思ってるわ」
「大丈夫なのにゃ?」
「ソウから提案されたから、大丈夫よ」
え!? ユリが無茶しないようにっていうソウの短冊の意味は、これ? どういうこと?
後からユリのいないところでソウに聞いてみたら、暴走しないように、本気で願ってる。と言っていた。
昼飯は素麺だった。七夕の食べ物だとユリが説明していた。
お店が開店して、今日も大変かな? と考えていたら、特に問題もなく、変な質問もなく、明日のお焚き上げは、ユリが燃やすらしいと言う噂の確認だけが、頻繁にあった。
閉店後に、店内の笹も外に出し、星空に皆の願いが叶いますようにと祈っている時、ソウが穏やかでいられますようにと、特別に祈っておいた。
翌日、7月8日Gの日。
朝からユリが騒いでいた。どうやら、予想外に大事になったようで、店の外は見物客だらけらしい。
ユリは、衣装を借りに行く相談をしたあと、屋上に人を呼ぶ計画を話していた。
「少し早めにお昼ご飯を食べて、12時30分には開始できるように戻ってくるわ」
「了解。俺以外の従業員は、屋上にでも招待するか?」
「それが良いかもしれないわね。折り畳みテーブルとオペラグラスでも出しておくわ」
私が質問しても良いかな? 大丈夫そう。
「ユリ、カンパニュラを連れてきても良いにゃ?」
「え? どこに?」
「屋上は、葉に転移を教えたとき行った場所にゃ?」
カンパニュラが見に来たいって言っていたし、ちょうど良いと思う。
「え、うん。そうね。余り広くないからたくさんの騎士の人や侍女さんたちは無理よ?」
大勢はダメなのか。
「サンダーソニアが一緒ならどうにゃ?」
「許可が出るなら構わないわよ」
許可は出るんじゃないかな。
実は、回りに人がいない場所があるならと、すでに大まかな許可は貰ってあるのだ。今日再確認しよう。
朝ご飯のあと畑を見に行くと、リラにあった。リラは、見物客に軽食を売るつもりと話していた。
「私のリュックサックを使うと良いにゃ」
店に来ない人に物を売るなら、必要だと思う。
「ありがとうございます! お借りします!」
「頑張ってにゃ」
キボウと、世界樹の森と城に行き、カンパニュラとサンダーソニアに伝えた。
「お店の屋上は、転移でしか行けないのにゃ。そこならどうにゃ?」
「どうやって行くのですか?」
「ここから、そのままキボウが転移するにゃ」
「キボウ様、何人までよろしいでしようか?」
「なーにー?」
「キボウには人数制限はないにゃ。お店の屋上の方が、狭くて余りたくさんは無理なのにゃ」
「最低でも1人は護衛をつけさせてください」
「シッスルー!」
「キボウからの条件は、シッスルの参加にゃ」
「では、カンパニュラ、私、シッスル、ギプソフィラでいかがでしようか?」
「最後の誰にゃ?」
「ユメちゃんが、よくお話しされている、最強の女性騎士です」
「師範の騎士にゃ?」
「その騎士です」
参加者が決まりかけたとき、ハイドランジアの使いが来た。
私に急ぎの面会希望らしく、サンダーソニアもカンパニュラも特に問題はないと言うので、この部屋に来てもらうことになった。
ハイドランジアは、ローズマリーを連れていた。私に話と言うのは、今まさに話していたユリの火炎魔法の見学についてだった。
「サンダーソニアは見学メンバーなのですか!?」
孫のカンパニュラは、良いらしい。でも、娘のサンダーソニアが許可されたなら、ハイドランジアも参加したいと言うことらしかった。
「キボウ、私を含め7人頼んでも良いにゃ?」
「いーよー」
「屋上は、とても狭いにゃ。それでも良いなら、キボウに連れていって貰うにゃ」
開催は12時30分からなので、それまでに出掛ける用意をしておくように告げ、私は店に戻ったのだった。
「何手伝ったら良いにゃ?」
「リラちゃんのクッキーか、私の手伝いか、少し休むのでも良いのよ」
ユリは、私を休ませたがる。ユリの方がよほど重労働だと思うんだけど、私の方が体力がないと考えているらしい。
「リラ、私もクッキー手伝うにゃ」
「ユメちゃん、お願いします」
「なんで、この色なのにゃ?」
「聖なる炎だからです!」
あまりにも自信満々に言うので、無理矢理納得させられたのだった。




