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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の提案

今日は7月7日Tの日(じゅもくのひ)、七夕当日。


急いで城から戻ってきた。畑に行こうと外に出ると、うろうろしている若い人に捕まった。


「ユメ様、短冊をつけるところが、もう届きません」

「私の方が背が低いにゃ」

「ベルフルールの笹も、短冊でいっぱいでした」

「笹を追加できないか、聞いてくるにゃ」

「お願いします!」


キボウは畑に行ってしまったけど、私は店内に戻り、ユリを探した。


「ユリかソウは居ないのにゃ?」


厨房にいるマリーゴールドに聞いてみた。


「ユリ様は、内倉庫にいらっしゃいます。ホシミ様は、まだお戻りになられていらっしゃらないようでございます」


紙紐を持ったユリが内倉庫から出てきた。


「ユリ、短冊をつける場所が足りないにゃ」

「さっきソウに以心伝心を送ったから、帰ってくるときに笹を持ってきてくれると思うわ」


すでに対策済みだったらしい。私は外に出て、先ほどの背の低い若者に伝えた。聞いていた回りも喜び、届かない子供たちは、少し待っていると話していた。


そこへ、ソウが笹を持って転移してきた。お店側の入口からでないと笹が通らないらしく、正面に回っていた。

笹を待っていた人たちが群がり、ソウは「ちょっとだけ待っていてくれ」と断って、店に入っていった。


「ユメ様、短冊をつけられそうです。ありがとうございます」

「お礼は、ソウに言ってやってにゃ」

「はい!」


少しして、飾りをつけた笹を持って、ソウが出てきた。


「好きな場所に短冊をつけて良いぞ」

「ホシミさまー。ひもがじょうずにむすべません」

「どの辺につけたいんだ?」

「あとでみえるところ!」

「なら、下の方の枝に結んでおくからな」

「ありがとざいます!」


ソウって、子供の相手出来るんだ! そう言えば、キボウの無茶にも親切に対応しているかもしれない。私はソウを見直した。


次々と頼まれ、ソウは代わりに短冊をつけていた。

少しすると、マーレイが来てソウに声をかけていたけど、マーレイも短冊を結ぶのを頼まれ、背の低い女性の短冊を主に受け取っていた。


二人とも背が高いから、こういう時役に立てて良いなぁ。

キボウがフラフラとこちらを見に来たけど、何もせずに帰っていった。

役立たないので私は見ていたけれど、そのうちイリスが呼びに来て、全員で戻った。


「ユリ、王宮の笹は、明日持ってくれば良いのにゃ?」

「そうね。明日のお昼ご飯のあと、街道の向こう側の広いところに結界を張って、お焚き上げをするわ」


結界内で燃やすなら安全そうだね。


「見物客が多そうにゃ」

「うふふ。派手に行こうと思ってるわ」

「大丈夫なのにゃ?」

「ソウから提案されたから、大丈夫よ」


え!? ユリが無茶しないようにっていうソウの短冊の意味は、これ? どういうこと?


後からユリのいないところでソウに聞いてみたら、暴走しないように、本気で願ってる。と言っていた。


昼飯は素麺だった。七夕の食べ物だとユリが説明していた。


お店が開店して、今日も大変かな? と考えていたら、特に問題もなく、変な質問もなく、明日のお焚き上げは、ユリが燃やすらしいと言う噂の確認だけが、頻繁にあった。


閉店後に、店内の笹も外に出し、星空に皆の願いが叶いますようにと祈っている時、ソウが穏やかでいられますようにと、特別に祈っておいた。



翌日、7月8日Gの日(きんのひ)


朝からユリが騒いでいた。どうやら、予想外に大事(おおごと)になったようで、店の外は見物客だらけらしい。


ユリは、衣装を借りに行く相談をしたあと、屋上に人を呼ぶ計画を話していた。


「少し早めにお昼ご飯を食べて、12時30分には開始できるように戻ってくるわ」

「了解。俺以外の従業員は、屋上にでも招待するか?」

「それが良いかもしれないわね。折り畳みテーブルとオペラグラスでも出しておくわ」


私が質問しても良いかな? 大丈夫そう。


「ユリ、カンパニュラを連れてきても良いにゃ?」

「え? どこに?」

「屋上は、(よう)に転移を教えたとき行った場所にゃ?」


カンパニュラが見に来たいって言っていたし、ちょうど良いと思う。


「え、うん。そうね。余り広くないからたくさんの騎士の人や侍女さんたちは無理よ?」


大勢はダメなのか。


「サンダーソニアが一緒ならどうにゃ?」

「許可が出るなら構わないわよ」


許可は出るんじゃないかな。

実は、回りに人がいない場所があるならと、すでに大まかな許可は貰ってあるのだ。今日再確認しよう。


朝ご飯のあと畑を見に行くと、リラにあった。リラは、見物客に軽食を売るつもりと話していた。


「私のリュックサックを使うと良いにゃ」


店に来ない人に物を売るなら、必要だと思う。


「ありがとうございます! お借りします!」

「頑張ってにゃ」


キボウと、世界樹の森と城に行き、カンパニュラとサンダーソニアに伝えた。


「お店の屋上は、転移でしか行けないのにゃ。そこならどうにゃ?」

「どうやって行くのですか?」

「ここから、そのままキボウが転移するにゃ」


「キボウ様、何人までよろしいでしようか?」

「なーにー?」

「キボウには人数制限はないにゃ。お店の屋上の方が、狭くて余りたくさんは無理なのにゃ」

「最低でも1人は護衛をつけさせてください」

「シッスルー!」

「キボウからの条件は、シッスルの参加にゃ」


「では、カンパニュラ、(わたくし)、シッスル、ギプソフィラでいかがでしようか?」

「最後の誰にゃ?」

「ユメちゃんが、よくお話しされている、最強の女性騎士です」

「師範の騎士にゃ?」

「その騎士です」


参加者が決まりかけたとき、ハイドランジアの使いが来た。

私に急ぎの面会希望らしく、サンダーソニアもカンパニュラも特に問題はないと言うので、この部屋に来てもらうことになった。


ハイドランジアは、ローズマリーを連れていた。私に話と言うのは、今まさに話していたユリの火炎魔法の見学についてだった。


「サンダーソニアは見学メンバーなのですか!?」


孫のカンパニュラは、良いらしい。でも、娘のサンダーソニアが許可されたなら、ハイドランジアも参加したいと言うことらしかった。


「キボウ、私を含め7人頼んでも良いにゃ?」

「いーよー」


「屋上は、とても狭いにゃ。それでも良いなら、キボウに連れていって貰うにゃ」


開催は12時30分からなので、それまでに出掛ける用意をしておくように告げ、私は店に戻ったのだった。


「何手伝ったら良いにゃ?」

「リラちゃんのクッキーか、私の手伝いか、少し休むのでも良いのよ」


ユリは、私を休ませたがる。ユリの方がよほど重労働だと思うんだけど、私の方が体力がないと考えているらしい。


「リラ、私もクッキー手伝うにゃ」

「ユメちゃん、お願いします」

「なんで、この色なのにゃ?」

「聖なる炎だからです!」


あまりにも自信満々に言うので、無理矢理納得させられたのだった。

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