夢の風船
城から帰ってきて、部屋で本を読んでいると、ご飯だと呼ばれた。
「夕飯は、ミニピザですよ」
ユリの言葉にローテーブルを見ると、大きい方のココットに入った具材が数種類有る。
「やさい、やさーい」
「カマンベール買ってくるの忘れてた」
で、これは何だろう? ピザトーストとは違うのかな? でも、言葉は知っているような?
「ミニピザって何にゃ?」
ユリが何故か言葉に詰まっていた。
「ユメ、好きな具をのせて作るんだぞ」
「楽しそうにゃ」
ソウが、分かりやすく説明してくれた。
ローテーブルに鉄板がついた器具を置き、何かを混ぜて有るケチャップを塗った丸い皮を焼いている。
私は届くところに有る具を、美味しそうなものを選んで皮にのせていた。色々な具があって目移りする。
いくつか同時に作るように言われたので、3種類作っていた。すると、キボウがユリの前に有った容器を取り、中から鮮やかな色合いの野菜を取ってのせていた。
赤と黄色で綺麗だな。私ものせよう。
キボウの次に私も少し取り、焼いているミニピザにのせた。
「あっ」
ユリが小さく呟いた。なんだろう? もしかしてユリの好物で、だからみんなが届かない場所に置いていたのかな? でも、ユリはそんなことはしないと思う。だったらなんだろう?
ソウもキボウものせていたし、むしろユリはのせていなかったので、何だか分からなかった。
あ! もしかして私が嫌いな野菜なのかな? 少し怖々食べたけど、ほんのり甘くて結構美味しかった。 それに、以前にも食べたことがある気がする。あ、そうだ、節分の海苔巻きの野菜巻きに入っていて食べたはず。
やっぱり分からないや。なんだったのかな?
「ユリ、大丈夫か?」
ソウがユリに声をかけた。
「なんでもないわ。少し考えごとをしていただけよ」
ユリは、チーズをのせていないミニピザにチーズをのせていた。ユリ元気になったかな?
「ソウ、以前買ったカマンベールが、冷蔵庫の奥に有ると思うわよ?」
「え、本当?」
ユリは、冷蔵庫にカマンベールがあるかを考えていたのかな?
ユリから言われたソウは、すぐに冷蔵庫に取りに行っていた。
カマンベールは、ユリが切って、ソウに全部渡していた。
受け取ったソウは、早速一切れ焼いて、黒胡椒を削り器で削ってかけていた。何かニコニコしてちょっと珍しい。
「ソウ、それ美味しいのにゃ?」
「旨いぞ、ひとつ食べるか?」
「ありがとにゃ」
「キボーも、キボーも」
「なら、私にもお願い」
結局みんなが食べることになって、ソウが作ってくれた。
一口食べてみると、皮のパリッと感と、カマンベールのトロッとした濃厚なチーズと、ピリッとした黒胡椒が合わさって、とても美味しかった。
「思っていたより、美味しいにゃ」
「お酒のあてって感じね」
「おいしかったー」
「そりゃ良かった」
ソウはニコニコして、おかわりを希望したキボウに追加を作っていた。その間にユリが、煮たリンゴやチョコレートを持ってきて、デザートまで作ってくれた。ミニピザ面白い!
「そういえば、畑で気になったんだけど、キボウ、畑の端の、白っぽい花が下向きに咲いている植物、あれ何だ?」
「○▼□△!」
ソウの質問にキボウが答えていたけど、みんなも分からなかったみたい。だけど、あの分からない言葉は、前にも聞いたことがある。
「もしかして、あの種にゃ?」
「あたりー!」
やっぱりだ。あのときも聞き取れなかったけど、聞き取れないなりに、同じイントネーションに聞こえた。
「ユメ、何の話だ?」
「以前、キボウがお客の服についていた種を教えたことがあったのにゃ。その種を私が貰って、そのままテーブルに置いて忘れていたのにゃ。キボウが植えてくれたのにゃ。物凄く大きな綿毛がついた種だったにゃ」(※422話 夢の苦労)
私の説明に、何かユリは思い付いたらしい。
「大きな綿毛? 風船唐綿かしら?」
「あたりー!」
何とユリは、話題の植物の日本語名が分かったらしい。だけど、聞いたこともない名前で、やっぱりよく分からなかった。すると、ユリは解説を始めた。
「白っぽい小さめの花が垂れ下がるように咲いて、実は柔らかいトゲトゲがたくさん有って、私の握りこぶしくらいの黄緑色の実が生るのよね。その中に、大きな綿毛の種がたくさん入っているのよ」
「それって、花材に使ったりする?」
「使っているの見かけるわね」
「あれか。花は可憐なんだな」
ソウは、理解できたらしい。私はさらに分からなくなった。
「花は可憐って、どういう意味にゃ?」
「花材に使うのは、実の状態なんだけどな、トゲの有る風船のような見た目で、何かが生まれそうな、結構なインパクトなんだよ」
想像で補えない何か不思議な植物みたい。
「なんだか、楽しみにゃ」
その後、キボウが説明してくれたのは、私が風船葛を植えているので、似た感じの植物が好きなのだろうと考え、植えてくれたそうで、私は嬉しくてお礼を言ったのだった。




