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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の睡蓮

ソウはやっぱりキボウと転移していった。

キボウに聞いたら、キボウから手伝うと言い出したらしい。私は念の為、パウンドケーキを渡しておいた。


キボウにつかまっで転移した場所は、あきらかに貴族の別邸の前だった。目の前に池があり、水面には色とりどりの花が咲いている。


「うわー! モネの絵みたい!」


もねのえ? 何だろう? あとで聞いてみようかな。


「ユリ様、この花は何ですか?」

「これは、睡蓮(すいれん)よ」


これは睡蓮なのか。何処かで見たことがある気がする。


「素敵ですわね」

「凄いにゃ」


それにしても、絵画のように美しい。


「さかなー、さかなー!」

「鯉が泳いでるな」


キボウの指す指先を見ると、綺麗な鯉が泳いでいた。


「鯉がいるの? 餌やっても良いかしら?」

「聞いてくるよ」


ソウはすぐに聞きに行き、係の人を連れて戻ってきた。


「ユリ、鯉の餌って、何?」

「食パンの耳よ」


ユリは鞄から、ビニール袋にいっぱいに入った。切ってある小さなパンを取り出した。

魚がいる前提で用意してきたみたい。


「もったいない気がいたしますが、こちらの餌でしたら、問題御座いません」


切ってある食パンの耳、係の人も美味しかったみたい。


「あら、では、中身をおひとつどうぞ」


ユリは、何かを渡していた。耳を餌にするのだから、サンドイッチかな?


「ユメちゃん、鯉に餌やってみる?」

「やってみたいにゃ!」

「キボーも、キボーも!」


ユリは、全員に食パンの耳を配ってくれた。係の人は、餌やりしやすい池に、案内してくれた。


手にいっぱい持ったキボウは、投げる動作の時に、少しジャンプしたらしく、まとめて落としてしまっていた。


すると、一斉に鯉が群がり、大きな口をパクパクし、まるで食いつきそうな、もっと寄越せと言っているような、かなりの迫力だった。


キボウは後ずさりし、逃走して、ユリに抱きついていた。


「キボー、いらなーい」


ユリが、何があったの? と言わんばかりに驚いていたので、説明することにした。


「キボウは、餌を落としたのにゃ。鯉がたくさんで怖かったみたいにゃ」

「そうなのね。キボウ君はお腹空いてない?」

「ユメー、もらったー」


「ユメちゃん、キボウ君に何か渡したの?」

「転移したからにゃ、パウンドケーキを渡したにゃ」

「ユメちゃん、どうもありがとう」


魔力をたくさん使ったあとは、パウンドケーキに限るのだ。


鯉の居ない池は、小魚がいた。


「キボウ、この池には鯉は居ないにゃ」

「いないー?」

「大丈夫にゃ」


大きな鯉が怖かっただけで、魚が怖いわけではないらしい。少し水に手を入れ、私は残っているパンを投げ入れていた。


「最初の場所に戻るぞー」


ソウの声掛けで、キボウが私を連れ、転移してくれた。


「黒猫様、聖女王様、ご用意が整いました」


いきなり声をかけられ、少し驚いたけど、ユリも驚いていたので、相手は分かっていて待っていたらしい。


みんなで案内人についていくと、桶の中に、縦長に丸まった葉っぱのようなものがたくさん入っていた。


「うわー、凄い。こんなにたくさんの蓴菜(じゅんさい)って、初めて見ました」


これは、じゅんさいというらしい。


「ユリ様、これ、どうやって食べるんですか?」

「一番簡単なのは、この葉の回りのゼリー状のものを崩さないように丁寧に洗ってから、ざるに入れてさっと湯につけて茹でて、色が変わったらすぐ冷水にとって、酢の物かしら? 何ならポン酢でも良いわよ」


山菜の一種とかかな? こごみみたいに美味しいと良いなぁ。


「お店に帰らないと無理ですね」


あれ? リラは今食べるつもりだったの?


「これ、下処理してあるみたいだし、茹でてみる?」


どこで? と疑問に思った瞬間、ユリは指輪を杖に変えて何か色々なものを取り出していた。


「ユリ、キャンプでもするのにゃ?」


私は思った疑問を聞いただけなのに、ソウはなぜか笑い転げていた。


「さすがユリ様!」


リラとマリーゴールドは、楽しそうに手伝い始めていて、私も手伝いに加わることにした。


「飲料水を分けてください」

「か、かしこまりましたー!」


案内人は、ユリに頼まれた水を取りに行き、ユリはさらに鞄から何か取り出していた。なんと、氷とピッチャーの水だ!


「水もあるのにゃ!?」

「茹でるのに使うほどは持っていないのよ」


いつのまにか、ソウが後ろにいて、話し始めた。


「俺も折り畳みテーブルと特製夏板くらいは持ってるけど、ユリの方が何枚も上手(うわて)だった」


え!? ソウも特製夏板持ち歩いてるの!? ユリは想定内だけど、ソウのそれは想定外だ。


ユリは水を受け取ると、手早く調理していった。


「下ろし生姜とか有ると良かったんだけどね」


出来上がった物をみんなに配り、食べてみた。


「取れ立て旨いな」

「美味しいにゃ!」

「つるつるー、つるつるー!」

「何か面白ーい!」

「喉越しが楽しいですわ」

「本当、美味しいわ。鮮度かしら?」


ユリも美味しいと言っていた。品質が良いのかな?


「あの、こちらの調味料は、何で御座いますか?」

「これは、ポン酢です。醤油と柑橘類の果汁を混ぜて作ります」


ユリはポン酢の作り方を、詳しく説明したみたい。案内の人はとても喜んでいた。


遠くに見える白い蓮の花が、あまり花が大きくないみたいなのに、凄く大きな池一面に咲いていた。


「花、大きくないにゃ」


私の視線を追ってユリも認識したみたい。


「たぶんだけど、あれはメインが花ではなく、地下茎の蓮根なんじゃないかしら」


菖蒲と花菖蒲みたいに、ちがうのかな?


「違うのにゃ?」

「花が大きい品種と、地下茎が太くなる品種があるんだと思うわよ」


あ、向き不向きの違いなのか。林檎と姫林檎みたいな差かな?


「成る程にゃ」


私が感心していると、ユリは質問してきた。


「ユメちゃん、このあとランチにするけど、一緒に食べる?」


今日はまだ世界樹の森もカンパニュラの所にも行っていない。


「分けてくれるなら、カンパニュラのところに行くにゃ」


私の答えに、ユリはリラとマリーゴールドを見ていた。

すると、リラは物凄く首を振っていて、マリーゴールドは少し怯えるように身を引いていた。

ユリは、全員で一緒に来てくれようとしたみたい。でも無理だよね。


「じゃあ、これ持っていってね」


ユリは、サンドイッチと、丸めたサンドイッチのようなものを取り出し、たくさんリュックサックに詰め込んでくれた。


なんだっけ、これ? 前にも食べたことがある。そういえば、ロールイッチってユリは呼んでいたと思う。


「ありがとにゃ!」


キボウが転移してくれた。


世界樹の森で、キボウに、籠に入れたロールイッチを渡し、城に行って残り全てを渡し、城のランチと一緒に食べてきた。今日は来た時間が遅すぎて、おやつではなく、ランチだった。

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