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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の梅事

6月3週目の土曜日。今日は、ユリが居ない。

ユリは、お菓子の免許の試験を受けに行くらしく、朝からバタバタと出掛けていった。

まずはラベンダーのところに寄って、聖女の服を着るらしい。


「ご飯、鞄にたくさん入れておいたから、好きなのを食べてね」

「ありがとにゃ」

「飲み物は、用意できるわよね」

「大丈夫にゃ」「だいじょぶ、だいじょぶー」

「他に何かあったかしら」

「大丈夫だから、安心して出掛けてにゃ」

「あー、もう時間がギリギリだわ!」


こんな感じで早めの朝ご飯のあと、慌てて出掛けていったのだ。

ソウも昼には戻ってくると言っていたし、午前中は城にいるから何も問題ないのに、ユリは心配性だなぁ。


でもさすがに城に行くには少し早すぎるので、今日は先に畑を見に行こうと、キボウを誘ってみた。


「わかったー!」


外に出ると、リラが歩いてくるのが見えた。


「リラー」

「リラ、早いにゃ」


リラもこちらに気がついた。


「おはようございます! ユリ様は、もうお出掛けですか?」

「おはよー、おはよー」

「おはようにゃ。さっき出掛けたにゃ。何か用事があったのにゃ?」

「物凄く急ぎと言うわけではないんですけど、早めに聞きたいことがありまして、戻られた頃に又来ますね」


リラはあっさり帰ろうとしていた。 


「何か伝言するにゃ?」

「ありがとうございます。でしたら、アルストロメリア会に、マリーを連れていってはどうかと考えました」

「マリーゴールドにゃ?」

「私より余程、会にふさわしいと思うんです」


マリーゴールドはそもそも貴族だし、あの伯爵家の次男オリーブ・コバルトブルーと結婚するかもしれないし、確かにそうかもしれない。


「マリーゴールドは、貴族と結婚するのにゃ?」

「可能性が高くなったと思います」

「確かにそうだにゃ。ユリに伝えておくにゃ」

「ありがとうございます」


リラは帰っていった。お店の準備があるのだと思う。

リラが帰ったので、キボウに声をかけようと思ったら、キボウはとっくに植物の世話を始めていた。


「手伝うにゃ。それなんにゃ?」


なんとシャワーノズルつきのホースリールが置いてあった。


「ソウ!」

「ソウが用意したのにゃ?」

「あたりー!」


水やりが、格段に楽になった。

それでも、店舗入口に植えてある希望(青いアルストロメリア)には、じょうろで水やりをするらしい。目立ちすぎるからかな。


バタフライピーが美しく咲いたままになっている。


「キボウ、バタフライピーは取らないのにゃ?」

「あとでー」

「わかったにゃ。そろそろ城に行くにゃ?」

「わかったー」


道具を片付け、手を洗ってからキボウに転移して貰った。


世界樹の森で、キボウはホワイトボードを持ってすぐに出てきた。


◇ーーーーー◇

梅ジュースの追加をお願いできないでしょうか。

◇ーーーーー◇


梅酒や梅ジュースを配ったのは、作った翌日の一昨日(おととい)だけど、ここでは10倍の時間だから、大事に飲んでもすでに無いのだろうね。


私はホワイトホードを消して、付属のペンで返事を書き込んだ。


◇ーーーーー◇ 

ユリに頼んでおくにゃ。

◇ーーーーー◇


「キボウ、返事を書いたから、お願いするにゃ」

「わかったー」


キボウがホワイトボードを置いて、すぐに戻ってきた。


「ユメー、まほうのみいるー?」

「魔法の実にゃ?」

「ユリ、ネコー。ユメ、てんいー」

「ユリが猫に変身出来るようにしたあの実にゃ? 私は再び転移が出来るようになるにゃ?」

「わかんない」


確率が低いと言う意味かな?


「貴重なものにゃ?」

「だいじー」

「なら、要らないにゃ。キボウには迷惑かもしれないけど、転移は頼んだにゃ」

「だいじょぶー。キボー、てんいー!」


キボウが転移してくれるなら、私自身が転移できなくてもそんなに困らないと思う。家に戻るのは出来るみたいだしね。


キボウは張りきって城に転移してくれた。ちゃんとソウの部屋だ。


「ユメ様、お待ちしておりました」

「サンダーソニア、久しぶりにゃ」

「今日は、ゆっくりされると伺っております」


「サンダーソニア、お願いがあるにゃ」

「何でございますか?」

「私の事は、ユメちゃんと呼んで欲しいのにゃ。私の記憶は、今月が限界みたいにゃ。すでに、世界樹の森に行ったことを思い出せないにゃ」


驚いた顔をしたあと、慌てて答えるようだ。


「か、かしこまりました」


少し青い顔をして、サンダーソニアは考え込んでいた。


「あの、ユメさ、いえ、ユメちゃん、痛かったり、辛かったりはございませんか?」

「大丈夫にゃ。毎日幸せにゃ」

「それならよかったです」


やっとサンダーソニアは笑顔になった。


「待っていたと言うことは、移動するのにゃ?」

「はい。今日は、(わたくし)のサロンで集まります」

「カンパニュラは来るのにゃ?」

「はい。勿論でございます」


私は安心して、サンダーソニアの案内について行った。


部屋は広く、サンダーソニアの侍女たちの他、カンパニュラの侍女たちもみんな揃っていた。


今日のお菓子を提供し、普通の紅茶が出され、一段落(いちだんらく)すると質問された。


「ユメさ、ユメちゃん、質問がございます」

「なんにゃー」

「先日いただいた梅ジュースと言うのは、ユリ様のお店で販売されるのですか?」

「聞いてないけどにゃ。たくさんは作ってなかったにゃ。売るほどはないと思うにゃ」


梅酒はたくさん作っていたけど、梅ジュースは3瓶しか作らなかったのに、1瓶はここに持ってきたんだよね。


「作るのは難しいのですか?」

「カンパニュラよりも幼い女児も仕込みを手伝っていたにゃ。材料の入手と秤を使えるなら作れると思うにゃ」

「材料でございますか」


メイプルたちも追加を頼んできたし、大人気だなぁ。


「もしかして、もう無いのにゃ? 無いなら瓶は返してにゃ」

「中にあった実はどうしたらよろしいでしょうか?」

「ユリは、水と砂糖を足してジャムを作ったり出来るわって言っていたにゃ」


ここで、カンパニュラが手を上げた。


「ゆめさま、ユリさまに、つくりかたをおそわることは、できないですか?」

「簡単だからにゃ、材料さえどうにかなるなら、私でも教えられるにゃ。仕入れはユリに聞いておくにゃ」


「あの、王妃様が、梅酒と言うお酒をユリ様から贈られたと伺っております、こちらは難しいのでしょうか?」

「作り方は、梅ジュースよりも簡単にゃ。材料次第にゃ」


梅ジュースの質問だらけの歓談になった。


「今日、ユリが戻ってきたら聞いてみるにゃ。瓶を用意するのはソウだから、ソウにも聞いてみるにゃ」

「よろしくお願い致します」「よろしくお願い致します」


ほぼ全員から頼まれた。


家に戻り、ソウとキボウと3人でお昼ごはんを食べ、今日の話をした。


「瓶は腐らないから、注文だけしておくよ。ユリに言われるまで向こうの俺の家に置いておけば、問題ないしな」

「ソウ、ありがとにゃ!」


夕方帰ってきたユリに、リラの件と、メイプルの件と、城の件を話した。ユリは、やっぱりねーと言って、笑っていた。

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