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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇黒猫ユメ◇

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夢の卵殻

今日のお城に持っていくおやつは、ポテトチップスだった。

朝作るのを見たけど、スライサーを使って薄切りしたジャガイモを、水に良く晒して、しっかり水気を切って、油で揚げるだけらしい。味付けは、うす塩と言っていた。


「すぐ湿気るから、必ず鞄に入れて持っていってね」

「わかったにゃ」

「あとこれ、作り方の詳細」


そう言ってユリが渡してきたのは、2組みの、作り方の説明を書いた紙とスライサーだった。


スライサー込みで、作り方なのかもね。私は少し笑いながら受け取り、少しだけ味見をしたキボウは、早く城に行って食べたいと急かしてきた。


横で見ていたソウが、なんとも言えない顔で「これも作れるのか」と呟いていた。


キボウが転移をし、世界樹の森でキボウに、ポテトチップスと、作り方の紙とスライサーを渡した。


「これー?」

「これを使って、ポテトチップスは作るのにゃ」


キボウは、食品以外を渡されたことに驚いたらしい。

ユリは当然のように用意して渡してきたけど、城の料理人はともかく、アネモネは揚げ物なんて作れるのかなぁ?


まあ、とにかく渡したので、キボウは素直に受け取り、置いてきたみたい。

作り方の紙に書いてある、芸術的な四角は、もしかしてスライサーの絵かなぁ。見た人が理解できると良いなぁ。


城に転移して貰い、今日はお菓子を渡さずに、控え室まで行き、そこで先に作り方の紙とスライサーを渡した。次にポテトチップスを出し、銀色のトレーいっぱいに山積みした。


「こちらが、この紙に書いてあるお菓子なのですか?」

「その通りにゃ。ポテトチップスにゃ」

「今日は、分け(やす)そうでございます」

「置いておくと湿気るのにゃ。早く食べてにゃ」

「かしこまりました」


メイドたちは、慌てて皿に分け、急いで配っていた。


私も席に着き、挨拶の後、今日のお菓子を説明した。


「今日は、ポテトチップスにゃ。作り方の説明と器具も持ってきたにゃ。追加は、城の厨房で作ると良いにゃ」


見た目が地味なポテトチップスは、食べるまでは興味がある人は少なかったみたいだけど、ひとくちパリッと食べたら、止まらなくなっていた。


「これが、スープに入っている芋と同じものから出来るのですか!?」

「ジャガイモにゃ。ユリに質問があるなら、手紙にして欲しいにゃ。料理人にも伝えておいてにゃ」

「かしこまりました」


すぐに食べ終わってしまい、即、作り方の紙とスライサーが、城の料理人に届けられた。


折り紙のバラの話や、行ってみたい地方の話で盛り上がっていると、城の料理人が作ったと思われるポテトチップスが届けられた。


ちゃんと現物も届けたらしく、良いできにみえた。


「おいしー、おいしー」


味見したキボウが、美味しいと言っているのて、上出来なんだと思う。私も1枚だけ食べてみた。

ユリとは塩加減が違うけど、美味しくできていた。


「美味しくできてるにゃ」


こうして、合格を出してから、私とキボウは家に帰ってきたのだった。


なぜかみんな集まっていた。リラ、シィスル、マリーゴールドに、リナーリまでいる。


「何やってるのにゃ?」

「カリカリ梅を作ろうと思ってね。ユメちゃんも参加する?」


それなんだっけとは思ったけど、何か作るんだなと理解した。


「良いのにゃ?」

「勿論よ」


「キボーも、キボーも!」

「はい。キボウ君も参加してください」


キボウでも出来る何かを作るのか。なら、簡単なのかな?

ソウも参加するらしい。


「急ぎだろうから、さっさと説明を始めるわね」


ユリは一通り作り方を説明した後、実践に入っていった。

水に漬け込む時間は、キボウが時送りをし、乾燥させる時間は、ユリが乾燥の呪文を唱えていた。大急ぎで作り方を説明するらしい。


リラたちが、恐らく昼休みに来ているので、仕事に支障がでないように、急いでいるのだと思う。


「色を赤くしたい人は、塩揉みした赤紫蘇を加えると良いんだけど、手に入らなければ、乾燥ローゼルでも良いです。水分が出てから加えます。食べ口を優しくしたい場合は、糖分も加えます。一緒に塩の倍くらい足してください」


色付けも楽しそうだなぁ。


「ユリ、バタフライピーを足したら、青いカリカリ梅になるにゃ?」

「残念ながら青くはなりません。でも、赤紫っぽくはなるかもしれないわね。試した事がないから正確には判らないわ」


あ、これ梅だから、強酸性なのか。それは青くはならないよね。


「ユリ、なんで卵の殻を加えるの?」

「梅の水分が出ると、その酸で梅のペクチンを柔らかくしてしまうのを、卵の殻を加えることで、ペクチン酸カルシウムとか言うのになって、柔らかくなるのを防ぐんだったかな? 貝殻でも良いらしいけど」

「成る程な」


ソウは、食べられそうもない材料が気になったみたい。


「では皆さん、袋に名前を書いて、涼しい場所か、冷蔵庫に入れてください。1か月くらいで出来上がります。色を染めたい人は、水分が出てから足してください」


「ユメー」


キボウが冬箱を持ってきた。


「時送りしてくれるのにゃ?」

「いーよー。いっかげつー!」


取り出してみると、液体がたっぷりあり、しっかり漬かっているようだった。


「ユリ、食べてみても良いにゃ?」

「時送りしたの? 私にも1粒貰える?」


私とキボウは、その場の全員に一粒ずつ配ってみた。

私のは物凄く酸っぱくて、キボウのは糖分を足してあり食べやすかった。でも、その酸っぱさで思い出したのだ。


「これ、食べたこと有るにゃ!!」

「あら食べたこと有るのね」

「なんか、思い出したにゃ。屋敷の調理人が、どうやっても柔らかくなるって言って悩んでいたはずにゃ!」


カワイツバサの頃、メイドと料理人が話していたのを聞いたことを思い出した。売っているのを買っていては高いから作ろうと考えたらしい。そうか、カルシウムが足りなかったんだね。


「ユリ様、ありがとうございましたー!」


私がしみじみと考えていると、リラたち4人が走って帰っていった。


「嵐のようだったな」

「火曜か金曜まで待って、梅が柔らかくなったらカリカリ梅作れなくなっちゃうし、しょうがないわよね?」


あれ? 置いておくとダメって、鞄にいれるのではダメなの? 鞄には、材料状態の物は入れないのかなぁ?


このあと、残りの小梅は、ユリが全て甘いカリカリ梅になるように漬けていた。樽に20kgくらい有るらしい。

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