夢の復活
昼食の為にメリッサとイポミアが抜けて、イリスと二人になった。
キボウも手伝ってくれているけど、注文は取れないので、こぼれにくいものを運ぶのを頼んでいる。
私が配膳に加わったのは先程なので、しっかり頑張ろうと思う。午前中は、少しだけ休むつもりでベッドにのびたら、よほど疲れていたのか、目が覚めたら11時を過ぎていた。
何と言うか、一人分の魔力しか使わないはずなのに、転移で物凄く疲れたみたいで、ごっそり魔力が無くなった時のような疲れかただった。
まあ、午前中にたっぷり休んだ分も、しっかり働こうと思う。
あ、向こうのテーブルで、手を振って呼んでいるみたい。
「黒猫様、今日はなぜ、女性か未成年者が居ないと入れないのですか?」
「ユリの考えだとにゃ、喫茶がメインの甘いものを売る店は、女性がたくさん来るイメージらしいにゃ」
「では、本日のおまけは、女性や未成年者の方ではなく、成人男性ということでしょうか?」
「そうだと思うにゃ」
「さすが女王陛下、考えることが我々とは違いますなぁ」
堂々と批判? 何だろう、どういう意味だろう?
「皮肉にゃ?」
「違います、違います。大手を振って女性が出歩ける世の中を作ろうという試みとお見受け致しました。私も商売人なのです。両手を上げて大賛成です」
「それなら、良かったにゃ」
「女性連れには、値引きや、おまけ付きなど、頑張らせていただきます」
「頑張ってにゃ」
「ありがとうございます」
最近は4人で配膳していたので、2人だと結構忙しい。
「ユメ様ー」
「なんにゃー?」
そばまで行くと、ニコニコした客が話しかけてきた。
「今日のおやつは、再販ですね。又食べたかったので、嬉しいです」
再販? 魚型のお菓子ではないと思うから、ゼリーの方かな? ゼリーなら、クリスマスに色々売っていたときにその中にあったかもしれない。
「ミルクゼリーにゃ?」
「ゼリーもそうですけど、若鮎って、5年前にも売っていましたよね」
「そうなのにゃ?」
「あれ? そういえば、ユメ様は夏くらいからお手伝いしていましたよね。だから知らないのかなぁ。5年前も、6月1日に売っていました」
「教えてくれてありがとうにゃ」
6月の記憶は全く無いや。
入口で、イリスと話している客がいた。もめているわけではなさそうだけど、何だろう? そっとそばに行くと、今日入れない理由をイリスが説明していた。
「ユリ様からは、同じものも出す予定と伺っております」
「絶対にある?」
「売り切れなければとしか。確認して参りましょうか?」
「私が聞いてくるにゃ」
「ユメ様、お願いします」「ユメちゃん、お願い致します」
イリスの代わりに、厨房に確認に行くことにした。
「ユリー、明日出すものは、今日と一緒にゃ?」
「予定では、若鮎はないんだけど、残ったら売るかもしれないわ。あと、バラジャム仕上げは無い予定よ」
「明日はなに売るにゃ?」
「にゃんこ焼きとミルクゼリーは確実で、他に何か作ろうかと今相談しているわ」
名前、にゃんこ焼きになったのか。
「わかったにゃ」
良し、伝えに行こう。
戻ろうとしたら、ユリから頼まれた。お店に来ているコニファーの従業員に、注文を取りに来てくれるよう、伝えてほしいと言うことだった。
私は店に戻り、先にイリスに頼み、コニファーの従業員に、注文を取りに来てほしいとユリが言っていると伝言を頼んだ。そのあと入り口の客に、ユリから言われたことを説明することにした。
「ミルクゼリーはあるにゃ。バラジャム仕上げは無しにゃ。若鮎は、売れ残るならあるにゃ。明日は、形の違う若鮎と同じお菓子、にゃんこ焼きがあるにゃ」
「なんと! では、明日参ります」
お客は、揚々と帰っていった。情報を回すためなのかな?
「ユメ様、今聞こえちゃったんですけど、にゃんこ焼きとはどういう物ですか?」
「さっき食べていた若鮎の、形違いにゃ」
「おー。それは素晴らしい」
「数制限はありますか?」
「ユリとリラがたくさん作ったはずにゃ」
「あー、リラさんは、今日はこちらですか」
「そういえば、そうだにゃ」
当然のように居るから気にしていなかった。
キボウが、物凄くニコニコしながらお店に戻ってきた。いつの間にかいなくなっていたのだ。
「キボウ、何かあったのにゃ?」
「キボー、かっこいー、ソウ、いったー」
「ソウから、格好良いと言われたのにゃ?」
「あたりー」
うーん。何だろう? 考えてもわからないから、後でソウに聞いてみようかな。
「キボウ、どこに行ってたのにゃ?」
「はたけー」
「そういえば、今日は畑に寄らずに出掛けたにゃ」
「さいたー」
「何が最多なのにゃ? にゃ、花が咲いたのにゃ?」
「あおー」
「バタフライピーが咲いているのにゃ?」
「あたりー」
「後で見に行くにゃ!」
休憩時間にユリを誘って、バタフライピーを見に行こうと思った。
もう1時間経ったのか、イポミアが交代に来た。
「ユメちゃん、そろそろお昼の交代です」
「ありがとにゃ。引き継ぎは特に無いにゃ。あとを頼んだにゃ」
メリッサは、イリスと引き継ぎをしていた。注文をして、まだ出ていない料理があったみたい。
私はキボウに声をかけ、厨房へ顔を出した。
「ご飯にゃ?」
「はい。用意できているわ」
「ごはん、ごはんー」
引き継ぎが終わったらしいイリスも来て、エプロンを脱いでいた。
「イリスさん、マーレイさんと別になってしまってごめんなさいね」
「え、そのようなことは、全く問題ありませんので、どうかお気になさらないでください」
「ありがとう」
そういえば、イリス以外は身内ばかりのメンバーだ。ユリは気になったのかもしれない。
作業台2つを使って、私は、イリスとカエンの3人でテーブルを囲んだ。もうひとつに、ユリ、ソウ、キボウ、葉がいる。
「カエン、リラは何を作っているのにゃ?」
「ユリ御姉様が、予定の作業は終わっているから、好きなものを作って良いわと、おっしゃっていました」
イリスが、大分不安そうな顔をしていたけれど、大丈夫だと思う。
「ユメちゃん、お疲れは、大丈夫ですか?」
「90分くらい寝たから大丈夫にゃ。ありがとにゃ」
何だかイリスには、私が心配されていたみたい。キボウはそのまま手伝っていたらしいので、余計に心配かけてしまったのだと思う。
リラがなにか思案しながら、ゼリーらしき物を作っているのを眺めていた。すると、食べ終わったらしいユリが、リラに話していた。
「リラちゃん、私は部屋で休憩してくるから、用があったら、以心伝心で呼び掛けてね」
「はーい。誰か訪ねてみえた場合はどうしますか?」
「急用でなければ、待たせて良いわ。手に負えそうになければ呼んでね」
「はーい」
ユリは先に休憩に入ってしまった。
「にゃ、ユリ行っちゃったにゃ」
「ユメ、ユリになにか用があったのか?」
「畑の花を見に行こうと思っていたのにゃ」
「俺で良ければ付き合うぞ?」
「一緒に見に行くにゃ!」




