夢の同行
花の水やりをしながら、キボウと話していた。
「持って行きたいものは、何かあるにゃ?」
「とまとー! べーこんー!」
ベーコンは持って行ったことがあるから、なんだろう?
「にゃー。スパゲッティにゃ?」
「すぱべっぴー!」
キボウに持って行きたい物を聞いたら、こう答えていた。あのスパゲッティが気に入ったらしい。
私はキボウより先に戻り、ユリの鞄に有るであろう2種類のスパゲッティを提供して貰おうと、掃除をしているユリに話しかけた。
「ユリ、ミートソースとカルボナーラは、まだあるにゃ?」
「まだ少しあるわよ。食べたいの?」
「キボウが、持って行きたいみたいにゃ」
ユリはすぐに出してくれた。各半人前が7つずつあるらしい。14個、全て渡してくれた。
これ、なんと半鶏丼と同じココナツの器に入っていた。誰に譲ることになっても大丈夫なようにと思って入れたらしい。
確かに、お店の食器にのっていたら、返して貰わないといけなくなるし、お店で食器が足りなくなってしまう。
「ユリ、ありがとにゃ! そうだにゃ、キボウのために何か作って欲しいにゃ」
「キボウ君のため?」
「私の頼みで、キボウはスマルトブルー男爵家に行ったのにゃ。その分の手数料にゃ」
「なら、何か考えておくわ」
「頼んだにゃ!」
ちょうどキボウが、水やりから戻ってきた。
「キボー、きたー」
「世界樹の森と城に行くにゃ?」
「わかったー」
キボウとでかけようとすると、ユリとソウが、ユリがキボウから誕生日に貰った木の実のことを話していた。
「そういえばユリ、誕生日にキボウに貰った木の実は何だか判ったの?」
「え? あー。そのままになっているわ」
あ、あれ、そのままなんだ。結界のことを私が聞いたように、ユリも世界樹様に聞いたら良いんじゃないのかなぁ?
「キボウと一緒に世界樹様のところに行って、質問すると良いにゃ」
「それしたら、1か月過ぎちゃわない?」
「今は、プラタナスのために時間の流れを変えているからにゃ。大丈夫だと思うにゃ」
「そうなの!?」
ユリは物凄く驚いているみたいだった。
私は、ユリに渡すのを忘れていた手紙を思いだし、慌ててポケットを探した。あ、有った。良かった。
「それとにゃ。これ、メイプルからの注文書にゃ。サンダーソニアの同意も得てるにゃ。渡すのが遅くなってごめんなのにゃ」
ユリは手紙を読んだあと、ソウに見せていた。
「どんなものが良いか、リサーチしたいわね」
「なら、みんなで行くか」
「いっしょ、いっしょー!」
メイプルたちには会えないと思うことを伝えると、ユリは小さいホワイトボードを持ってきた。「本当はお店で使う予定で買ったけど、オーパーツ過ぎてやめたのよ」と話していた。
ユリが着替えに少し時間がかかるというので、私も少しきちんとした服に変えてきた。ユリは、何を着て来る気だろう?
着替えてきたユリは、結婚式の時にソウの母と養母
が着ていたような、前側にだけキンキラの派手な絵の描いてある黒い着物だった。なんだっけ、黒留袖だったかな。
ソウは三揃えのスーツで、なぜかキボウは、麦わら帽子を被ってきた。
全員揃ったので、ユリが世界樹の森の前に転移させた。
「あ!今日、1日だったわ!」
ユリは忘れていたらしい。今日は結界の壁がなく、すぐに芝が見える。
「キボウ君、本当に、ご訪問しても時間過ぎない?」
「だいじょぶ、だいじょぶ」
「キボウ、俺も着いていって、良い?」
「だいじょぶ、だいじょぶ」
用事もない、4度目の私こそ、行っても良いのかな?
「私が一緒に行っても失礼にならないにゃ?」
「だいじょぶ、だいじょぶ」
キボウを信じて、着いていくことにした。
「ここー」
キボウは、案内をすると、さっさと行こうとするので、引き留めた。
「キボウ、待つのにゃ。今日のパスタにゃ」
今日も、リュックサックごと渡した。
「あ、キボウ、メイプルに会うなら、このボード持っていってくれる?」
ソウは、小さいホワイトボードをキボウに渡していた。
「わかったー」
キボウは行ってしまったので、そろそろ世界樹様がお出ましになるのかな?と考えていると、空気が重くなった。
前に立っていたユリがいきなり座り、頭を下げ・・・、その姿、どこかで見たような・・・。
私は意識が飛んでいた。
いつかどこかで見た、どこで見たのだろう?
ユリが世界樹様と話しているのは何となく意識の端で感じていた。でも全く動けなかった。
「ユメちゃん? ソウ?」
ユリに呼ばれ、私は現実に戻ってきた。
「2人とも、大丈夫?」
「大丈夫だ。少しボーッとしてた」
「大丈夫にゃ。ユリは何ともないにゃ?」
「私は何ともないわ。ソウ、メイプルさんのお返事はなんて書いてあったの?」
なんだか、ソウが慌てていた。珍しい。
ソウは内容をユリに説明し、書き換え、キボウに渡していた。
キボウはすぐに戻ってきたので、世界樹の森を出て、転移陣から城へ転移した。




