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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇子供ユメ◇

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夢の交代

休憩に入る前に、ユリから声をかけられた。


「ユメちゃん、エプロンを新調するから、また生地を選んでくれる?」

「分かったにゃ。キボウはどうするにゃ?」

「キボウ君のもお願い」

「キボー、なにー?」

「ユリがエプロンを作るにゃ。キボウも好きな模様を選ぶと良いにゃ」


私がキボウと休憩室に行こうとすると、ユリはイリスにも声をかけていた。


「イリスさんも、選んできて貰える?」

「かしこまりました」


休憩室には、メリッサとイポミアがいて、何かノートを書いていた。


「布を選びに来たにゃ」

「こちらに有りまーす」


キボウが見やすいように、メリッサとイポミアがたくさんの布を並べてくれた。


私は美味しそうな西瓜(すいか)とかき氷の絵の布にした。食べ物やさんなのだから、美味しそうな絵が良いと思う。

イリスは大柄な花模様を選んでいた。キボウは大きなクリスマスツリーの絵の布を選んでいた。


「キボウ、エプロンのポケットで、絵が隠れるかもしれないにゃ」

「キボー、ポケットいらなーい」

「ユリに伝えておくにゃ」


キボウが選んだのは、生地と言うより、クリスマスツリーのタペストリーみたいな感じだった。選んだ二枚ともがクリスマスツリーなので、大きな木が良かったのかな?と思った。


一旦ユリに見せてから、休憩室に生地を戻し、私は休憩に入った。


ソウに用意して貰ったタイマーで、30分後にセットし、ベッドにのびた。

眠りはしなかったけど、ゆっくり休んだので、だいぶ疲れがとれた。


お店開始前に戻ってくると、ユリはエルムと話をしていた。

どうやら、会報誌の内容を確認していたみたいで、そのまま看板を持ったユリと、エルムは外に行ってしまった。


「ユメちやん、テーブル出してきて良いですか?」

「お願いするにゃ。今日は誰から外を担当するにゃ?」

「最初は一番忙しいと思うので、私が行こうと思います」

「わかったにゃ。頼んだにゃ」

「はい」


イリスはマーレイと、折り畳みテーブルを持って、外に出ていった。


少しすると、ユリはレギュムと戻ってきた。

注文書を確認しながらレギュムが言った数を、ユリは渡していた。地方貴族からの注文分らしい。


なんと、外の販売をクララが手伝うらしい。最初の担当がイリスで良かったと思った。


お店が開始すると、昨日よりはパニックにならずに、楽だった。

あ、メリッサとイポミアがいて、お店が3人だから楽なのか!


ユリが言っていた人数は、本当に必要な人数だったんだなと実感した。


「黒猫様!クッキーはありますか?」

「黒猫クッキーにゃ? 他のクッキーもあるにゃ」

「黒猫様のクッキーが希望です」


私は黒猫クッキーを取りだし、手渡した。


「500(スター)にゃ」

「ありがとうございます!」


その後も、来客はいつも通り多いのに、慌てふためく忙しさはなかった。


90分経って、メリッサとイリスが、交代した。


「ユメ様、アイスココア注文できますか?」

「聞いてくるにゃ。頼むなら何個にゃ?」

「可能でしたら、4つお願いします」

「待っててにゃ」


飲み物を頼みに厨房へ行くと、ユリとリラが、違う器でサクラムースを作っていた。


「アイスココア注文取って良いにゃ?」

「大丈夫よ」

「アイスココア4つにゃ」

「アイスココア4つ、了解です」


すぐに作ってくれたので、厨房もそんなに忙しくないのかもしれない。


半鶏丼の持ち帰りは、ソウの鞄から袋に入ったものを取り出して渡すだけだし、サクラムースもいくつか箱にいれて用意がしてある。これは、マーレイが箱詰めして冷蔵庫に用意してくれている。たまに大口が有るけど、殆どの人は、半鶏丼と同数しか買っていかない。


キボウがクッキーを売りにきたり、いつも通りのおみせだった。

開始から3時間が経ったので、私はメリッサと交代することにした。


「メリッサ、交代するにゃ」

「ユメちゃん、ありがとうございます」

「引き継ぎ有るにゃ?」

「特に無いです。お客さん側も慣れたみたいです」


私は担当の男性に挨拶し、席に付いた。


常に2つ入りをテーブルに2袋置き、1つや3つの注文の時だけ1つ入りを持ってくるらしい。なので、渡すときは、半鶏丼がまだ温かい。

手前に置いた硬貨を分ける箱に代金を入れ、販売のやり取りをしている間に、売ってしまった分を素早く補充してくれている。


「席に座って取り出したら良いにゃ。鞄を扱えないのは、イポミアだけにゃ。少し座って、売る方を担当するにゃ?」

「え?イリスとメリッサも魔力があるのですか!?」

「知らなかったのにゃ?」

「はい。貴族ってなんなのでしょうかね」


少し暇な時間に話を聞くと、三男なので、次期継承権が全く無いらしく、唯一の貴族としての矜持が、魔力の有無だったらしい。


「ユリから魔法を習って、色々使えるようにしたら良いにゃ」

「教えてくださるでしょうか?」

「攻撃魔法以外は、何でも教えてくれると思うにゃ。ただ、多すぎるからにゃ、具体的にどんな魔法と言わないと、教えるものを選べないと思うにゃ」

「そ、そんなにたくさん有るのですか!?」

「ユリ自身も使ったことがない魔法の方が多いのにゃ。でも女王の知識で、全て把握しているのにゃ」

「ハナノ様は、本当に凄いですね」

「ユリは、凄いのにゃ」


話が終わったのを見計らったように、整理券担当の二人が声をかけてきた。


「ユメ様、整理券全て配布終わりました。販売のお手伝いをしてもよろしいでしようか?」

「値段は把握してるのにゃ?」

「はい!」「はい!」

「なら頼んだにゃ。当日販売分と、整理券の分を間違えないようににゃ」

「はい!」「はい!」


私は鞄の担当の男性に確認した。


「イポミアが来なくても良いにゃ?」

「はい。3人で頑張ります」

「何かあったら呼びに来てにゃ」

「かしこまりました」


私は店に戻り、イポミアに、外の担当をしなくて良いと伝えた。


「イポミア、少しは慣れたにゃ?」

「はい!だいぶ勝手が分かってきました。とても面白いです」


お店もそんなに忙しくないようで、少し休もうかと厨房を覗くと、作業台に布を広げ、ユリとリラが布をカットしていた。あ、シィスルとマリーゴールドまで居る。

これは本格的に暇なのだろうと思い、少しだけ休むことにした。


10分くらい休憩し、外の販売を確認に行ってみた。

なんと行列が出来ていた。


「なんで行列にゃ?」

「皆さん、整理券の方です」


整理券があるからと、安心して遅くに来た人たちらしい。


「整理券の無い方は、こちらに並んでくださーい!」


1人が人を仕分け、2人が会計と販売をしていた。


「足りるのにゃ?」

「もしかすると、足りないかもしれません」

「店内在庫を見てくるにゃ」

「ありがとうございます」


私は、店内の在庫が入っている、ソウの鞄を探り確認した。

まだ30個くらいはある。


「帰りに買うのはあと何人にゃ?」

「はい」「はい」「あ、買います」「買いたいです」


イリスとメリッサが、素早く数を確認してくれた。


「残り、外に持っていくにゃ」

「かしこまりました」


イリスが、店内での必要数を外にだし、鞄ごと持ってきてくれた。


「お店の残りを持ってきたにゃ」


時間的に店内飲食を諦め、持ち帰りだけ買おうと思っていたらしき、整理券無く並んでいる人たちが、喜んだ。


無事、希望者に半鶏丼が行き渡り、半鶏丼の残りは12個だった。


「時間的に閉店にゃ!」


テーブルの畳み方を説明し、イリスと2人で、倉庫に片付けた。

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