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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇子供ユメ◇

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夢の藤園

ソウに連れられ、キボウと一緒に転移した。

先に来たユリが、何か看板を見ていた。


[oiaroino oi olicine]


なんだろう?私も読めない。


「さっきも思ったけど、これ、何て書いてあるの?」

「あー、看板、消えちゃってるな」


あ、そもそも読めないものだったのか!


「読めないにゃ」

「うわ、読めないです」

「よめなーい、よめなーい」


結果、誰も読めないらしい。

離宮の名前か、花園(はなぞの)の名前か、そんなところだろうと思う。


「これは、恐らくgiardino di glicineで、イタリア語の『藤園』かな」


なんと、ソウは看板を読んで見せた。しかも、消えている文字の説明までしてくれた。


「ソウ、さすがね!」

「ソウ、凄いにゃ」

「ホシミ様、凄いです!」

「すごーい、すごーい!」

「あはは。ありがとう」


さすが、元エリート公務員。一体、何か国語話せるんだろう?


藤園というのに、全く藤は見えない。

看板のついた門をくぐり、藤園の中に入ったとたん、素晴らしい絶景に圧倒された。


紫色の藤が、無数に咲き誇る藤棚が、終わりの見えない先まで続いているのだ。


「うわー」「凄ーい」「これは凄い」

「綺麗にゃー」「きれー、きれー」


みんな入り口で立ち止まり、その美しさに、暫し感動していた。


「想像よりも、凄いわね。いくつくらい咲いているのかしら?」


数えるのは無理そうな咲き誇りかただ。外から見えないようにしている理由が、良くわかった。


ユリが園内の地図を発見したらしく、みんなを呼んだ。

地図は、まだまだたくさんの藤があることを示していた。見ていたユリによると、ユリの好きな藤の花があるらしい。とっても楽しみだ!


「せっかく来たのだから、他の花も見ましょう」

「行こうか」

「楽しみです」

「見に行くにゃー!」

「みるー、みるー」


縦長な藤棚を回り込むと、優しいピンク色の藤があった。

先ほどの紫色の藤よりも、一つ一つの花が小さいのに、房の長さは同じくらい有る。


「紫色の花は高貴な美人って感じですけど、ピンク色の花は可憐な美少女みたいですね」

「リラの表現が凄いにゃ」

「リラ詩人だな」


リラ独特の感性で、藤を語っていた。こういう感性が有るから、絵が上手なのかな?


「確かに可憐ね」


ユリには、可憐に見えるらしい。


「ユメ、その辺に皆で並んでくれ」


ソウから提案された。


「わかったにゃー」

「はーい」

「ならぶー、ならぶー」


リラは花を見たまま動かないので呼んでみよう。


「リラも来てにゃ」

「え、はい。なんですか?」


とりあえず来てくれたリラに、簡単に説明しておこう。


「みんなで並ぶと、良いことがあるのにゃ!」

「わかりました。呼ばれたら並ぶようにします」


「良いぞー」


ソウの掛け声で、又、好きに花を見て回った。

少しじっと見るようにして、藤の花をしっかり見ていた。


「あ!私の好きな花がある!」


ユリは、好きな花を見つけたらしく、早足で歩いていってしまった。よし、追いかけよう。

私がユリを追いかけたからか、キボウとリラも追ってきた。


「うわー!なんですか?これ、これも藤なんですか?」

「これは、八重の藤よ。リラちゃん」


そこには、全く知らない藤の花があった。

花の形が全く違うのだ。普通の藤の花は、豆科の特徴的な形なのに、この藤は、まるで小さなダリアのようだ。


「この花は、妖艶な美女って感じですね!」

「知らなかったら、藤ってわからないにゃ」

「きれー、きれー!」

「へえ。これ藤なんだ。落ちてる花が、全く違うんだな」


みんなにも、藤らしく見えないみたい。でもとても美しい花だと思う。


「美味しそうね。うふふ」


八重桜の時も言っていたけど、藤に塩漬けはなかったと思う。


「ユリ、藤、食べるのにゃ?」

「藤は毒があるらしいから食べないわよ。加熱して毒抜きすれば、少量なら食べられるらしいけど、曲がりなりにも飲食店を経営しているのに、店主が食中毒になったら目も当てられないわ」


なら、何故言ったんだろう?


「確かにな。食中毒は不味いよな」

「禁忌ですね」


ソウとリラもダメだと言っている。

私が少し呆れていると、キボウは心配そうにユリに聞いていた。


「ユリー、ウィステリアたべる?」

「藤は食べないわよ。要らないわ」

「キボー、あんしん」


キボウが笑顔になった。


「キボウに心配されてるにゃ」

「あー、あー、あー。次、行きましょう!」


キボウにまで心配されたユリは、ごまかすように出発した。


「ユリ様、藤って、他の色もあるんですか?」

「白い花もあるわよ」

「紫、ピンク、白だけなんですか?」

「そうね。濃淡の差や房の長さの差はあるけど、色はその3色ね」


ユリとリラが花の色の話をしていた。紫、ピンク、白だけと言っていたのに、目の前にある花は、鮮やかな黄色だ。


「ユリ、あれはなんにゃ?」


私はユリに聞いてみた。


「あー、これは、通称、黄花藤(きばなふじ)。ゴールドチェーンとか、金鎖(きんぐさり)が、正しい名前ね。藤に似ているけど、藤の種類ではないのよ」


種別的に藤ではないらしい。知らなければ、黄色い藤にしか見えない。


「そっくりにゃ」

「良く似ているわよね」


今度は、リラが何か見つけたらしい。


「あー、あれが白い藤ですか?」


それは、棚になっておらず、しっかりと木立した木に、白い藤のような花がたくさん咲いていた。藤よりも花が小さく見える。そして、漂ってくる芳香がなんとも言えず良い香りだ。


「あれは、恐らく、針槐(はりえんじゅ)。アカシア蜂蜜の花で、ニセアカシアとも呼ぶわね。 本来のアカシアと言う花は黄色く形も違うのに、なぜこの白い花をニセアカシアと呼ぶのかしらね」


へえ。これも違う種類なのか。


「良い匂い!なんだか、幸せそうな花ですね」

「え? うん。良い香りの花よね」


リラとユリの言葉が微妙に噛み合っていなかったけど、私は何となく、幸せそうな花というフレーズが気に入った。


「向こうに、一番広い藤棚があるぞ」


ソウが教えてくれたので、みんなで移動した。


「わー!なんだか凄い!」

「まー!九尺藤かしら!」


房の長ーい藤があった。ものすごく見事だ。


「長いにゃ!」

「ながい、ながーい」

「房が1m以上ありそうだな」


今までの棚よりも少し高い棚に、その長い藤は咲いていた。房が長いから棚も高いのだと思う。

今の私の身長よりも房が長い藤なんて、初めて見た!


「うわー!貴婦人って感じですね!」

「それは、何となくわかるわぁ」


リラとユリが理解しあったみたい。


「こんなに長い房の藤は、初めて見たにゃ!」

「これは見事だな」


そうだ、ユリとソウの写真を撮ろう。


「ユリ、ソウ、ちょっと、そこの前に立つのにゃ」

「おー」「はーい」


じっと見つめた。うん、これくらいで良いかな?


「もう良いにゃ」


私がユリとソウを解放すると、リラに声をかけられた。


「あ!ユメちゃん、私の荷物、出していただけますか?」

「袋にゃ?」

「はい」


預かっていた袋をだし、リラに渡した。


「ユメちゃん、ありがとうございます。絵を描きたいと思います」


するとリラは、ユリとソウに頼みに行った。


「少々お時間いただけませんでしょうか?」


ユリもソウも快く了承し、無事時間を勝ち取ったみたい。

1時間の自由行動となった。

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