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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇子供ユメ◇

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夢の完売

お店が少し落ち着いた頃、ふと見ると、ユリが厨房から覗いているのが見えた。


「カトラリー!」


とうとう見ちゃったのか。


「あ、ユリ、手掴みは無理みたいにゃ」


私はユリのショックが少ないように、少し言い訳してみた。


「食べ難くないのかしら?」

「手掴みは抵抗有るみたいにゃ」

「え、だって、この国でもパンは手掴みで食べるでしょ? 海苔巻きは、おにぎりと同じようなものなのに」


まあ、そうなんだけど、殆どのパンは手掴みで食べるけど、殆どのご飯はカトラリーで食べるから、たぶん無理なんだと思う。


「ユリが言えば、みんな従うにゃ」

「強制はしたくないわ」


無理に従わせたいわけではないらしい。カルチャーショックなのだと思う。


「ユリは何しに来たのにゃ?」

「あ、売れ行きを聞こうと思って」


そういうことならと、私は、イリスとメリッサに確かめに行った。


「イリス、メリッサ、巻き寿司の売れ行きはどうにゃ?ユリが気にしているにゃ」

「はい。持ち帰り120が予定数だとすると、今の勢いだと足りないように思います。既に半分ほど売れています」

「ありがとにゃ!」


私はすぐにユリに報告した。


「売れ行き的には、既に半分以上出ているらしいにゃ」

「やっぱりそうなのね。店売り、細工巻きしか出ないものね。トーストとか、飽きたのかしら?」

「限定品から売れるのは、仕方ないと思うにゃ」

「それもそうね。なら、240組作るつもりで、頑張るわ」


ユリが戻ったあと、イリスとメリッサに、報告した。


「合計240組作るって言っていたにゃ」

「ありがとうございます。売り甲斐が有りますね!」

「どんどん売ります!」


キョロキョロした客に呼ばれた。


「黒猫様、この花模様の食べ物は、販売制限があると伺いました。 こちらのデザートも制限がありますか?」

「イチゴババロアは、制限無いと思うにゃ」

「でしたら、30個とかでもよろしいですか?」

「冬箱を持ってるなら、構わないにゃ」

「持ってます!段つきの冬箱を入手しましたので!」


これを期に、たくさん持ち帰りを入手したい人は、イチゴババロアを大量に購入していった。



「今、飲み物を取りに行ったら、リラとマリーゴールド様がいて、海苔巻きを巻いていました」


イリスが、少し青い顔でうなだれていた。


「にゃ? 何で作っているのにゃ?ベルフルールのお昼休みにゃ?」


私は皿盛りを取りに行くついでに、シィスルに聞いてみた。

すでにリラとマリーゴールドは居なかったのだ。


「シィスル、さっき、リラがいたのにゃ?」

「はい。お昼休みに来ていました。私がマリーの分だけ持っていったので、皆から羨ましがられて、マリーが食べ難いと言うことで、皆の分を作りに来たみたいです」

「成る程にゃー。ありがとにゃ!」


私は店に戻り、イリスにリラの事情を伝えてみた。


「イリス、リラは、マリーゴールドが一人で食べ難いから、作りに来たらしいにゃ」

「そうだったのですか?」

「弟子のためだったみたいにゃ」

「そうなのですね」


なんだか、イリスの顔色が良くなった。

親って、気苦労が絶えず、大変なんだなぁと感心した。


巻き寿司とデザート3個が同じ価格なのだ。

そのためか、寿司の個数制限を聞き、デザートを大量に買って帰る人が多く、なんと、デザートは売り切れてしまった。


「イチゴババロアは、全部売ってよかったのにゃ?」

「たぶんですが、明日の分まであったと思います」

「ユリ、忙しそうにゃ。後で言うことにするにゃ」

「かしこまりました」


今言ったからって、作れるとは思えず、混乱を助長するだけだと思い、落ち着いてから言おうと考えたのだ。


「ユメ様、今日のおすすめデザートはなんですか?」

「イチゴババロアがあったのにゃ。でも、売り切れてしまったのにゃ」

「なんとー!・・・もしかして、少なかったのですか?」

「たしか、400個作ったって聞いてるにゃ」

「え、えぇー!」

「明日も出してもらえるように頼んでおくにゃ」

「よろしくお願いします」

「わかったにゃ」


「あ、それなら、何か甘いものお願いします」

「何でも良いのにゃ?」

「はい」

「何か持ってくるにゃ」


私は厨房へ行き、ユリに、作れる甘いものを聞いてみることにした。


「ユリ、甘いものは何が作れるのにゃ?」

「フレンチトースト、葛切り、イチゴミルク、ジンジャエール、ココア、アイスココアかしら」

「ちょっと聞いてくるにゃ」

「はーい」


私は客に確かめ、フレンチトーストと、アイスココアを注文した。

その後も、フレンチトーストや、ピザトーストを頼む人がいて、巻き寿司は高くて値段が想定外だったらしいと理解した。なぜなら、明日もあるなら、明日は必ず食べますと宣言して帰る人がいたからだ。持ち合わせの関係らしい。



「ユメちゃん、どうしましょう。巻き寿司、足りなくなりました」


イリスが、私のリュックを持って、慌てて伝えに来た。


「皿盛りはまだあったにゃ。箱詰めにできないか聞いてくるにゃ」

「お願いします」


急いで厨房へ行き、ユリに尋ねた。


「ユリ、持ち帰りまだ追加作れるにゃ?」

「今作っている30組が最後よ」

「わかったにゃ。助かったにゃ」


すでに出来上がっている6箱を受け取り、店にもどった。


「イリス、残り30有るらしいにゃ。出来上がっているのをいくつか持って来たにゃ」

「ユメちゃん、ありがとうございます」

「ユメ様、ありがとうございます!」


どうやら、注文を聞いてしまってから、不足に気づいたらしい。


お一人様1点限りの巻き寿司が、ラスト1箱になったとき、「最後の1箱だわ!」と、メリッサが言った言葉を聞きつけ、名乗り出た客に売り、完売となった。


閉店時間になると、客はおとなしく帰っていったので、今日は忙しかったけど、特に揉め事もなく、平和に営業が終了したと思う。


ユリに、イチゴババロア400個を全て売ってしまったことを伝えると、驚いていたけど、明日の分も用意してくれると言っていた。


皿盛りの方は、一皿残ったらしく、ユリがメリッサに渡していた。


メリッサが帰ると、夕食前に、ユリがみんなに頼んでいた。


「申し訳ないけど、ご飯のあと、残業できる人だけお願いします」


あ、これはきっとイチゴババロアだ!


「はい!」「はい」「はい」「手伝うにゃ!」

「あ、俺も」「キボー、てつだうー」


残っている全員が手伝うらしい。

ご飯を食べながら、ソウが何を作るのか質問していた。

ソウは、厨房にいたから、イチゴババロアが足りないのは知らないよね。

明日は、 イリスとマーレイのほか、シィスルとマリーゴールドまで手伝いに来るらしい。


ご飯が終わると、イチゴババロアの仕込みが開始だ。


「器の用意、計量、仕込み100個分ずつ5回です」


みんな手分けして、イチゴババロア500個分を仕込んだ。なんとキボウが、最後まで手伝っていたのだ。


仕込みが終わる頃、リラとグランが来た。

リラはユリと少し話したあと、シィスルをつれ、グランと3人で帰っていった。


「グランは、シィスルさんを迎えに来たのねぇ」


イリスが帰りがけに呟いているのが聞こえてしまった。

そういえばグランは、マーレイとイリスと一緒に住んでいるはず。

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