夢の割振
無事、キボウがこちらへ来たので、面倒を見ることにした。
ユリは会を始めるらしく、挨拶を始めていた。
「カンパニュラちゃん、スワンシューは、出来立てを食べた方が美味しいので、琥珀糖を先に作っても良いかしら?」
「はい。こはくとうも作りたいです。よろしくおねがいします」
琥珀糖が先なのか。
キボウがやる気らしいので、やり過ぎないように見張ってようかな。
「キボウ、時送りをするまで、誰か手伝うのにゃ?」
「リラー? シッスルー?」
「そうだと思ったにゃ」
私がキボウと相談していると、担当決めで少しもめているみたい。
「シッスルはどうしたいにゃ?」
「ユメ様」
「誰と組みたいとか無いのにゃ?」
「ユリ様のお弟子さんの『リラちゃん』様は、平民というのは本当でございますか?」
「本当にゃ。あと、名前は『リラ』にゃ。ちゃんは名前じゃないにゃ」
「え!ユリ様が、そうお呼びになられていたので、ちゃんまでがお名前なのだと思っておりました」
「ユリは、誰にでも敬称付けで呼ぶのにゃ」
シッスルと話していると、担当が、リラに決まったらしい。
「ユリ様がおっしゃるのでしたら、そう致します」
ラベンダーが納得したようなので、リラがこちらに来た。
「はじめましてシッスル様、私はリラと言います。よろしくお願い致します」
「リラさんが担当で嬉しいです。こちらこそよろしくおねがいしますね」
「シッスルー、よかったねー」
「はい。キボウ様」
ユリのところに挨拶に来ていたメイドたちが、手伝いのため、各テーブルに来た。そのメイドがリラに声をかけた。
「リラさん、今日も頑張りましょう」
「よろしくお願いします。あと、名前はいつも通りでお願いしますね」
「あー、はいはい」
「リラ、何かあったのにゃ?」
「この人は、アルストロメリア会があるときは、計量などを担当するメイドですが、私がこちらでお世話になっていた頃からの知り合いで、私はメイド教育も受けたんです。そのときの教官でした。それなのに、今日ユリ様と部屋に来たときに『リラ様』とか言い出して、私をからかっているので、」
「リラをからかうなんて凄いのにゃ!」
「ユメちゃん、酷いです。あ、今日は、ユメ様ってお呼び致します」
「にゃー。そういう感じにゃ。悪かったにゃ」
確かに、距離を取られたような気がした。
リラは仕返しで言ったわけではなく、立場上、ユメ様と呼ばないと、視線が厳しいと言っていた。まあ、この場だと、私の正体を知っている人の方が多いから、仕方ないかもしれない。
「ユリ!渡すの忘れてた!」
ソウが、ユリを呼んだ。
ユリはすぐに来て、ソウと何か話すと、ソウが鞄から箱入りの物をだし、たくさん渡していた。
運ぶのを手伝おうかなと思い、そばに行くと、お店で使っている、電子秤そっくりに見える。
「なんと、魔鉱石」
「うっそー!」
ソウの返事にユリが驚いていた。
「電子秤にゃ!」
本当に電子秤だった。しかも魔鉱石で動くらしい。
「なーにー?」
「うわー!凄い!」
私とキボウとリラが驚いて騒いだため、全員が見に来たみたい。
それが秤と言われても、どうやって使うのかもわからないので、何かユリが持ち込む謎の物という扱いらしい。
カンパニュラは素直にユリに質問していたけど、他の人は、何を聞けば良いのかすらわからない物だったらしい。
ユリの解説が始まった。
「このボタンを押してから、物をのせます。すると、重さが数字で表示されます。器をのせてからボタンを押すと、器の重さを引いてから量ることができます」
ユリの説明のあと、一旦静まった。
あれ?みんな不思議じゃないのかな?と思って顔を見ると、驚きすぎて、固まっていたらしく、既に電子秤を知っているリラ以外は我に返り、やっと物凄いとわかったらしい。
「ええー!」「魔法!?」「どうなってるのー!」
「私たちにも使えるのですか!?」
みんなはしばらく騒いでいた。テーブルで器具を揃えていたメイドたちも、こちらを見て固まっていたので、まあ、そうなるよね。と私も思ったのだった。
ユリはソウと、秤の詳細について話していたけど、私はリラから小声で質問されていた。
「ユメちゃん、カナデ様とはサエキ様のことですよね? 私にも作ってくださらないか、ホシミ様に相談しても大丈夫でしょうか?」
「・・・ユリ、リラにもくれると思うにゃ」
「え、そうですか?」
貰えなかったら、リラが直談判に出て、ユリは笑って、ソウは困って、マーレイとイリスがまた謝るのかなぁと、一瞬考えたのだった。
「あ、リラちゃん、ベルフルールに1台持っていく?」
「はい!! ありがとうございます!!」
待ってましたとばかりにリラが返事をしていた。
ユリが少し笑っていたので、私と同じことを思ったのかもしれない。
「アルストロメリア会に11台、ベルフルールに1台、パープル侯爵に1台、こちらの厨房に1台、王宮に1台という割り振りで良いかしら」
ユリの割り振りに、パープル侯爵やハイドランジアが少し質問していたけど、皆が納得するように分けられたみたいで、ほっとした。




