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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇子供ユメ◇

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夢の感性

2階に戻ると朝ご飯が用意してあった。ソウが作ったらしい。


「べーこん!べーこん!」


キボウが騒いでいた。キボウは、ベーコン好きなんだなぁ。


さっきのユリの呪文はなんだろう? シィスルがいる前で聞いたら不味い呪文だと困るので、聞けなかった。それに、何が起こったかも良くわからなかった。


「へぇ。それは俺もやったことがないから、興味深いな」

「うふふ」


ソウの話が済んだみたいなので、ユリに尋ねた。


「ユリ、何か呪文を唱えていたのは、何にゃ?」

「あー、あれは、弱水流の魔法ね。本来、泳ぐときの補助に使うらしいわ」

「にゃ?」「は?」「なにー?」


全く聞いたこともない魔法だった。


「塩抜きの方法で、水流を作るために、エアポンプや小型モーターを回すというのがあったのよ。でも、モーター無いじゃない? だから、弱水流で代用できないかなぁって思って」


用途はわかったけど、ユリの使い方が、相変わらず凄いと思った。なんというか、独自だ。


「ほぼ海の無いこの国で、何に使うんだ? その魔法」


あれ、ソウは、違うことが気になったみたい。


「湖で泳げば良いんじゃないかしら? 湖、無いの?」

「結界を張る前は、海に出られたと思うにゃ」

「あ、そうだったな。海に出られた頃に使っていたのかもな。湖は、どっかの領地の王家の別荘のそばにあるよ」


でも、多分私も知らない魔法だと思う。私が泳ぐことはなかったと思うからね。


「みずうみ、なにー?」

「湖は、川の水が自然にたくさん溜まった場所だな」

「かみさまのもり、あるー」

「世界樹の森の中に、湖があるの?」

「あたりー」

「日帰りできるなら、見てみたいわねぇ」

「日帰りできるならな」


キボウの疑問にソウが答えていた。どうやら世界樹の森に、湖があるらしい。ユリは行きたいらしいけど、私は怖いから行きたくないかな。


先に食べ終わったユリは、食器を片付けようとしたら、ソウが片付けるから良いと断られていた。

ユリが厨房に行ってしまったので、急いで食べて追いかけた。


「イウスウリョニマン」


丁度、呪文を唱えていた。


「ユリ、何て言ってるのにゃ?」

「イ・ウ・ス・ウ・リョ・ニ・マ・ン。よ」


覚えにくそうな呪文だなぁ。


「弱水流なのにゃ?」

「正しくは『波の流水』で、大波の呪文も別にあるわね」

「私も使えるにゃ?」

「多分1000pくらいだから、唱えてみればわかるんじゃないかしら? ()()()()()をイメージして、最初は水を触りながら唱えると良いわよ」


やってみれば良いと言われたので、試してみることにした。

浅い鍋を持ってきて水を入れ、椅子の上においた。

すると、キボウがなにか持って来た。魚型の容器だ。


「ユメー、これー」

「どうしたのにゃ?」

「ユリ、いったー。わかりやすい、いったー」

「水流を可視化するのにゃ?」

「かしー?」

「見やすくするのにゃ」


成る程と思い、魚型の容器を水に入れ、頭の中で呪文を唱えた。


         (イウスウリョニマン)


すると、バシャッと水がはね、高速で回り始めた。


「うにゃー!!」


私はびしょ濡れになった。


「ユメちゃん、大丈夫? ほら、これで拭いて」


ユリに乾いたタオルを渡されたので、手と顔を拭いた。すぐに手を叩き、魔法を止めた。


「強すぎたにゃー」

「そのようね」


ユリがものすごく気の毒そうにこちらを見ていた。


「ちょっと温かいシャワーを浴びてくるにゃ」

「風邪引かないようにね。着る服、買ったものもあるわよ」

「そうなのにゃ?」


私の服は、布でできているわけではないので、乾かすのも汚れを取るのも簡単なのだけど、ユリが心配するので、温まってくることにした。

みんなで一緒に2階に戻ると、ユリが服を杖の鞄から出し、渡してくれた。


ワンピースみたいな服で、フードがついていた。


「可愛らしいのにゃ!」

「良かったわ。私のセンスだから、あんまりヒラヒラじゃないけどね」


なにか誤解されてる?


「にゃー。私もあまりヒラヒラは着ないのにゃ」

「そうなの? お城の絵とかヒラヒラな服ばかりだし、初代様教の人たちのセンスは派手でヒラヒラ服らしいから、てっきりユメちゃんの趣味がそういうのかと思っていたわ」


やっぱり誤解されていたみたい。


「今の私には断言できないけどにゃ、日記に書いてあったのは、服を選んだことがないって話だったにゃ」

「あはは。私と一緒ね」


そういえばユリも、衣裳類は任せっきりにしていた。


私は部屋に戻り、着ない服を置き、風呂に入った。

熱目のシャワーを浴びて、体が温まった。


風呂から出て、ブラウスを着てジーンズを穿き、フード付のワンピースみたいな服を着た。

鏡に写る私が、可愛らしい。フードを被ってみると、猫耳まで付いていた。

ユリに見てもらおうとリビングに戻ると、声が聞こえた。


「キボウ君、凄いわね!」

「キボー、すごーい、キボー、すごーい」


部屋に入り尋ねた。


「ユリ、どうしたのにゃ?」


「キボウ君の着替えが、手品みたいだったのよ。こー、服を上に投げるようにしたら、次の瞬間、着替えが終わっていたのよ」


ユリは、恐らくキボウがやったのであろうしぐさをして教えてくれた。


「キボウ、その服、似合ってるにゃ」

「とても似合ってるわ」

「キボー、にあうー、キボー、にあうー」


「ユメちゃんも、とても似合っているわ」

「ありがとにゃ!」


又一時間後にもユリは塩加減の確認をしたらしい。

リビングに居ると、ソウが大きな箱を持って帰ってきた。


「ソウ、それ何にゃ?」

「これ、燻製器とチップとウッド」

「いっぱいにゃ」


箱が4つ、袋が4袋、長細い塊が4つある。

箱には、燻製の写真があった。これが燻製の機械なのかな?


「無難に桜にしておいたよ」

「ありがとう」


どういう意味だろう?


「無難に桜って何にゃ?」

「燻製に使うチップの素材の種類だな。他には、クルミとかリンゴなんかもあるぞ」


種類があるという意味なの?


「桜が無難なのにゃ?」

「まあ、使いやすいかな。あとは、ユリの好みだな」

「昔、違うチップを使ったら、燻製臭すぎて食べるのが辛かったことがあってね。私の好みは桜らしいのよ」


ユリの好みが、一番の点か!


「臭すぎるのは、確かに食べにくいと思うにゃ」

「買ってくるベーコンやソーセージは、そんなに燻製臭くないからね」

「成る程にゃー」


何かもっと簡単に作れるのかと思っていたけど、手順が多いんだなぁと思った。


「ソウ、明日はよろしくね」

「任された!」


明日は、ソウが担当するらしい。

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