夢の山菜
キボウに誘われて、畑の水やりに来た。
芽が生えたもの、まだ芽が出ないもの、色々ある。
じょうろで水やりをしたあと、ふと川を見ると、何だか格好良い草が生えているのが見えた。
まるで、孔雀の羽のようにふさふさに見える葉が、両手を斜め上に突き上げたように堂々と生えている。
「ユメちゃん、キボウ君」
ユリが探しに来た。そろそろ出掛けるのかな?
今日は、ユリとソウが向こうへ出掛ける日だ。たしか、昼に集合だからユリは11時頃出るって昨日言っていた。そうしたら、まだ出掛けないかな?
ソウは、先に行っているらしい。役人の仕事を辞めても、転移してきた人たちの面倒は見るみたい。
「ユリ、川に格好良い草があるにゃ」
「格好良い草?」
格好良いでは、通じなかった。
「孔雀の羽みたいにゃ」
私が指を指すと、ユリは目を細めてじっと見つめたあと、名前を言った。
「んー、あれ?あれって、草蘇鉄?」
「あたりー!」
キボウが、肯定した。
川の向こうにある草を、この距離から種類を見分けるなんて凄いなぁ。なんて思っていたら、ユリは予想外のことを言った。
「ユメちゃん、あれ、山菜だわ」
なんだってー!
「食べられるのにゃ?」
「山菜名は、こごみとか、こごめとか呼ばれる、食べやすい美味しい山菜よ。あく抜きも必要ないし、茹でて胡麻和えとか、天ぷらが最高よ」
具体的に調理法まで言うってことは、ユリが料理してくれるってことだと思う。
「食べてみたいにゃ」
「たべるー、たべるー」
「ちょっと下りて採ってきましょう」
うきうきとユリは、道具を取りに行ってしまった。
すると、入れ替わるように、リラが来た。
「ユメちゃん、キボウ君、お早うございます」
「おはようにゃ」
「おはよー、おはよー」
「ユリ様は、もうお出掛けですか? ご飯、食べましたか?」
「まだいるにゃ。すぐ来るにゃ」
ユリが長靴とナイフと籠をもって、戻って来た。
「ユリ様、おはようございます。お出掛けは何時ごろですか?・・・えっと、その水用の履き物は?」
リラは、ユリの持っている長靴を不思議そうに聞いていた。
「リラちゃんおはよう。川原に山菜があるから取りに行こうと思って、」
「少々お待ちください。私も履き物を取ってきます!」
ユリが言い終わらないうちに、リラは、走ってベルフルールに戻っていった。
少し唖然としたユリに、説明することにした。
「私のご飯を心配して、ユリが何時に出掛けるか聞きに来たのにゃ」
「あら、本当に偶然なのね」
「呼んではいないのにゃ」
キボウのように、リラにも、ユリセンサーがついているのかなぁ?
私が変なことを考えていると、リラが来た理由が判明した。
「キボー、よんだー!」
「えー」「呼んだのにゃ?」
なんと、キボウがリラを呼んだらしい。
「キボウ、何でリラを呼んだのにゃ?」
「リラ、いったー。ユリでかける、キボーよぶ、おねがいいったー」
「リラに頼まれたのにゃ。キボウは偉いのにゃ」
「キボー、えらい!キボー、えらい!」
リラは、シィスルとマリーゴールドも連れて戻ってきた。
キボウは二人を見ると、ニコニコして近寄り、宣言した。
「キボー、まってるー。ユリ、リラ、くさそてつ、とるー。ユメ、いっしょいくー」
「私も見に行って良いのにゃ?」
「いーよー」
キボウと一緒に待っているようかなと思っていたら、私も見に行って良いと言われた。
キボウが気を使ってくれたみたい。格好良い草を、近くで見てみたかったので、嬉しい。
「お店の開始にかかったら迷惑よね。急いで採りにいきましょう」
「大丈夫ですが、楽しそうなので急いでいきましょう!」
「私も見に行くのにゃ!」
ユリとリラと違って、私は刃物も籠も持っていないけれど、ついていった。
橋を渡り、順番に梯子を下りた。
「近くで見ても、格好良いのにゃ」
私は、葉が開いている格好良い草を、見ていた。
「え!これ、食べられるんですか!?」
「食べられるのは、これの若芽ね。全ては刈り取らないでね。育ってしまったものは、固くて無理だと思うわ」
驚いたリラに、ユリが日陰にある草を指し、説明していた。
私は日向にある草を見て回っていた。
食べられるなら、触っても大丈夫だろうと思い、触ってみると、ふさふさして、触り心地も良かった。
どれが一番格好良いかなと見比べていると、収穫し終わったらしいユリから声をかけられた。
「ユメちゃん、それ持って帰る?植木鉢になら植えても良いわよ」
「畑はダメなのにゃ?」
「地下茎で増えるから、草蘇鉄だらけになってしまうわ」
畑がこれでいっぱいになったら、素敵だと思うけれど、他の物が植えられなくなるのは困るかなと、諦めた。
帰り道でユリが「あんまり日向過ぎると葉が焼けちゃうから、半日陰の方がいつまでも葉が綺麗よ」と言っていた。
そうか、尚更、植木鉢の方が良いんだなと分かった。
「後で、植木鉢用に掘ってくるにゃ!」
「ユメちゃん、私も手伝います!」
リラも協力してくれるらしい。
店の前に戻ると、籠を覗き込んだキボウが、リラの籠から、数本捨てていた。
「ちがうー!」
「ふぇ、違うの入ってました!?」
「あら、私も見ていなくてごめんなさいね」
シィスルとマリーゴールドは、明らかに戸惑った表情で、悩んでいるように見えた。
「こ、これ、食べられるんですか?」
確かに、美味しそうには見えないけど、ユリが美味しいと言っていたから、美味しいんだと思う。
「軽く茹でて、マヨネーズとかでも美味しいわよ」
大概の野菜は、マヨネーズをつけたら美味しいと思うけど、そんなに癖があるのかな?
お店の厨房まで話ながら歩き、ユリは鍋に湯を沸かしたあと、皆に水の入ったボールを配った。
「まずは、洗います。この丸まったところに、ごみが入っている場合があるので、優しく洗ってください」
私とキボウにも、ユリは水の入ったボールを渡してくれたので、参加して洗うことにした。
見た目より、細かいゴミがついていたらしく、ボールの水の底に、砂のようなゴミが沈んでいた。
「採ってから時間が経ったものは、切り口が黒ずむので、その場合は、少し切り落としてください。今日はしなくて良いです」
採りたて新鮮だから、切らなくて良いらしい。
ユリは全員から受け取り、湯の中に洗った草を入れた。
「湯がく時間は、せいぜい1~2分です。太くて固そうな場合でも、3分以上茹でると茹ですぎかもしれません」
茹でたら、丸まっているのが伸びたりするのかな?
そんなことを考えていたら、既にザルで掬い、冷水に移していた。
「冷水に入れて、冷ますと同時に、わずかなアクを抜きます。水分を良く切って、出来上がりです」
これで出来上がりらしい。私でも一人で作れそう。
「本当に手間要らずなんですね」
「そうね。とりあえず、マヨネーズでもつけて食べてみると良いわ」
リラが冷蔵庫からマヨネーズをだしてきて、全員に小皿で配ってくれた。
「美味しいにゃ!」
「おいしー!おいしー!」
予想よりも遥かに美味しい!
苦味も臭みもなく、少しぬるっとした滑りがあるけど、食べやすくて美味しい!
「うわー。食べやすくて美味しい!」
リラは大喜びだった。
シィスルとマリーゴールドも、ビクビクしながらも食べてみるらしい。
「あれ?食べやすい。美味しい!」
「アクもなく、美味しゅうございます!」
二人は食べ出すと、ニコニコしながらお代わりしていた。
「ゴマ和えが美味しいわよ。天ぷらは、洗ったあと、茹でずに少し小麦粉をつけてから、衣をつけて揚げてみてね」
「ごまドレッシングでも良いですか?」
「あー、それなら店でも出せるかもしれないわね」
見た目の驚きで、店でも受けるかもしれない。
「私はそろそろ出掛けるから、あとお願いね」
「あー、私たちも、店に戻ります!」
「ごちそうさまでございます」
シィスルとマリーゴールドは仕事に戻るらしく、ベルフルールに帰っていった。
「戸締まりなど、しておきます!」
「よろしくお願いするわね」
リラが片付けを引き受けたので、ユリは2階に上がっていった。




