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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇子供ユメ◇

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332/575

夢の山菜

キボウに誘われて、畑の水やりに来た。

芽が生えたもの、まだ芽が出ないもの、色々ある。


じょうろで水やりをしたあと、ふと川を見ると、何だか格好良い草が生えているのが見えた。

まるで、孔雀の羽のようにふさふさに見える葉が、両手を斜め上に突き上げたように堂々と生えている。


「ユメちゃん、キボウ君」


ユリが探しに来た。そろそろ出掛けるのかな?

今日は、ユリとソウが向こうへ出掛ける日だ。たしか、昼に集合だからユリは11時頃出るって昨日言っていた。そうしたら、まだ出掛けないかな?

ソウは、先に行っているらしい。役人の仕事を辞めても、転移してきた人たちの面倒は見るみたい。


「ユリ、川に格好良い草があるにゃ」

「格好良い草?」


格好良いでは、通じなかった。


孔雀(くじゃく)の羽みたいにゃ」


私が指を指すと、ユリは目を細めてじっと見つめたあと、名前を言った。


「んー、あれ?あれって、草蘇鉄(くさそてつ)?」

「あたりー!」


キボウが、肯定した。

川の向こうにある草を、この距離から種類を見分けるなんて凄いなぁ。なんて思っていたら、ユリは予想外のことを言った。


「ユメちゃん、あれ、山菜だわ」


なんだってー!


「食べられるのにゃ?」

「山菜名は、こごみとか、こごめとか呼ばれる、食べやすい美味しい山菜よ。あく抜きも必要ないし、茹でて胡麻和えとか、天ぷらが最高よ」


具体的に調理法まで言うってことは、ユリが料理してくれるってことだと思う。


「食べてみたいにゃ」

「たべるー、たべるー」

「ちょっと下りて採ってきましょう」


うきうきとユリは、道具を取りに行ってしまった。

すると、入れ替わるように、リラが来た。


「ユメちゃん、キボウ君、お早うございます」

「おはようにゃ」

「おはよー、おはよー」

「ユリ様は、もうお出掛けですか? ご飯、食べましたか?」

「まだいるにゃ。すぐ来るにゃ」


ユリが長靴とナイフと籠をもって、戻って来た。


「ユリ様、おはようございます。お出掛けは何時ごろですか?・・・えっと、その水用の履き物は?」


リラは、ユリの持っている長靴を不思議そうに聞いていた。


「リラちゃんおはよう。川原に山菜があるから取りに行こうと思って、」

「少々お待ちください。私も履き物を取ってきます!」


ユリが言い終わらないうちに、リラは、走ってベルフルールに戻っていった。

少し唖然としたユリに、説明することにした。


「私のご飯を心配して、ユリが何時に出掛けるか聞きに来たのにゃ」

「あら、本当に偶然なのね」

「呼んではいないのにゃ」


キボウのように、リラにも、ユリセンサーがついているのかなぁ?

私が変なことを考えていると、リラが来た理由が判明した。


「キボー、よんだー!」

「えー」「呼んだのにゃ?」


なんと、キボウがリラを呼んだらしい。


「キボウ、何でリラを呼んだのにゃ?」

「リラ、いったー。ユリでかける、キボーよぶ、おねがいいったー」

「リラに頼まれたのにゃ。キボウは偉いのにゃ」

「キボー、えらい!キボー、えらい!」


リラは、シィスルとマリーゴールドも連れて戻ってきた。

キボウは二人を見ると、ニコニコして近寄り、宣言した。


「キボー、まってるー。ユリ、リラ、くさそてつ、とるー。ユメ、いっしょいくー」

「私も見に行って良いのにゃ?」

「いーよー」


キボウと一緒に待っているようかなと思っていたら、私も見に行って良いと言われた。

キボウが気を使ってくれたみたい。格好良い草を、近くで見てみたかったので、嬉しい。


「お店の開始にかかったら迷惑よね。急いで採りにいきましょう」

「大丈夫ですが、楽しそうなので急いでいきましょう!」

「私も見に行くのにゃ!」


ユリとリラと違って、私は刃物も籠も持っていないけれど、ついていった。


橋を渡り、順番に梯子(はしご)を下りた。


「近くで見ても、格好良いのにゃ」


私は、葉が開いている格好良い草を、見ていた。


「え!これ、食べられるんですか!?」

「食べられるのは、これの若芽ね。全ては刈り取らないでね。育ってしまったものは、固くて無理だと思うわ」


驚いたリラに、ユリが日陰にある草を指し、説明していた。

私は日向にある草を見て回っていた。

食べられるなら、触っても大丈夫だろうと思い、触ってみると、ふさふさして、触り心地も良かった。

どれが一番格好良いかなと見比べていると、収穫し終わったらしいユリから声をかけられた。


「ユメちゃん、それ持って帰る?植木鉢になら植えても良いわよ」

「畑はダメなのにゃ?」

「地下茎で増えるから、草蘇鉄だらけになってしまうわ」


畑がこれでいっぱいになったら、素敵だと思うけれど、他の物が植えられなくなるのは困るかなと、諦めた。


帰り道でユリが「あんまり日向(ひなた)過ぎると葉が焼けちゃうから、半日陰の方がいつまでも葉が綺麗よ」と言っていた。

そうか、尚更、植木鉢の方が良いんだなと分かった。


「後で、植木鉢用に掘ってくるにゃ!」

「ユメちゃん、私も手伝います!」


リラも協力してくれるらしい。


店の前に戻ると、籠を覗き込んだキボウが、リラの籠から、数本捨てていた。


「ちがうー!」

「ふぇ、違うの入ってました!?」

「あら、私も見ていなくてごめんなさいね」


シィスルとマリーゴールドは、明らかに戸惑った表情で、悩んでいるように見えた。


「こ、これ、食べられるんですか?」


確かに、美味しそうには見えないけど、ユリが美味しいと言っていたから、美味しいんだと思う。


「軽く茹でて、マヨネーズとかでも美味しいわよ」


大概の野菜は、マヨネーズをつけたら美味しいと思うけど、そんなに癖があるのかな?

お店の厨房まで話ながら歩き、ユリは鍋に湯を沸かしたあと、皆に水の入ったボールを配った。


「まずは、洗います。この丸まったところに、ごみが入っている場合があるので、優しく洗ってください」


私とキボウにも、ユリは水の入ったボールを渡してくれたので、参加して洗うことにした。

見た目より、細かいゴミがついていたらしく、ボールの水の底に、砂のようなゴミが沈んでいた。


「採ってから時間が経ったものは、切り口が黒ずむので、その場合は、少し切り落としてください。今日はしなくて良いです」


採りたて新鮮だから、切らなくて良いらしい。

ユリは全員から受け取り、湯の中に洗った草を入れた。


「湯がく時間は、せいぜい1~2分です。太くて固そうな場合でも、3分以上茹でると茹ですぎかもしれません」


茹でたら、丸まっているのが伸びたりするのかな?

そんなことを考えていたら、既にザルで掬い、冷水に移していた。


「冷水に入れて、冷ますと同時に、わずかなアクを抜きます。水分を良く切って、出来上がりです」


これで出来上がりらしい。私でも一人で作れそう。


「本当に手間要らずなんですね」

「そうね。とりあえず、マヨネーズでもつけて食べてみると良いわ」


リラが冷蔵庫からマヨネーズをだしてきて、全員に小皿で配ってくれた。


「美味しいにゃ!」

「おいしー!おいしー!」


予想よりも遥かに美味しい!

苦味も臭みもなく、少しぬるっとした滑りがあるけど、食べやすくて美味しい!


「うわー。食べやすくて美味しい!」


リラは大喜びだった。

シィスルとマリーゴールドも、ビクビクしながらも食べてみるらしい。


「あれ?食べやすい。美味しい!」

「アクもなく、美味しゅうございます!」


二人は食べ出すと、ニコニコしながらお代わりしていた。


「ゴマ和えが美味しいわよ。天ぷらは、洗ったあと、茹でずに少し小麦粉をつけてから、衣をつけて揚げてみてね」

「ごまドレッシングでも良いですか?」

「あー、それなら店でも出せるかもしれないわね」


見た目の驚きで、店でも受けるかもしれない。


「私はそろそろ出掛けるから、あとお願いね」

「あー、私たちも、店に戻ります!」

「ごちそうさまでございます」


シィスルとマリーゴールドは仕事に戻るらしく、ベルフルールに帰っていった。


「戸締まりなど、しておきます!」

「よろしくお願いするわね」


リラが片付けを引き受けたので、ユリは2階に上がっていった。

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