表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇子供ユメ◇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

329/575

夢の昼食

ユリもどうせ王宮に来ると思うけど、ユリが来る前に話そうと思い、ユリの誘いを断った。

キボウはいつも通り世界樹の森に行くらしい。ユリからお弁当を渡されていた。あれは、私の鞄にも入っている。


王宮のソウの部屋に転移した。

バンドベルを鳴らすと、前回と同じように、カンパニュラとサンダーソニアが来た。


「ユメ様! あれ?お一人ですか?」

「また、ユリを待ってたのにゃ?」

「はい・・・」

「ユリは、今日来ると思うにゃ。先に、ローズマリーとラベンダーの所に行くと言っていたにゃ。ローズマリーにでも、聞いたら良いと思うにゃ」

「ありがとうございます!」


早速二人はローズマリーに、ユリがパープル邸を出たら手紙転移装置で知らせるように送ったらしい。


二人のお付きの女性が、「送って参りましたところ、すぐお返事がございました」と、私が部屋にいるうちに、連絡がついたらしく、喜んでいた。


「ハイドランジアと約束してるにゃ」

「ご案内いたします」


この部屋はソウの部屋で、転移専用の部屋なので、私が移動した。ハイドランジアとしては、自分が呼びつける形になるのが嫌だったらしく、さんざん私専用の部屋をすすめられたが、私物を王宮に置いておくつもりもないので、断ってある。パープル邸でも、ローズマリーに同じように断った。


「お待ちしておりました」


(うやうや)しく迎えられ、私が先に着席するまで、ハイドランジアは、立っていた。


「ハイドランジア、私の記憶が無くなった時に困るのにゃ。ユメとして扱って欲しいにゃ」

「かしこまりました」


お茶を出され、お菓子を出されたあと、全ての従者が退室した。


「護衛まで退出させて大丈夫なのにゃ?」

「ホシミ様によりますと、この部屋の防御は完璧だそうでございます」

「ソウがそう言ったなら、大丈夫にゃ」


普段室内にいる護衛も、部屋の外に立っているらしい。


「それでユメ様、お小さい頃があったと、ローズマリーから話を聞いております」

「たぶん記憶の限界なのにゃ。日記を見ながら話すにゃ」


私は、ルレーブの記憶があった頃に書いて置いた日記を見ながら説明をした。


黒猫としてこの世界に居たことを気づいたときから、馬車に轢かれてソウに助けられたこと。黒猫としてユリに名付けられ、家族の一員になったこと。人前で初めて人型になり、ユリは驚かずに喜んだこと。当時、ルレーブの記憶はほぼなく、猫として生きるつもりだったこと。


知らないはずの知識をふと思い出して、魔法が使えるようになったこと。パープル邸の庭に有る石を触って、歯抜けの記憶を思い出したこと。その記憶を探るために、各所の石を触りに行ったら、大きくなってしまったこと。それでもユリとソウは、なにも変わらずに受け入れてくれたこと。


「ここからはまだしっかり覚えてるにゃ。パープル邸で、ユリの作った黒蜜の匂いに誘われたのにゃ。黒猫で行ったのに、つい人型に変身してしまったにゃ。見たローズマリーを驚かせてしまったのにゃ」

「あー。あのお話は、そんな事情だったのでございますね」


ハイドランジアは、ローズマリーから聞いていたらしく、謎が解けたと言って笑っていた。


「今、記憶に有るのは、大きくなる少し前にゃ。石を回っている最中にゃ。これもそのうち忘れてしまうと思うにゃ」

「貴重なお話をありがとうございます」


「ハイドランジア、この日記、預かってにゃ」

「よろしいのですか?」

「私がいなくなってから、ユリに渡してにゃ」

「かしこまりました。必ずや、お渡しいたします。王族しか開けられない書棚に保存し、お守りいたします」


頼んだ日記は、ユメとして大きくなるまでを記した分だった。

忘れてしまった記憶の分だ。


「また、忘れた頃に、頼みに来ると思うにゃ」


なんとも痛ましそうな表情で、ハイドランジアは頷き、返事をした。


「かしこまりました。お待ちしております」


その暗い雰囲気を打ち破るかのように、キボウが転移してきた。


「ユメー! ごはんたべる?」

「キボウは、結界関係ないのにゃ?」

「キボー、けっかい、ソウかったー。キボーまけたー」

「にゃー、そんなこともあったにゃ」


「あの、ホシミ様の結界は、城の結界よりも強固なのでございますか?」

「どのくらいかは判らないにゃ。ソウが馬車に張った結界内からキボウが転移したときに、失敗したらしいにゃ」


ハイドランジアが、驚いたようにこちらを見た。


「私としてはにゃ、そういう常識を含めて、私の記憶を残すべきと考えたのにゃ。ルレーブの記憶がある頃の日記は、ユリ以外に公開できないかもしれないにゃ」

「そうしますと、先ほどのお預かりしました日記は、(わたくし)も読んでも良いのでしょうか?」

「重要なことは書いてないにゃ。構わないにゃ。怠惰な猫だった日記にゃ」


ハイドランジアは、ニコニコとして、私の日記を私物の置いてあるエリアにしまいに行った。


「本当に、猫として生きるつもりだった日記にゃ。期待しない方が良いにゃ」

「はい、あ、いいえ。大事にしまっておきます」


「ハイドランジアは、ごはんどうするにゃ?」

「どうするとおっしゃいますと?」

「ユリは、みんなにお弁当を持たせているにゃ。ここで食べてよければ、ここで食べるにゃ」

「キボー、たべるー!」

「私とキボウと同じものを食べるなら、持ってるにゃ」

「ありがとうございます。是非お願い致します!」


私は、朝、キボウが受け取っていたものと同じ、ホットドックを出した。


「このまま噛りつくのにゃ。飲み物だけ用意すると良いにゃ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ