夢の名付
ユリの魔力で、みんなで市場に転移してきた。
見た人が驚かないように、馬小屋のそばの小屋の中だ。
先に出たはずのユリは、道を見ながら悩んでいるみたいだった。もしかして、場所がわからないのかな?
「ユリ、花屋で良いんだよね?」
「そうよ」
ソウが察して連れていくみたい。
この辺に花屋があるの?てっきり、花畑に行くんだと思っていた。
「花屋なんてあったのにゃ?」
「入り口は、たくさんのクチナシとバラのアーチがあって、背の高い植物で囲まれているから、中まで入らないと花屋さんだってわからないわ」
ユリが説明してくれたけど、見た記憶がない。私も行ったことがない場所らしい。
「そんなに遠くないよ」
唯一場所を把握しているソウが笑っていた。
少し歩くと、ユリが説明した場所についたらしい。遠くにバラのアーチが見える。でも、やっぱり知らない場所だった。
「ここは来たことがないにゃ」
「いっぱーい、いっぱーい」
キボウが上機嫌で、はしゃぎ回っている。やっぱり緑が多いのは嬉しいのかな?
ふと、良い香りがした。
「あれ?良い香りがするにゃ」
みんなもわからないらしく、キョロキョロした。すると沈丁花が見えた。
「沈丁花ね。前回は完全に葉っぱだったから、気がつかなかったわ」
「クチナシと、沈丁花か。なら、金木犀もありそうだな」
「んー。あれかな?」
有って当然と言わんばかりのソウの言葉と、花がないのに探し当てたユリ。どういうこと?
「花がなくてもわかるのにゃ?」
「花は、9月から10月くらいに咲くけどね。前に住んでいた所にたくさん有ったから、間違っていないと思うわ」
花がなくてもわかるなんて、ユリは凄いなぁ。私は金木犀のあの香りをかがなければ判らないや。
すると、向こうに見える金木犀について、ソウが驚くことを言い出した。持ち込んだのは自分だと。
しかも、昔も、クチナシと沈丁花があるのに、金木犀が無いのはと発言し、結果、持ち込むことになったと思い出したらしい。
ソウの話に感心しながら、先に行こうと声をかけた。
黄色い小さなバラのアーチを潜ると、鉢植えのチューリップが、たくさん並んでいた。
「チューリップにゃ!」
これ、鉢植えだから、買って帰ることができるのかもしれない!
私は色々有るチューリップを見て回った。
「まだ蕾のもあるわね」
「ユメ、欲しいのを選ぶと良いぞ」
「ありがとにゃ!」
私が花の色を見ていると、キボウが一緒に見てくれるらしく、そばに来た。
「ユメー、なにいろー?」
「何色でも好きにゃ! どれが良いかにゃ?」
「これー、これー、・・・これー、これー、これー」
キボウは、まだ咲いていない花をたくさん選んでくれた。
「にゃ!アルストロメリアもあるにゃ」
「おみせー!」
「お店の名前だって知ってるのにゃ?」
「ユリ、いったー、アルストロメリア、ゆめゆりそう、おなじいったー」
「キボウはなんでも知ってるのにゃ。何個買って良いか聞きに行くにゃ!」
「わかったー」
話し込んでいるユリとソウに聞きに行ってみた。
「何個買って良いにゃ?」
「面倒見る限り、何個でも、何買っても良いわよ」
チューリップ以外も大丈夫みたい。
「届けて貰うから、店に言っといてくれ」
「わかったにゃー」
とりあえず、大量のチューリップとアルストロメリアを店の人に頼み、ユリとソウが良いと言ったから、他にも見ようと思った。
「キボウ、他にも見るにゃ!」
「みるー、みるー」
少し行くと、温室のような場所に、青い花が見えた。
なんの花だろう?
「キボウ、あれ、なんの花にゃ?」
「んー。キボー、しらなーい」
「キボウが知らない植物があるのにゃ!?」
二人で話していると、お店の人が声をかけてきた。
「あの、もしかして、幼木様ですか?」
「キボーだよー」
「あってるにゃ。名前は『キボウ』希望という意味にゃ」
私が補足しておいた。
「キボウ様、あちらの花に、よろしければ、名前をいただけないでしょうか?」
「なまえー?」
キボウは思い付かないらしい。
「キボウ、私がつけたい名前があるにゃ」
「なーにー?」
「あの花は、青いアルストロメリアにゃ。是非『希望』とつけるのにゃ」
「キボーのなまえ?」
「これでみんな一緒にゃ!」
「いっしょ!いっしょー!」
キボウは物凄く嬉しそうにニコニコしていた。
「キボウ様のお名前をいただけるのですか?」
「キボー、キボー!」
突然変異の新種らしく、まだ名前がなかったそうだ。
あとで、お店に持ってきてくれるらしい。
「キボー、てつだうー!」
「何するにゃ?」
「げんきなーい、たりなーい」
「栄養が足りない植物の指導にゃ?」
「あたりー!」
私は店の人に、元気がない植物と、栄養になるものを持ってきて貰うように話した。
キボウは植物を見ると、何か語りかけたあと、置いてある各種栄養のどれが不足しているか説明し始めた。
「これー!すこしー。これー、これー、いっぱい。おみずー。おひさまー。せまいー。これー、すこしー」
栄養の元らしきものをキボウの指示通り、配合したり、メモを取ったりしているようだった。
「ユメちやん、キボウ君、何してるの?」
ユリとソウが戻ってきた。
「キボウが、弱ってる植物の説明してるにゃ」
「これー!これー!すこしー」
「ユメ、代わるか?」
ソウが、担当を代わろうかと気にかけてくれた。
「大丈夫にゃ。少し待っててにゃ」
並べられた植物の全てに指示を出し終わり、キボウはやりきった顔で頷いていた。
「キボウ様、ユメ様、本日は誠にありがとうございます」
「役立って良かったにゃ」
「キボー、やくだつー!」
お店の人に挨拶したあと、ユリとソウのそばに行き、帰ることになった。
「お待たせにゃ」
「有るものは、明日配達してくれるらしいぞ」
「良かったにゃ。楽しみにゃ」
「たのしみー、たのしみー」
あ、そうだ。ソウが「金木犀も」って言った理由は、沈丁花、クチナシ、金木犀を、三大香木って呼ぶんだって。




