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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇子供ユメ◇

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319/575

夢の名付

ユリの魔力で、みんなで市場に転移してきた。

見た人が驚かないように、馬小屋のそばの小屋の中だ。

先に出たはずのユリは、道を見ながら悩んでいるみたいだった。もしかして、場所がわからないのかな?


「ユリ、花屋で良いんだよね?」

「そうよ」


ソウが察して連れていくみたい。

この辺に花屋があるの?てっきり、花畑に行くんだと思っていた。


「花屋なんてあったのにゃ?」

「入り口は、たくさんのクチナシとバラのアーチがあって、背の高い植物で囲まれているから、中まで入らないと花屋さんだってわからないわ」


ユリが説明してくれたけど、見た記憶がない。私も行ったことがない場所らしい。


「そんなに遠くないよ」


唯一場所を把握しているソウが笑っていた。


少し歩くと、ユリが説明した場所についたらしい。遠くにバラのアーチが見える。でも、やっぱり知らない場所だった。


「ここは来たことがないにゃ」

「いっぱーい、いっぱーい」


キボウが上機嫌で、はしゃぎ回っている。やっぱり緑が多いのは嬉しいのかな?

ふと、良い香りがした。


「あれ?良い香りがするにゃ」


みんなもわからないらしく、キョロキョロした。すると沈丁花(じんちょうげ)が見えた。


「沈丁花ね。前回は完全に葉っぱだったから、気がつかなかったわ」

「クチナシと、沈丁花か。なら、金木犀(きんもくせい)もありそうだな」

「んー。あれかな?」


有って当然と言わんばかりのソウの言葉と、花がないのに探し当てたユリ。どういうこと?


「花がなくてもわかるのにゃ?」

「花は、9月から10月くらいに咲くけどね。前に住んでいた所にたくさん有ったから、間違っていないと思うわ」


花がなくてもわかるなんて、ユリは凄いなぁ。私は金木犀のあの香りをかがなければ判らないや。


すると、向こうに見える金木犀について、ソウが驚くことを言い出した。持ち込んだのは自分だと。

しかも、昔も、クチナシと沈丁花があるのに、金木犀が無いのはと発言し、結果、持ち込むことになったと思い出したらしい。



ソウの話に感心しながら、先に行こうと声をかけた。

黄色い小さなバラのアーチを潜ると、鉢植えのチューリップが、たくさん並んでいた。


「チューリップにゃ!」


これ、鉢植えだから、買って帰ることができるのかもしれない!

私は色々有るチューリップを見て回った。


「まだ蕾のもあるわね」

「ユメ、欲しいのを選ぶと良いぞ」

「ありがとにゃ!」


私が花の色を見ていると、キボウが一緒に見てくれるらしく、そばに来た。


「ユメー、なにいろー?」

「何色でも好きにゃ! どれが良いかにゃ?」

「これー、これー、・・・これー、これー、これー」


キボウは、まだ咲いていない花をたくさん選んでくれた。


「にゃ!アルストロメリアもあるにゃ」

「おみせー!」

「お店の名前だって知ってるのにゃ?」

「ユリ、いったー、アルストロメリア、ゆめゆりそう、おなじいったー」

「キボウはなんでも知ってるのにゃ。何個買って良いか聞きに行くにゃ!」

「わかったー」


話し込んでいるユリとソウに聞きに行ってみた。


「何個買って良いにゃ?」

「面倒見る限り、何個でも、何買っても良いわよ」


チューリップ以外も大丈夫みたい。


「届けて貰うから、店に言っといてくれ」

「わかったにゃー」


とりあえず、大量のチューリップとアルストロメリアを店の人に頼み、ユリとソウが良いと言ったから、他にも見ようと思った。


「キボウ、他にも見るにゃ!」

「みるー、みるー」


少し行くと、温室のような場所に、青い花が見えた。

なんの花だろう?


「キボウ、あれ、なんの花にゃ?」

「んー。キボー、しらなーい」

「キボウが知らない植物があるのにゃ!?」


二人で話していると、お店の人が声をかけてきた。


「あの、もしかして、幼木様ですか?」

「キボーだよー」

「あってるにゃ。名前は『キボウ』希望という意味にゃ」


私が補足しておいた。


「キボウ様、あちらの花に、よろしければ、名前をいただけないでしょうか?」

「なまえー?」


キボウは思い付かないらしい。


「キボウ、私がつけたい名前があるにゃ」

「なーにー?」

「あの花は、青いアルストロメリアにゃ。是非『希望』とつけるのにゃ」

「キボーのなまえ?」

「これでみんな一緒にゃ!」

「いっしょ!いっしょー!」


キボウは物凄く嬉しそうにニコニコしていた。


「キボウ様のお名前をいただけるのですか?」

「キボー、キボー!」


突然変異の新種らしく、まだ名前がなかったそうだ。

あとで、お店に持ってきてくれるらしい。


「キボー、てつだうー!」

「何するにゃ?」

「げんきなーい、たりなーい」

「栄養が足りない植物の指導にゃ?」

「あたりー!」


私は店の人に、元気がない植物と、栄養になるものを持ってきて貰うように話した。


キボウは植物を見ると、何か語りかけたあと、置いてある各種栄養のどれが不足しているか説明し始めた。


「これー!すこしー。これー、これー、いっぱい。おみずー。おひさまー。せまいー。これー、すこしー」


栄養の元らしきものをキボウの指示通り、配合したり、メモを取ったりしているようだった。


「ユメちやん、キボウ君、何してるの?」


ユリとソウが戻ってきた。


「キボウが、弱ってる植物の説明してるにゃ」

「これー!これー!すこしー」

「ユメ、代わるか?」


ソウが、担当を代わろうかと気にかけてくれた。


「大丈夫にゃ。少し待っててにゃ」


並べられた植物の全てに指示を出し終わり、キボウはやりきった顔で頷いていた。


「キボウ様、ユメ様、本日は誠にありがとうございます」

「役立って良かったにゃ」

「キボー、やくだつー!」


お店の人に挨拶したあと、ユリとソウのそばに行き、帰ることになった。


「お待たせにゃ」

「有るものは、明日配達してくれるらしいぞ」

「良かったにゃ。楽しみにゃ」

「たのしみー、たのしみー」



あ、そうだ。ソウが「金木犀も」って言った理由は、沈丁花、クチナシ、金木犀を、三大香木って呼ぶんだって。

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