夢の茄子
ソウに起こされた。
「ユメ、大変だ、ユリが変なもの作ってる!」
「何にゃ? にゃー。たしか、今日はエイプリルフールにゃ」
起きたてのあまり回っていない頭で、頑張って思い出した。
「いや、そういうのじゃなくて、そうなんだけど、そうじゃないんだよ」
「何言ってるのかさっぱりわからないにゃ」
珍しく、ソウが支離滅裂なことを言っているので、落ち着いて良く話を聞いてみると、なんとユリが、茄子と胡瓜でジャムを作っているらしい。
それこそ、エイプリルフールの嘘なのでは?と思ったけど、ソウは、作るのを手伝わされたので、材料は疑い様がないそうだ。
「食べてみたのにゃ?」
「え、だって、茄子や胡瓜のジャムだぞ?」
ソウは、私の食べるという選択肢に驚いていた。
「ユリが作るなら、美味しいと思うにゃ」
「ユメ、お前偉いな!」
本気で感心したように、ソウはこちらをみた。
「ソウは、ユリを信じるべきにゃ」
「勿論、ユリのことは信じてるけど、茄子だぞ?」
「とりあえず、起きるにゃ」
起きてリビングに行くと、すでにキボウが、ヨーグルトらしきものを食べていた。
「おはようにゃ」
「ユメ、きたー」
キボウを待たせていたみたい。
「それが、ソウが言ってたジャムにゃ?」
「あら、なーんだ知っているのね。うふふ」
「私の分も出してにゃ」
私がリクエストすると、ソウはあからさまに驚いていた。
そしてすでに食べていたキボウのそばに行って、こそこそ尋ねていた。
「キボウ、美味しかったか?」
「おいしーよー、なにー?」
あれ、キボウは知らないの?
「キボウは知らずに食べてんの?」
「あたりー」
キボウは、知らないまま食べているらしい。
ユリがヨーグルトを出してくれた。早速食べてみると、茄子らしきジャムは、予想より何倍も美味しかった。
「知らなければ、リンゴみたいにゃ。こっちは、青臭さが残ってるにゃ。西瓜の皮みたいな味にゃ」
「んー、そうすると、こっちだけ作りましょうか? 材料は何か当ててくださいとクイズにしたいと思います」
お店で使うことにしたらしい。ユリは、茄子ジャムは作ったことがあったけど、キュウリジャムは初めて作ったらしく、調整に失敗したみたい。ユリも少し食べてみて、作るものを決めていた。
「緑の方は失敗したのにゃ?」
「家庭菜園とかで熟れすぎた大きめので作ると、もっと果肉が柔らかくて、メロンぽくなるらしいのよね」
「成る程にゃー」
「ま、リラちゃんには、どちらも食べてもらいましょう。うふふ」
リラは、無理にすすめなくても食べるだろうなぁと思った。
「ソウ、茄子の方は、美味しいから食べてみると良いにゃ」
「うーん。わかった。少し食べてみるよ」
ユリは笑いながら、ソウにもヨーグルトをだしていた。
「シナモンでも入れたら、林檎って信じるかも」
「皮も一緒に煮ると、色もつくのよ。よりリンゴに見えるように、皮は入れなかったけどね」
ユリは何度か作ったことがあるらしく、皮を入れた色つきのものもあると話していた。
「ユメー、なにー?」
「ジャムの材料にゃ?」
「あたりー」
「これは、茄子で作ったらしいにゃ」
「なーすー!?」
キボウが材料を知って驚いていた。
ソウは誰かに食べさせるらしく、ユリから茄子ジャムを分けてもらっていた。
ご飯の後ユリは、王宮に持ち込むお菓子をキボウに説明していた。
「ユメちゃん、アイスクリームがあるから魔道具のリュック使って良いかしら?」
「構わないにゃ」
預かったお菓子は、桜の花のラング・ド・シャとセットのアイスクリーム、先程食べた茄子ジャムのヨーグルトだった。各15セットほどあるらしい。
「ユメー、いっしょいくー?」
「わかったにゃ。世界樹の森の前で待ってるにゃ」
キボウの魔力で転移し、いつものように入り口の前で待っていた。
「あれ?幕がないにゃ!?」
ハッとして、慌てて下がった。
良く考えると、今日は1日だから、ぼやっとしていると、森に入ってしまう。
「ユメー、なにー?」
私が慌てているのを、戻ってきたキボウに見られてしまった。
「今日は、私も入れる日なのにゃ。間違って入らないように、下がってたのにゃ」
「はいるー?」
「入らないにゃ」
「わかったー」
キボウは少し寂しそうに答えていた。
何か悪いことしちゃたかなぁ?
そのまま城に転移し、勝手にカンパニュラの部屋まで行った。
特に誰も咎めないし、怒られないけれど、本当は勉強中の時間かもしれない。一度誰かに確認をしてみようかなと思っている。
メイドがお茶を用意してくれたので、ヨーグルトと、桜のアイスクリームののった、桜型のラング・ド・シャを取り出した。
「アイスが溶けないうちに食べた方が良いにゃ」
ふと数えると、10組しかなかった。ユリは15組持たせていたはず。
「キボウ、これで全部にゃ?」
「ぜんぶー、ぜんぶー」
「あと5組、どうしたにゃ?」
「かみさまー、メイプルー、アネモネー、プラタナスー、たねー!」
「置いてきたのにゃ?」
「あたりー!」
それを聞いて、メイプルたちが少し気の毒になった。キボウは、何味のアイスと、何のジャムだと説明してきたのだろう?
「キボウ、ジャムの材料は説明してきたのにゃ?」
「なーすー!」
「メイプルに伝わったのにゃ?」
「メイプルー、えいぷるるふーるー!」
「メイプルは、エイプリルフールですか。って言ったのにゃ?」
「あたりー!」
あー、やはり伝わっていないらしい。エイプリルフールの嘘だと思われているみたい。
「ユメさま、こちらはなんでしょうか?」
「ピンクのお菓子は、桜の花が入っているにゃ」
「お花のおかしなのですか!すてきですね」
変わった香りと、不思議な味だとみんなが言っていた。
桜を食べる民族は、少ないのだと思う。
「ユメさま、こちらはなんでしょうか?」
「ヨーグルトに、謎のジャムが入っているにゃ」
「なぞのジャムですか?」
「ユリが、材料をクイズにしてるにゃ。明日まで考えてにゃ」
即、食べるのを止め、食べていない者を呼びつけ、味を確認させていた。誰も当たらない。
ところが、シッスルだけは、先程のキボウの会話で、答えをわかってしまったらしく、他言無用にいたします。と言っていた。
あまり長居して勉強の邪魔をしないようにと、早々に戻ることにした。




