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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇少女ユメ◇

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夢の心配

目が覚めてリビングに行くと、馬車を停める音が聞こえた。

まだお店の時間じゃないはずなのに、誰だろう?

窓から覗くと見たことのある男の人だった。

でも名前は知らない。

ユリに知らせた方が良いかな。


「ユリ、外に誰かいるにゃ」

「私が見てきましょうか?」

「お願いします」


マーレイさんが見に行くらしい。


「ユリ、手伝うにゃ!」


マーレイさんは外を見に行ったので、代わりにアイスクリームの続きを手伝った。


少しして、青い封筒をもってマーレイさんは戻ってきた。

ユリは手紙を読んで驚いているみたいだった。何が書いてあるんだろう?

ユリは手紙を持って来た人に直接聞きに行った。


外の人と話したユリは戻ってくると、リラに特別注文を伝えていた。


「リラちゃん、ネモフィラクッキー300個、特別注文が入りました。ランチ終わったら私も手伝うのでよろしくお願いします」


これはリラを手伝った方が良さそうだと思った。マーレイさんも、ユリから リラを手伝うように頼まれていた。

リラを少し手伝って、青いクッキー生地ができあがると、ユリからランチの手伝いに呼ばれた。


注文をいくつか聞くとユリは作る方に専念するようで、残りの注文を聞いて回った。

ランチを運ぶのは手伝ってもらったので、追加や持ち帰り分だけ持ってくれば良いらしい。


確か、今日のアイスは余分がないってユリは言っていた。

なのに持ち帰りたいと言う人が2人もいた。

ユリに聞いてくると言って、聞きに行った。


ユリに聞くと、やっぱり持ち帰り分がないと言っていた。でも作っておくからおやつの時間に来て欲しいと言っていた。


お店に戻り、説明した。


「ユリが後で作るからおやつの時間ならできてるって言ってるにゃ」

「ありがとう!又来ますので薔薇(バラ)2つお願いします!」

「私は友人と来ます、バラアイスクリーム4つお願いします」

「わかったにゃ。ユリに言っておくにゃ。無くならないように早めに来るのにゃ」


すぐにユリに報告に行った。


「おやつ時間に取りに来るからバラのアイス6個にゃ」

「わかりました。ユメちゃんありがとう」


みんな忙しくて、てんてこまいで、ユリが大変そうだった。

ソウはまだ来ないのかな?

注文のあった冷茶を取りに行くと、洗い物が終わらなくてユリが困っているみたいだった。

まだ12:30にもなっていないのか。半分も過ぎていない。

そうだ、ソウを呼んでおこう。

少しだけ階段にかくれた。


『お店忙しすぎるにゃー!』


これでよし!以心伝心を送っておいた。


少しするとソウが帰ってきた。

これでユリも少しは楽になると思う。


「ユリ、大丈夫?忙しいんだって?」


ソウが、バラアイスを作るらしい。

ユリは忙しそうなのに、アイスの注文を聞いてしまったからソウが作ってくれて良かった。

ユリとリラはクッキーが大変そうだ。


できた料理を運ぶときに厨房に取りに行くと、どうにもならなかった洗い物をマーレイさんが洗っていた。

ソウはバラアイスを作った後、洗われた皿を拭きながら釜を睨んでいた。

睨んでもクッキーは焼けないと思う。


お店の客が全員帰ると、ドッと疲れが出た。


「みんなありがとう!イタリアンハンバーグで良いかな?」

「はーい!!」

「ハンバーグ食べるにゃ!」

「ありがとうございます」

「チーズ多めで!」


ユリがハンバーグを作って、ご飯と野菜をリラが用意していた。

わたしが冷茶とカトラリーを用意していると、ソウに聞かれた。


「ユメ、何があって忙しいんだ?」

「ユリが、特別注文って言ってたにゃ」

「特別注文?」

「リラのクッキーが、300って言ってたにゃ」

「誰から?」

「分からないにゃ」

「そうか。ユメ、連絡ありがとな!」

「ユリのためにゃ!」


ソウはユリから直接聞くらしい。


「ユリ、何か特注が有ったの?」

「そうなのよ。作るのはなんとかなるけど、納品は無理。場所も知らないしね。で、ソウが持っていってくれるなら受けますと返事したけど、一応今作ってはいるわ」

「どこに納品?」

「ブルー公爵家。言い値で買うって。クッキー代は18万☆請求します。送料はソウが好きなだけ請求してください」

「3倍にゃ。ユリ、凄いのにゃ」


ユリは怒ってるんだと思う。


「たぶん、もっと払うって言い出すと思うのよ。金額じゃないのよ。こっちの都合を確認してから注文して欲しいのよ。パープル侯爵家の執事さんが青い顔して手紙持ってきたんだから」


ユリが少し怒ったように説明すると、ソウが怖い顔をして低い声で言った。


「わかった。俺が納品行くよ」


「・・・魔王降臨にゃ」


思わず(つぶや)いてしまった。


「何か言ったか?」

「何も言ってないにゃー!」


やぶへびだった!



イタリアンハンバーグはおいしかった。

辛くないのが素晴らしい。

ごはんが終わると、全員しっかり休むように言われた。

疲れたのでしっかり休もう。

2階の自分の部屋に行って少し横になった。


寝ていないのでたぶん30分くらい。

階段を降りようとすると、マーレイさんとリラとソウの声が聞こえた。


「ホシミ様!代わります!」「私が!」

「いや、いい」


「ユリに、休み時間は守るように言われているだろ?」

「え?」「え?」


ソウは自分は仕事をしながら言っているようだった。


「今はユリ居ないから俺は良いの」

「戻ったにゃ。何面白いこと言ってるにゃ」


思わず突っ込んだ。


そろそろ時間だと思って来たけど、ユリが居ない。


「ユリ、居ないのにゃ?」

「15:00過ぎても来なかったら、ユメ、様子を見てきてくれ」

「わかったにゃ。ソウは行かないのにゃ?」

「着替えてたら困るだろ!」


あー。確かに困るかな。


お客さん来てるから、とりあえず注文を聞いて全部だしてからユリを見に行こう。

リラが心配そうにこっちを見ていた。


コンコンコン。

ノックをしたけど返事がなくて、でもドアには鍵がかかっていなかったので開けてみた。

ユリは布団の上にいるけどなんか様子が変だ!

そばまで行くと、ユリは苦しそうだった。


「ユリ、大丈夫にゃ?」


揺すって起こそうとユリに触れると、ユリが熱かった。

熱がある!


急いで階段を降り、ソウに報告した。


「ソウ、大変にゃ!ユリ、熱があるにゃ!」

「ユメ、店頼む!」


ソウはあわてて階段をかけ上がっていった。


「ユメちゃん、ユリ様はお熱があったのですか?」

「さわったら熱かったにゃ」

「ユリ様、働きすぎですよね」

「そうだにゃ。働きすぎにゃ」


少しして、ソウが落ち着いて降りてきた。


「ユリ大丈夫なのにゃ?」

「もう大丈夫だ。ただ、疲れているようだからこのまま寝かせておこうと思う」

「お店どうするにゃ?」

「俺たちだけでどうにかしよう」

「はい!」「かしこまりました」

「協力するにゃ!!」


ユリのためにも頑張ろう!

ユリが起きてきたときに困らないように。


「それで、作るアイスクリームわかる?」

「明日分は、イチゴとチョコ胡桃と伺っています。イチゴは既に2回作りました」

「イチゴはともかく、チョコはソースが作れないな」

「はい!習いました!作ってみます!」


リラがアイスのソースを作るらしい。

クッキーを中断してアイスを作るみたいだ。

ソウはイチゴアイスをつくり、店はわたし、洗い物や片付けをマーレイさんがしていた。


午前中にバラアイスを頼んだ人が1人で取りに来た。


「バラアイスクリーム取りに来ました」

「持ってくるからまってるのにゃ」


アイスを取ってきて袋に入れて渡すと、


「ユリ・ハナノ様に、ありがとうとお伝えください」

「わかったにゃ」


次に来た人は2人だった。


「お願いしてあったバラアイスクリームできていますか?」

「今、4個持ってくるにゃ」


アイスを取ってきて袋に入れて渡すと、


「ご店主は、忙しいですか?」

「聞いてくるにゃ」


どうしたら良いかわからなかったので、ソウに聞きに行った。


「ソウ、ユリに用があるお客はどうしたら良いにゃ?」

「俺が対応するよ。ユメありがとな!」


ソウはお店に行ってお客に説明してくれるらしい。


「今、ユリ、対応できないんですが、どのようなご用件でしょうか?」

「ご店主は忙しいのですか? お礼をしたかっただけなのですが、お伝えいただければ幸いです」

「伝えておきます」


その後も何度かソウに対応してもらった。

お店は、売るだけじゃダメなんだな・・・。


何回目かのユリを呼ぶお客の対応をソウに頼んだ。すると、ソウがやんわり断ってもユリを呼んで欲しいと言い続けるお客にソウが怒った!


「ユリは過労で倒れて今寝てるんだ!」


お店がザワザワして、ふと振り返るとユリがいた。

うるさいのが聞こえたのかな?ユリの顔色が悪い。


「お騒がせして申し訳ありません」


ユリが頭を下げると、方々から声が上がった。


「ご店主、無理はいかん!」

「少し休んだ方が良い!」

「しっかり休んでくれ」「そうだそうだ」

「休んだ方が良い」「無理するでない!」


「ありがとうございます。皆さんに感謝致します」


ユリはそう言って厨房に行った。

ソウと揉めていた人も帰っていった。



厨房に来たユリは、みんなに謝っていた。


「みんなごめんなさい!」

「ユリ、無理はダメにゃ!」

「ユリ様、無理しないでください」

「とりあえず、お掛けください」


マーレイさんは椅子を持ってきた。

気が利くなぁ。


「ユリ、もう少し休んできて!」

「でもお店が・・・」

「なら、わからないことは聞きに行くから、指示だけだして」

「わかったわ。みんなありがとう」


ユリは1階にある休憩室で休むことになった。


ソウがうなだれながら呟いていた。


「俺、客商売向いてないなぁ・・・。ユリはどうやってあしらってるんだろう」

「ユリはニコニコして話聞いてるにゃ」

「ユメ・・・そうか、あれをいちいち聞くのか。凄いなユリは」

「ソウも凄いにゃ」

「ユメ、ありがとう・・・」


ソウが弱気なのは調子が狂う。


休憩室にいるユリに、分からないことを聞きながら頑張った。

何度目かの聞きに行ったとき、ユリに聞かれた。


「ユメちゃん。もう大丈夫だからお店に行って良い?」

「ソウに聞いてくるにゃ」


ソウに、ユリがお店にいきたいって言ってる。と伝えた。

すぐにソウはユリのところに行って話を聞いていた。


「ユリ、今日くらいは休んでなよ」

「絶対に無理しないからお店見に行って良い?」

「・・・わかった。絶対に無理するなよ?」


ユリが仕事に戻ってきた。


「ユリ、リラが心配してたからチョコアイスクリームの味だけ確認して」


みんなで作ったチョコ胡桃アイスをユリに渡した。


「はい。あ、ユメちゃんありがとう」


ユリはアイスを食べて、一度目を閉じてからにっこり笑って誉めてくれた。


「良くできています。とても美味しいです。100点満点で、120点です」


みんなが喜んでいた。


そのあと、ソウが仕事の話をしているので、わたしはお店に戻った。


バラアイスだけ食べたいと言う人に、持ち帰り用があるというと、それで良いと言うので何人かにだした。


しばらくして、お店を閉める時間になり、みんなでご飯を食べることになった。


ランチの残りのホワイトカレーを食べるらしい。

あんまり辛くないと良いな。

すぐできると言ってソウが用意していたけど、ごはんを炊いてなかったらしい。


するとソウは冷たいごはんをもって2階に行き、温かいごはんにして帰ってきた。

どうやって温かくしたんだろう?


ついでに辛い調味料を持ってきたみたいだった。


食べはじめてすぐ、ユリが面白いことを話していた。

白いカレーを虹色にするつもりだったらしい。

うまくいかなくてやめたらしいけど、やめて良かったと思う。何となく、青いカレーは食べたくない。


食べ終わるとユリは、みんなにお礼を言っていた。よし、早く元気になるように、お菓子を頼もう!


「ユリ、元気になったら黒糖フルーツパウンドケーキ作ってにゃ」

「はい。かならず」

「俺も!」

「はい。ソウの分も作ります」

「ユリ様、元気になったら、今度は無理しないでくださいね」

「ありがとう。リラちゃん」

「ユリ・ハナノ様、ビーツ探して参ります」

「ありがとう。マーレイさん」


みんなユリ大好きなんだな。

そうだお店の報告しなきゃ。


「今日のお店のアイスは全部売り切れたにゃ」

「追加分のバラもか!?」

「バラだけ食べたい人に出したにゃ」

「持ち帰らなくても売れるのか・・・」

「リラの華は残ってるにゃ、でも明日の分は足りないにゃ」

「いくつくらい残ってるの?」

「200こくらいにゃ」

「では、明日、普通のリラの華を100個先に作ってからネモフィラクッキーを150個作りましょう」


ユリが予定をたててくれたからこれでもう安心だ。


「片付けだけして今日は解散しよう」

「みなさん、お疲れさまでした」


ユリは、マーレイさんとリラを見送ると、そのまま2階に行って、今日は早く寝ますと言っていた。

ソウは何か悩んでるみたいだったけど、今日は疲れたのでわたしも早く寝ることにした。

次回は10月6日13時の予定です。

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