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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇子供ユメ◇

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夢の忠心

城からは、転移陣を使ってまとめて帰って来た。転移魔法を使えない人が魔力を使って転移陣を動かすと、350p+50kgを越えた分の不足魔力が必要になるが、転移能力者がいれば、転移陣に乗りきる分は、転移1回分の魔力ですむ。現在転移能力者は、ユリ、ソウ、ユメ、キボウの他、非公表の花梨花(かりんか)、松竹梅だけである。


「ユメ、使えなくなった魔法とか有るのか?」


ソウにいきなり聞かれた。

今聞くと言うことは、女王を降りたからではなく、年を越して時間がたったからと言うことだろうと思う。ユメとして生きる事になってからを聞かれているんだろうと思い、答えることにした。


「猫には成れるけど、ルレーブには成れないにゃ」

「そうか」

「だから、ローズマリーにお礼を言って、最後にしてもらうにゃ」

「それで来たのか」


以前、明確に思い出せたルレーブの姿が、今はあやふやで、ルレーブが自分であったと言う事実を知っているだけで、自分であると言う実感もなくなった。


ソウはパープル侯爵に話があるらしく、途中で別れた。


「ローズマリー、少し話があるにゃ」

「はい。ユメ様」


ソウは、パープル侯爵の執務室で話をするらしいので、私は客間に通された。


サリーが来て、お茶とケーキを置いていった。

なんと、スフレチーズケーキだ。ユリが店で出していないお菓子だ。


「作ったのにゃ?」

「ユリ様に教えていただいたお菓子は、定期的に作り、いつでも作ることが出来るようにしております」

「ローズマリーは、偉いのにゃ」


ふと笑ったローズマリーが、遠くを見るような目をして呟いた。


「アルストロメリア会、懐かしゅうございます」

「もうしないのにゃ?」

「ユリ様が、お忙しいと思われますし、年月が空きすぎました。ラベンダーも嫁に出ましたし、マーガレットも、いずれは嫁に出ますので、難しいと思われます」

「作った厨房は未だあるのにゃ?」

「はい。小規模なお菓子教室は、定期的に開催しております」

「そうだったのにゃ」


ユリの事は、ユリに聞かないとわからないから、私が決められるものではないと、話を変えることにした。今日、ここに来た件を話そう。


「ローズマリー、私の侍女をしてくれてありがとうにゃ。でも、もう充分にゃ。私はもうルレーブには成れないのにゃ。今は、黒猫のユメなのにゃ」

「はい。存じております。ご迷惑でなければ、一生ユメ様の侍女でおります。(わたくし)の我儘と、ご了承いただきたく存じます」


指名したとき、多少強引に頼んだ覚えがある。断れる状況じゃない状態で頼んだ覚えがある。それなのに、ずっといてくれると言われた。


「ローズマリー、本当にありがとにゃ。私は幸せ者にゃ」


感極まって、泣いてしまい、ローズマリーを慌てさせてしまった。すぐに、サリーが、温かい濡れタオルと、冷たい濡れタオルと、乾いたタオルを持ってきてくれた。


目が腫れているとユリが心配するので、しっかり温めた後、しっかり冷やし、最後に乾いたタオルで拭いてさっぱりした。


その後は、世間話をしたり、最近の店のお菓子の話をしたり、なかなか楽しかった。


「そういえば、ユリが、強化夏板を売り込みに来ると思うにゃ」

「きょうかなついた?とは何でございますか?」


言葉自体が通じなかった!


「厨房で何か焼くと、火加減が大変にゃ。夏板は魔力で動かすから、温度が固定できるにゃ。それの強化タイプで、80~240度って言ってたにゃ」


物はわかったけど、意味がわからないといった顔をしていた。


「ユリ様が売り込みにいらっしゃるのですか?」

「えーと、鮎を作ったり、ホットケーキを焼いたりするのが楽々って言ってたにゃ」

「もしや、アルストロメリア会用でございますか?」

「そういう意味だと思うにゃ。パープルと、王宮に売り込むって言っていたにゃ」


作れる料理で、思い付くものを説明してみた。お好み焼きやミニピザが、火の無いところでも作れるから、お肉も焼けるだろうし、こういった客間でも使えると説明した。


「素晴らしいですわ!」


ユリの代わりに売り込んでしまった。

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