夢の存在
私は城に来た。
誰に相談したら良いかわからないけど、相談されたら困るだろう人ばかりなのだから、いちばん被害が少なそうな相手が良いかなと思った。
「ユメ様、なんでしょうか?」
「私は、ユリとソウの邪魔になっているのにゃ?」
言われたことが分からないとばかりに一瞬固まっていた。
「どういう事でしょうか?」
ソウの身内ではない人で、私にちゃんと意見の言える人が思い浮かばなかったけど、話しても一番被害が少なそうなメイプルのところに来てみたのだ。
「今日、ユリが忙しかったから、ソウが、掃除をしてたのにゃ。でも、ユリの部屋には入らなくて、入って良いのかなって言ったのにゃ」
「ユメ様、大変申し訳ございません。前提条件が理解できないのですが、ハナノ様は部屋の掃除もされているのですか?」
相談相手を間違えたことに気がついた。
「王族は、掃除しなかったにゃ」
「はい」
「すっかり忘れてたにゃ。掃除、結構楽しいにゃ」
「左様でございますか」
困ったなぁ。と思っていると、メイプルが、ズバリ聞いてきた。
「ユメ様、何が一番お困りなのですか?」
他の人に相談したとしても、どう考えても回答を得られそうにないので、言ってしまおうと思った。
「ユリとソウが、結婚しても生活を変えないのは、私に遠慮してるのかも知れなくて、私は邪魔なんじゃないかと思ったのにゃ・・・」
少し驚いた顔をしたあと、しっかりこちらを見てメイプルは言った。
「断言いたしますが、絶対に邪魔ではございません。そもそも、ソウもハナノ様も、転移魔法の使い手でございます。もし二人きりになりたいのでしたら、いくらでもその手段がございます。二人は大人なのです。放っておけば良いのです」
「そうなのにゃ?」
「はい。これは絶対でございます」
そうか、大丈夫なのか。
力強く断言され、少し落ち着いた。
「メイプル、ありがとにゃ」
「どうしても気になるのでしたら、キボウ様とご一緒に、泊まりがけでカンパニュラのところにでも遊びに来ていただけると、私はとても助かります」
「ありがとにゃ!」
メイプルに相談してよかった。
私がほっとして居ると、キボウが転移してきた。
「ユメ、いたー」
「キボウどうしたのにゃ?」
「ユメ、いなーい。キボー、しんぱーい」
「キボウ、ありがとにゃ」
せっかく来たんだからと、キボウは、シッスルに会いたいらしい。
メイプルに手配してもらい、プラタナスの部屋に遊びにいくことになった。
案内についていくと、部屋ではなんと、折り紙大会が繰り広げられていた。
「どうなってるにゃ?」
「ユメ様! ようこそお越しくださいました。先日いただいた中にございました、折り紙というものを皆で挑戦しております」
「手伝うにゃ?」
何となく、折り紙は覚えている。鶴くらいなら、たぶん折れるんじゃないかな。
「よろしいのですか! ありがとうございます。行き詰まっておりました」
キボウはさっさと奥に居るシッスルのそばに行き、話しかけていた。私は、手前にいた折り紙を折っている少し不器用な女官と話していたけど、あからさまに、助かったー!という顔をされ、少し気の毒になった。
「どれがわからないのにゃ?」
「こちらの花を作りたいのですが」
そういいながら見せてくれた努力の結果らしきものが、割りとひどかった。
角が合っていない。きちんと折れていない。
「この花なら作れると思うにゃ」
一枚受け取り、ささっと折って見せた。
「す、凄い! 黒猫様の魔法でございますか?」
そんな訳はない。
「普通に折っただけにゃ。きちんと角を合わせるように折れば、本の通りに作れるにゃ」
私はリクエストされた、折り紙の本に載っているものを作り続けた。
そもそもこの本は、超初心者向けだと思う。ユリの店には、もう少し難しい本もあったはず。
リクエストがなくなるまで折り、解放された。




