夢の名称
シィスルが作った飲み物やトーストをだし、帰る客に持ち帰りの生チョコを渡していると、ユリから声がかかった。
「ユメスペシャル、できましたー!」
厨房に取りに行くと、リラが来ていた。何か厚紙をハサミで切っている。
「あなた本当に凄いわね」
「え?」
ユリも誉めていたけど、あれは世界樹様のクッキーを小さくした形だ。リラは何も線を引かずに切り抜いたらしい。
「カッターマットが一緒にあると思うから、使ってね」
「はーい」
お店に戻る私の後ろから、リラも来て、休憩室に入っていった。
「ユメスペシャル、おまたせにゃ!」
「黒猫様、ありがとうございます!」
「途中まで私が作ったのにゃ!」
「それは素晴らしいですね!」
持ち帰りのみの客でかなり忙しい。
イリスは、持ち帰り客の注文を聞くと、すぐに用意して持ってくる。どうなってるんだろうと思い聞くと、全種類の注文の人が多いから、マーレイが、全種類入りを作って渡してくれているらしい。
ホワイトチョコで作った4種類と、ブラックチョコで作った4種類で、いくつか組んで作っておいて、全種類ではない注文の時だけイリスが組んでいるそうで、酒無しのイチゴは、それだけを買う人か、全く買わない人が多いそうだ。
みんなどれだけ酒入りの菓子が好きなんだろう?
イリスが接客しているときに、持ち帰り分を頼まれたので、私がマーレイのところにもらいに行くと、リラとマリーゴールドが帰るところだった。
今までいたの?
そして、薄緑色の世界樹様のクッキーを小さくしたようなラング・ド・シャができていた。
「セカンドネーム!?」
「キボウ君に『キボウ』と名付けたのは、私だけど、フルネームは、長いのよ」
話が聞こえた。キボウの名前って長いの?
そういえば、ルレーブになれない私の名前は、どうなるんだろう?
店に戻り、その忙しさに、考えていることを忘れた。
「持ち帰り希望なんだが、できれば、あるだけ全て売ってもらいたい」
「にゃ? 全てなのにゃ?」
イリスが急ぎ厨房に行くのが見えた。
すぐに戻ってきたイリスが、引き継いでくれた。
「お客様、在庫的には各種120個ほどございまして、その半数をお売りすることが可能でございます。お酒入りのものだけですと480個、お酒無しのものも含めますと540個になりますが、いかがいたしますか?」
「ご、540個? そんなにあるのか・・・」
「どうされますか?」
「も、もちろん、」
「旦那様、冬箱は200個が限界でございます」
一緒に来ていた執事っぽい人が、止めていた。
私は厨房に行き、ユリに話した。
「ユリ、あれは、500個は想定してなかったみたいにゃ。でも言った手前、無理してでも買うつもりみたいにゃ」
「必要な数にしてくださいと助言してきてくれる?」
「わかったにゃ」
店に戻り、声をかけた。
「無理はダメにゃ。他にも欲しい人のために、残してにゃ」
「そ、そうだな。では、私は200個で我慢するとしよう」
「どれを何個にするにゃ?」
「お酒入りのものを24組、お酒無しのものを8個でお願い致します」
執事っぽい人から、具体的な数字を言われ、48個入る冬箱を4つと、8個しか入らない小さな冬箱を1つ持参してきていた。イリスとマーレイと手分けして、預かった冬箱に詰め込んだ。
冬箱無しでも買える季節なので、紙袋が良く売れる。内倉庫の紙袋が少なくなってきた。
「ユリ、紙袋は、内倉庫に有るだけにゃ?」
「ビニールのパッケージを破っていないのが、外倉庫にあるはずよ」
それは、重すぎる大きさかな。と悩んでいると、マーレイが気がついて声をかけてくれた。
「ユメ様、いくつか運んでおきます」
「お願いするにゃー」
その後は、多くてもせいぜい24個くらいの注文ばかりで、種類を指定してくる人は少なかった。
店内の食べていく客も落ち着いてきて、外の行列は、大分短くなった。
私は黒猫サンドを売ったり、ユメスペシャルを作ったり、結構忙しかった。
生チョコは、まだかなり残っている。
厨房では、ユリもシィスルも、何か作っていた。どうやら試作らしい。
そろそろ閉店時間かなぁという時、駆け込んできた客がいた。
「まだ、売っていますか?」
「お店で食べるのはもう終わりにゃ。生チョコはまだあるにゃ」
「それは、まだ売ってもらえますか?」
「生チョコなら大丈夫にゃ。いくついるのにゃ?」
「有るだけ、」
「250個くらいあるのにゃ。欲しい数を言うと良いのにゃ!」
「では、100個くらい」
「種類が、お酒入り8種類、お酒無し1種類あるにゃ」
「でしたら、お酒入りで80個、お酒無しを20個で!」
イリスが見本として組んであるのを持ってきた。
「お客様、バラバラに組んだのをお持ちしてよろしいですか? お酒無しだけは、まとめてお持ちしますが」
「分かりやすければ、任せるよ」
空いたテーブルに紙袋でのせていくと、使用人らしき人が、続々取りに来ていた。紙袋で25袋あるのだ。1人では持ち帰れない。
「お手伝いの方を含め、何名でお越しでしょうか?」
「5人だな」
「では、本日の、バレンタイン特別の王国型ラング・ド・シャです」
イリスが、支払いをして帰る客に、サービスのラング・ド・シャを渡していた。黒猫サンドは、ついさきほど売り切れてしまい、無いのだ。
「みんな手が空いたら、ご飯を食べましょう」
ユリが声をかけてきたので、とりあえず片付けをそのままにして、食事を始めた。
「私から皆さんへ、バレンタインのお菓子です」
そう言ってユリが持ってきたのは、ハート型のラング・ド・シャと、模様を描いてあるラング・ド・シャと、桃色で花形のラング・ド・シャにアイスクリームがのっていた!
「うわー! ユリ様凄いです!」
シィスルは、模様つきに感動してるみたいだった。
「アイスが乗ったお花にゃ!」
私は、アイスの器にもなるんだ!と驚いた。
「へぇ、模様つきにできるんだ」
ソウも、模様つきに驚いていた。
早速食べてみると、ハート型のラング・ド・シャは、挟まっている生チョコが、オレンジピール入りだった。これ美味しい!
ユリは、リラたちにも渡すらしく、シィスルに持ち帰るよう頼んでいた。




