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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇子供ユメ◇

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夢の我慢

今日はWの日(みずのひ)

ユリたちは、お昼ご飯の後、出掛けていった。


突然部屋に来て、「ユメちゃん、ちょっと化けてくるわね!」と言ったのだ。私は意味がわからず唖然とした。すると、ユリと一緒にいたソウが、「カエンのところに行ってくるよ」と説明してくれた。


あー。リラの店に行きたいのか。

そういえば、そんな相談をされていたと思い出した。


今週は結構大変だ。

ユリが結婚式のお祝いで配ったアマンドショコラの追加が、見込みよりかなり増えて、まだ作り終わらないのだ。この二日間、お店に来た人には返したらしいけど、城に持って行く分が、全く足りないと言っていた。


私もユリとソウにお祝いを渡したいけど、何を渡したら良いかなぁ。

リビングに居るキボウに聞いてみようと思った。


「キボウ、ユリとソウの結婚のお祝いって、何か渡すにゃ?」

「おいわい?」

「みんな、花とか果物持ってきたにゃ」

「おいわい、もってくるー!」


キボウは転移で消えた。

何を持ってくるつもりなんだろう? どちらにしても、キボウはなにか候補があるらしい。

ちなみに、リラは、当日の絵らしい。


こうなったら、ハイドランジアか、メイプルにでも相談しようかな。

私は城のソウの部屋に転移し、呼び鈴を鳴らした。


「ハイドランジアか、メイプルは居るにゃ?」

「確認して参ります」


珍しく、予定を把握されていないらしい。公務がない日なのかな?


戻ってきたメイドは、今城に居る王族は、サンダーソニアだけだと説明していた。


「サンダーソニアは暇なのにゃ?」

「お暇かどうかはわかりかねますが、お声がけ致しますか?」

「頼むにゃ。暇なら、相談があるにゃ」

「かしこまりました」


再び聞きに行ったメイドは、割りとすぐに戻ってきた。


「失礼いたします。サンダーソニア殿下をお連れいたしました」

「ユメ様! せっかくお越しくださったのに、留守で申し訳ございません。お様母も、義姉様(おねえさま)も、ご夫婦で非公式に里帰りしております」

「相談が有って来たのにゃ」

「相談でございますか?」

「ユリとソウにお祝い渡したいのにゃ。でも何を渡せば良いか、わからないのにゃ」


サンダーソニアは、しっかり相談に乗ってくれた。

ユリとソウとの関係性と、できることの中で、相手が喜ぶものが最適だと話がまとまり、買った品物よりも、私ならではの特色のあるものが良いと言われ、ユリとソウが知らない、魔法についての過去の話をまとめた書き物を渡すことになった。これは、私の居なくなった後、ユリの手に渡るように書いたもので、昨年書き上げてあるので、すでに渡せる形になっている。


「役立つ情報って素晴らしいですね!」

「1(スター)もかかってないにゃ」


そのノートもペンもユリに貰ったものだ。


「お金では買えない価値です! ユメ様のおっしゃるその情報の価値は、国家予算でも足りない価値だと思われます!」

「サンダーソニア、ありがとにゃ!」

「お役に立てたようで、何よりでございます!」


サンダーソニアには、黒猫クッキーと、ユリから貰ったラスクを渡すと、ものすごく喜んでくれた。


「楽しくお話しただけで、美味しいお菓子をいただけるなんて、戻ってきたお母様と、義姉様(おねえさま)に、羨ましがられると思います!」

「にゃはは。また来るにゃー!」

「お待ちしてまーす」


転移で家に戻ると、キボウが、籠に入れた木の実を持っていた。ユリの魔力を全快にする、あの木の実だと思う。ちゃんと籠に入れているのが、凄いなと思った。


「キボウ、籠はどうしたのにゃ?」

「おかあさまのー」

「にゃ! お母様の持ち物が残ってるのにゃ?」

「あるよー」


なにか分けてもらえないか、そう言いたかったけれど、キボウは、お母様の事を「ルレーブだけ大事」と言っていたのを思い出した。キボウの物を奪ったらいけない・・・そう思い直し、私は言いかけた言葉を飲み込んだ。


「キボウ、その木の実は、世界樹の森にたくさんあるのにゃ?」

「わかんなーい。かみさまくれたー」

「世界樹様から貰ってくるのにゃ?」

「あたりー!」


世界樹の森にその実が()る木が有るのかな? あの料理のように、その実を埋めたらたくさん生ったりするのかな?


あの森は不思議な場所で、謎なものだらけだ。


ユリとソウは、すぐ帰ってくるかと思っていたけど、なかなか帰ってこなかった。

本でも読んで待っていることにしよう。

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