夢の訪問
今日は、リラから遊びに来ないかと誘われて、リラの家に来たのだ。
夕飯までに帰ってくるように言われたので、それまでリラと遊ぼうと思っている。
「ユメちゃん、いらっしゃい」
「おじゃまするにゃ！」
「キボー、きたー！」
「あら、キボウ君いらっしゃい」
「キボーも良いにゃ？」
「大丈夫ですよ」
キボウが付いていくと言うので、ユリが、ダメそうなら迎えに行くから連絡ちょうだい。と言っていたのだ。
「リラ、キボウは、野菜以外も食べられるにゃ。食わず嫌いだったにゃ」
「そうなんですか！？」
「ピザトーストを、キボウが、美味しかったー！って食べてたにゃ」
「へぇ、そうなんですね。ユリ様が大変そうだったから、何でも食べられるなら良かったですね」
「よかったー、よかったー」
ユメは預かってきたものを出した。
「これ、ユリからにゃ。メレンゲ菓子って言ってたにゃ」
「早速いただきます！」
リラはすぐに口に入れていた。
「サクッとして、シュワっと溶けて、甘くて美味しいですね。どうやって作るんですか？」
「泡立てた卵白と砂糖と、ナッツが入っているって言ってたにゃ」
「お店始まったら教えてもらいます」
「それが良いにゃ」
リラがお菓子とお茶を出してくれた。
見たことがないお菓子と、ほうじ茶のようなお茶だった。
「お菓子作ったのにゃ？」
「はい。この国の伝統的なお正月のお菓子です」
「いただくにゃ！」
「キボーも！キボーも！」
リラは、届かないキボウに取り分けてくれた。
「キボウ様、どうぞ」
「ありがとー！」
早速食べてみると、芋餅のような、もちもちした団子のようだった。ハチミツのような甘味がついている。
「美味しいにゃ！」
「ありがとうございます。ユリ様の豪華なお菓子に慣れていると、素朴すぎて、見た目も地味ですし、どうしようかと思ったんですが、お正月だし、お正月のお菓子の方が良いかなって思い直しました」
「初めて食べたにゃ」
「そうなんですか！？」
「今覚えているのは、黒猫になる少し前くらいまでにゃ。300年前は、知識として覚えているけど、記憶は曖昧にゃ」
可哀想って思われたかな。
「いつも初めての物が食べられますね！」
「リラは、凄いにゃ。ありがとにゃ」
リラが笑顔で肯定してくれた。
儚むよりも、前向きに生きたい。
お正月のお菓子を食べたあとは、リラの絵や、作ったものを見せて貰った。
ユリの店でハロウィーンをしたときの様子を書いた絵や、クリスマスをしたときの絵があった。
ハロウィーンの絵は、薄い色だったけれど、クリスマスの絵は、はっきりした色の絵だった。
どうして色合いがこんなに違うのか聞くと、描いたときは同じように描いたけど、リラがみんなでハロウィーンをしたのは、5年前だったと言われ、年月を実感した。
「お餅つきの絵はないのにゃ？」
「飾っていませんが描きました」
そう言って、絵を出して見せてくれた。
リラが合いの手を怖々している絵だった。
スケッチブックには、飾っていない絵もたくさんあって、パフェがいっぱい描いてある絵や、バタフライピーの絵もあった。
他には、人物を描いたと思われる絵もあったけれど、知らない人ばかりだった。
こんなに沢山描いたと言うことは、色鉛筆は相当減ったんじゃないかな？
「リラ、画材足りるにゃ？」
「本音を言うと、もう少し欲しいです」
「具体的に欲しいものを言ってにゃ。わたしは描かないから足りないものが分からないにゃ」
「ユリ様にいただいた色鉛筆はほとんど無くなってしまいまして、描くものが欲しいです」
「わかったにゃ」
ユリに言って、用意してもらおうと思った。
そうだ！ プラタナスのために、ソウが買いにいくはずだから、一緒に頼んだら良いかな！
我ながら名案だと思う。
キボウは、おとなしく絵を見ていた。
絵を見る趣味があるのかな？
