夢の蛸焼
城につくと、すぐにソウはメイプルを呼んでいた。
なのに、来たのは全員だった。ソウが少し嫌そうにしていて、笑ってしまった。
奥から、ユリ、ソウ、ユメ、キボウの順に座ったので、キボウがうろうろしないように見張っていよう。
ソウが話し出したけれど、メイプルだけに話していた。それを見ていたユリが、ソウに、みんなにも話すようにと言っていたけれど、ソウはとてもめんどくさそうだった。
「キボウ、あの映像は、みんなで見ることはできないのにゃ?」
「はっぱー、いしー、おおきいー、いしー、まりょくー、みんなー」
「養育係を呼ばないと分からないにゃ」
「シッスルー、シッスルー」
キボウが養育係を呼ぶと、すぐに来た。隣にひかえていたらしい。
キボウが同じように、養育係のシッスルにうったえた。
シッスルは、いくつか質問をし、話をまとめていた。
「キボウ様がお持ちになった物に、魔鉱石を乗せてお使いになると、皆様でご覧になれるようでございます」
「シッスルー、ありがとにゃ」
流石だ。
何でキボウの単語がきちんと文書になるのか、未だに謎だ。
持ち込まれた魔鉱石は、ユリが「私が充填します」と言って、受け取っていた。
充填した魔鉱石と、先程のはっぱを受け取ったキボウは席をたち、広さのある床まで行き、はっぱの上に魔鉱石をおいてから離れていた。
少しすると、映像は、立体となって再生された。
ただし、現実よりは小さい気がする。
実は、魔鉱石の容量不足で、もっと大きいものを使うと、実物大で再生されるのである。
「うわー!」「おー!」「凄いにゃ!」
私たちは映像自体に驚きはなかったが、王族は、全員口をあんぐり開けて、固まっていた。
キッチンに おかあさまが映ると、驚きよりも興味が湧いたのか、話し出した。
「ユリ様?」
「お髪の色が?」
「もしや、リス様!?」
やっぱり、おかあさまだと認識されるんだ!
「とりあえず最後まで見てくれ!」
ソウが声をかけると、質問をやめて、静かに見入っていた。
取り込んだ木の実の中身が料理だったのを見ると、大騒ぎになった。新しい料理の入った実を埋めているのを見て、更に驚いていた。
映像の再生が終わると、ソウにみんなから質問が殺到した。
「俺に聞くなー。俺もさっき初めて見て、今ここに来てるから、質問はキボウにしてくれ」
ソウにキボウに聞けと言われても、返ってくる答えが意味不明なので、誰も質問しない。
ユリが見かねて話し始めた。
「料理を教えるよりも、色々な料理を持って行った方が良いと思うんです。魔道具の鞄に詰めて置けば、時間が経ちませんし、好きな食べ物を用意していった方が良いと思うんです。教わるべきは、せいぜいお茶をいれる方法とか、切り分ける方法とか、そういったものじゃないかと思います」
「な、なるほど、給仕を習うのが必要なのですね」
メイプルが同意して、アネモネと話し合っていた。
「ということで、私に依頼したい料理やお菓子を考えてください。多くは、食べ慣れたものが良いと思うので、いつも食事を作る人に頼んだ方が良いかと思われます。パウンドケーキは持ってきます」
「ユリ様、ありがとうございます。今、刺繍以外の簡単な裁縫を習っておりまして、メイプル様は、剣や歴史の復習をされていらっしゃいます。他に必要な技術等、思い付くことがおありでしたら、ご教授願えますでしょうか?」
「掃除とか洗濯は出来そうですか?」
「王宮の者ほどはできかねますが、下の者を知るということで、嫁ぐ前の若かりし頃に一通り体験したことがございます」
メイプルもアネモネも、色々頑張っているみたいで大変そうだ。でも一番大変なのは、プラタナスだと思う。
「ソウ、勉強ばかりはかわいそうにゃ」
「それもそうだな」
ソウは助言を出してくれた。
「プラタナスが遊ぶための物も持って行った方が良いぞ?」
「成る程、左様でございますね」
「プラタナスは、絵が得意にゃ。画材が良いにゃ」
「そうか。なら俺が贈っておくよ」
「頼んだにゃ!」
ソウは、メイプルに伝えてくれるらしい。
「紙と画材は、俺から餞別を渡すよ」
「ソウ、かたじけない」
メイプルが感謝していると、キボウが騒ぎ出した。
「ユメー、キボーも!キボーも!」
「わかったにゃ。キボウにも買ってもらうにゃ」
私がキボウに言い聞かせている間に、ユリが挨拶して会が終了していた。
みんなで転移して家に帰ってきた。
「良い時間だから、タコ焼き食べるか!」
「食べるにゃー!」
「たべるー、たべるー」
「飲み物でも用意するわ」
ソウが焼いてくれたタコ焼きは、とても美味しかった。昔も食べたことがあるはずだけど、初めての美味しさだった。
なんとキボウもタコのまま食べていた。
「2度目は好きなものをいれて良いぞ!」
ソウが言うと、16穴あるので、全員公平に1/4の4つずつ好きなものを入れた。
ユリはベビー帆立をカットして入れていた。
ソウは、剥き海老を入れていた。
キボウは2つにだけチーズを入れていた。
私は4つ違うものを入れた。ユリに分けて貰ったベビー帆立と、ソウに分けて貰った海老と、烏賊の切り身と、アサリの剥き身。シーフードミックスという袋に一緒に入っていた。
キボウは、ジャムの瓶を持ってきた。
ユリがさすがに止めていた。
それでもとても残念そうにしているので、ユリが提案した。
「それなら、こうしましょう」
ユリはソウに何か言ってから、ホットケーキの素を作ってきたらしい。
「これなら、ソーセージでもハムでもジャムでもチョコでも合うと思うわ」
焼けたばかりのタコ焼きを食べながら、どれをいれるか考えた。
タコ焼きの丸い穴を、ソウとユリで物凄く良く掃除していた。
バターを溶かして、ホットケーキの生地を入れ、
私は2こずつリンゴのプレザーブと板チョコを入れた。
キボウは2こずつリンゴジャムと板チョコだった。
ソウは、4つに板チョコとバナナを入れていた。
ユリは何作るんだろうと思ったら、ユリは2こずつソーセージと、チーズだった。少し驚いた。
タコ焼きより柔らかくないので、出来上がったものをユリが竹串に刺してくれた。
キボウが「あついー、ないー!」と、喜んで受け取っていた。
生地が残っているから まだタコ焼きを焼くと言うので、ソウに焼き方を教わって、焼かせてもらうことにした。
「私でも作れるにゃ?」
「少し慣れれば丸く出来るようになるぞ」
場所ごと代わってもらい、タコ焼き器の前に座って、タコ焼きをひっくり返してみた。
物凄く難しい。何で、こんなに細い棒だけで、ソウが作ると丸くなるの?
「丸くならないにゃ」
真ん丸にならないタコ焼きが、16個出来上がった。




