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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇新生ユメ◇

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夢の紙鑢

ソウがお金を数えていた。

あれ? 札だ。この国のお金じゃない。


「どうしたの? それ」

「明日の一時帰宅者の、両替に使う分だよ」


ユリが聞くと、答えていた。


「なんか、お札って久しぶりに見た気がするわ」

「あはは、そうだね。ここはコインだからね」


今のお札のデザインって、あれなんだ。

福沢諭吉はいつまでだったんだろう。

何か表面がキラキラしておもちゃみたい。


「ユリ、紙袋貰っても良い?」

「良いけど、何に使うの?」

「これ、入れるのに」


なんとソウは現金を紙袋にいれるつもりらしい。


「・・・ドラマの身代金みたいにゃ」


思わず言ってしまった。


「紙袋に札束は止めましょうよ。何人分必要だったかしら?」

「カナデを入れて7人だな」

「袋縫ってくるわ」


ユリは袋を作ってくるらしい。

7人分の袋って大変そうだなぁと思っていたら、割りとすぐ戻ってきた。


お札がそのままやっと入るくらいの小さな布の袋だった。


「はい。これなら破れる心配もないし、コインを入れても大丈夫よ」


破れたら大変だから紙袋はダメだよね。


「ユリ、ありがとう。あとは名前でも紙の荷札に書くかな」

「ソウはどこまでも紙なのにゃ」


何かこだわりでもあるのかなぁ?


「うふふ。プラバンで名前札でも作る?」

「あいつらにそこまでする必要ないよ。ユリの袋だけでも贅沢なのに」


そこか。


「ソウ、狭量(きょうりょう)にゃ」

「プラバンは、ユメとキボウと一緒に楽しみなよ」


ソウが全く否定しなかった。


「よんだー?、キボーよんだー?」

「キボウ君、工作する?」

「コウサクなにー?」

「ユメちゃんもプラバン作る?」

「懐かしいにゃ。作ったことあるにゃ」

「みんなで何か作りましょう」


ユリはプラバンを持ってきているらしい。


ユリは持ってきたプラバンを4つに折って分けてくれた。

18色の油性マジックのほか、なぜか色鉛筆や紙ヤスリまである。さらに除光液と綿棒も持ってきた。何に使うんだろう?


「ユメちゃんは知っているなら説明は要らないかしら?」

「大丈夫にゃ」


あ、聞けばよかったかな?


「キボウ君、この透明な板に絵や字を書いて、オーブンで焼くと、縮んで固くなるの。好きなことを書いてみてね。ハサミで好きな形に切っても良いわよ」

「わかったー」


私は黒いマジックで猫の輪郭を描き、瞳を青で塗って、残りを黒く塗りつぶした。ハサミで切り抜いていると、ユリがパンチを持ってきた。


「ユメちゃん、パンチ使う?」

「ありがとにゃ!」


ユリを見ていると、板の全体を紙ヤスリで擦っていた。その後、花型に色鉛筆で書き込み、中を塗ってから、切り取っていた。大きい方は青い色鉛筆で全体を塗っていた。


「ユリ、絵は描かないのにゃ?」

「私、絵は苦手なのよね」

「ユリのは、何をやってるのにゃ?」

「え?プラバンの色付けって、こうするんじゃないの?」

「色鉛筆の色がつくのにゃ?」

「ほんのり透明っぽい色が着くわよ。色鉛筆よりもパステルがあるともっと良いんだけどね」

「知らなかったにゃ。油性マジック以外で絵や字を書く発想はなかったにゃ」

「私が考え出したって訳じゃないわよ? 教わったときに、すでにこういうものだったわ」


ユリのがどんな風に出来上がるか、楽しみだ。

ユリはキボウの板の角を丸くしてから穴を開けて、焼いていた。


焼けたものを取り出すと、なぜか鍋をのせていた。どうやら底が平ららしい。


ユリの花型のは、焼き上がると熱いうちに取り出し、なんと計量スプーンにのせて冷ましていた。

冷めた花は丸みがあり、可愛らしく出来上がっていた。それを接着剤で名前を書いた青い板に貼り付けていた。


冷めたプラバンを見せて貰ったキボウが、大騒ぎしていた。


「ちぢんだー!キボーかいたー、ちぢんだー!」

「これに紐をつけると、下げられるわよ」


ユリはキボウに、紐をつけて渡していた。

私はユリの花の飾りの付いた名札を見て感心していた。


「ユリ、凄いにゃ。花凄いにゃ」

「もう一枚あるから、作ってみる?」

「作るにゃ!」


さっきユリがしていたように、全体を紙ヤスリで擦るところから始めた。


「向こうに行ったら、買ってこようかしら?」

「買ってきてにゃ! きっとリラも作りたいと思うにゃ!」

「あー、リラちゃんに作らせたら、売り物ができそうね。私たちと別次元のものを作りそうよね」


たしかに、芸術肌のリラなら工芸品を作りそうだと思った。



「あ、ソウ、私も両替頼める?」

「ユリの分は俺が払うよ?」


ソウは、資金集めをしなくちゃいけないのに、ユリから現金を受け取っていないらしい。

正当な両替くらいすれば良いのに。


「ソウ、ちゃんと貰った方が良いにゃ」


私が言うと、ソウは思い出したのか、少し考え始めた。


私はプラバンに集中し、色づけと切り抜きまでしたけど、ユリとソウは仕事の話をしているようなので、キボウと一緒に部屋の外に出た。


「キボウ、外に散歩でも行くにゃ?」

「さんぽー!」


「キボウ、結界は張れるにゃ?」

「はれるー!」


キボウは、私が見たことがない、薄緑に見える結界を張った。


「なんの結界にゃ?」

「かみさまー」

「世界樹の森の結界と同じにゃ?」

「あたりー」

「キボウは凄いにゃー」


少し散歩すると、暗くなってきたので、ユリが教えていたのと同じ「灯火(ともしび)」を(とも)し、家に戻ってきた。


ご飯ができていて、今ちょうど出来て探しにいこうと思っていたと言われた。

ご飯のあとは、明日に備え早く寝るらしい。

明日、どうしようかな。

紙鑢=かみやすり

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