夢の押型
お待たせいたしました。
お店の営業が年内最後のせいか、質問する人が多い。イリスはあまり捕まったりせずに仕事をしているけど、どうやってるんだろう?
「黒猫様、この唐揚げのおかわりはできますか?」
「無料の提供品だから、無理にゃ」
「唐揚げは、メニューに加わらないのですか?」
「ユリに聞いてくるにゃ?」
「後で良いです」
注文されたものを運ぶと、又捕まった。
「黒猫様、どうして生チョコが安くなったのですか?」
「ユリが女王になったので、国が強く出られるようになったのにゃ。チョコレートを買うときに高く買わなくて良くなったからなのにゃ」
「ハナノ様、本当に凄い方なのですね」
「黒猫様、お店お休みの後、ちゃんと又お店再開しますか?」
「今度は大丈夫なのにゃ。ちゃんと予定通り再開するのにゃ」
「黒猫様、ユメ様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「ユメと呼んで良いにゃ!」
「ユメ様、ありがとうございます!」
「ユメ様、黒猫様ではございませんが、黒っぽい猫様が屋敷の外にいらしたので、家で飼い始めました。機会があったらお連れいたします」
「猫は自由にさせておいた方が良いにゃ。猫を保護したのは偉いにゃ。これ、とっておくのにゃ」
黒猫クッキーを渡した。
「ありがとうございます!」
お店に売り切れが出始めた。
「ユメちゃん、ポテロンと、黒ごまムースが売り切れました」
「わかったにゃ。イリス、ありがとにゃ」
「ユリ様にお伝えして参ります」
「頼んだにゃ」
イリスはユリに伝えにいった後、ヨーグルトゼリーを持っていったらしい。
しばらくすると、カエンがヨーグルトゼリーを持ってきた。
カエンが手に持ったまま、全てが売り切れてしまった。私はまだ見てもいない!
なんと、黒猫の模様がついていたらしい。
急いで厨房に聞きに行った。
「ユリ、今のは何にゃ!」
「ヨーグルトゼリーのプレーンが売れないって言うから、メイプルシロップをかけただけよ。猫の模様は、クッキー型でつけたのよ」
「もう無いのにゃ?」
「え、食べたかったの? なら、残したプレーン下げてくれば、取っておくわよ」
「ありがとにゃ!」
7つあったので、みんなの分にちょうど良いと思って、全部ユリに渡した。
私と入れ替わりに、イリスが厨房へいってしまった。
「イリスどうしたのにゃ?」
「ユメ様、イリスさんが、他に黒猫様のお菓子がないか聞きに行ってくれました」
「そうなのにゃ?ありがとにゃ」
戻ってきたイリスは、ティラミスを下げていた。
ティラミスはココアがかかっているから黒猫にならなくない?
少しして、カエンが運んできたティラミスは、猫の形の回りが白くなって、しっかり黒猫のティラミスになっていた。
ユリは凄いなぁ。
ユメはそう思っていた。実は、凄いのは黒猫様の人気の方なのである。
生菓子の残りは、イチゴムース、桃のババロア、抹茶ムースだけになった。
残り少なくなっても、あるものを買っていく客が多く、無いことに苦情もでなかった。むしろ、遅く来たのにまだ残っていてありがたい!と言う感じで、喜ばれた。
閉店ギリギリに客がきた。
「まだ、大丈夫ですか?」
「まだ少し大丈夫にゃ」
「ありがたい。迷ってしまって、遅くなってしまった」
「どこで迷うのにゃ?」
いつも疑問だったことを聞いてみた。
「侯爵の屋敷のそばに有るんだと思い込んで探していました」
「そういうことにゃ」
なるほど、こんな何もない場所に店があるとは思わなかったらしい。
その客は、残っていたケーキを全て買っていき、生菓子は売り切れた。
ユリに報告に行くと、ユリはいなかった。
「ユリ様は、カエン様を送って行かれました」
リラが教えてくれた。
良く見ると、リラがご飯を作っているらしく、すぐに食べられそうだった。
先にお店を片付けた。
ソウにも声をかけて、時間を教えると、ソウとマーレイもお店に戻ってきた。
少しして戻ってきたユリは、手にいっぱいの荷物を持っていた。




