夢の青石
女性はどうやら桜子で、ユリに注文を聞きに来たらしい。
ユリが欲しかったものは殆ど揃うようで、ユリは具体的な必要量を桜子と話し合っていた。
時間があるので少し散策する予定で、帰りに受けとると言っていた。
案内をしてくれるという女性が工芸品の見学をすすめてくれたので、みんなで見に行くことにした。漆器や寄せ木細工などがあり、感心しながら見ていると、そっと呼ばれた。
「黒猫様、ホシミ様にお買い上げいただきたいものがございます。話を通してはもらえませんでしょうか?」
「ソウににゃ? わかったにゃ」
少し不思議に思いながらソウに話すと、話を聞いてみるというので、一緒についていくことにした。
「キボウ、ユリを頼んだにゃ。ソウが心配だからついて行ってくるにゃ。何かあったら知らせるのにゃ」
「わかったー」
キボウにユリを頼み、ソウと一緒に案内の女性について行くと、宝石加工場につれてこられた。
「ホシミ様、ハナノ様が青い石がお好きと伺いました。こちらはいかがでしょうか? 大きすぎて、引き取り手を選びます故に、誰にでも勧められるものではなく・・・」
かなり見事な青紫色の宝石だった。
「これ何て石?」
「類似するのもがなく、これと、もう1つ小さな欠片があるだけなのです」
「わかった。俺が買うよ。小さな欠片の方を先にくれる?調べてくるから」
「太陽のもとでは、透き通った水のように薄い青色で透明のようになり、月明かりのもとでは深く青く輝きます」
「そうなの? ここでは青紫に見えているけど、明るさで色が変わって見えるの?」
「はい。ためしに欠片を持って部屋を出てみると分かりやすいかと思われます」
言われた通り、欠片(といっても指輪にしても大きいサイズだが)をもって、部屋の外に出て、窓のそばで見てみた。
「本当だ。アクアマリンみたいに薄い水色になった。ユメ、知ってたか?」
「初めて見たにゃ」
「俺が持たなくて良いから、誰かに持たせて大きい方もここで見せてくれる?」
「かしこまりました」
すぐに持って出てきた石は、部屋の戸を抜ける時に薄く変化するのが見えた。
「疑って悪かった。いくら払えば良い?」
「1億☆程」
「即金は無理だから、いつまで待てる?」
「他にお売りする予定はございませんので、いつまでもお持ちしておりますが、私共も収益がないと研磨ができませんので、頭金だけでもお願い致します」
「500万☆くらいしか持ってないけど」
「充分でございます」
ソウは加工してある小さい方の石を受け取り、500万☆支払ってきた。
「ソウ、お金全部払ったのにゃ?」
「いや、まだ少し手持ちもあるよ」
「調べる前に買って良かったのにゃ?」
「故意の犯罪ではないと思うよ。逃げても探せるしな。さあ、どうやって都合つけるかなぁ」
「ソウ、頑張るのにゃ」
「そうだな」
「お帰りなさい。何を頑張るの?」
「あ、いや、ユリは何してたの?」
「木鈴と簪を買っていたわ」
「へぇ、どれ?」
ソウはユリの話をすり替えていた。
ユリに案内されついていくと、丸い木に紐がついたようなものが沢山あった。木でできた鈴らしい。
「これと同じものを買ったわ。ユメちゃんとソウの分は、私が勝手に選んじゃったけど」
「ありがとにゃ!」
「ありがとう」
ユリが選んでくれたのがどれなのか楽しみだ!
「ユメちゃん、櫛は要る?」
「くしにゃ?」
うちにある櫛ではダメなの?
「柘植の櫛が売っているみたいだから」
「清子が持ってたにゃ!」
清子の持っている櫛は、私には唯一買ってもらえなかった物だ。
「ん? 誰?」
「1つ前の知り合いにゃ。欲しいにゃ!」
「デザインが色々あるみたいだから好きなのを選んでね」
「わかったにゃ」
見に行くと、持ち手の部分に、彫刻や蒔絵風の飾りがついていて、華やかだった。
清子が持っていた櫛にも、装飾はあったが、こんなに華やかではなかった。
黒猫の柄を探したが見当たらず、なにか良いのはないかなぁと見ていると、リラたちも探しに来た。
ユリから、髪に良いと聞いたらしい。
シィスルが、これ!といって手に取っていたのは、薊の花の絵のついた櫛だった。
少ししてソウまで櫛を選びに来た。
ソウは割りと早く欲しいものを決めたようで、百合の花が描かれた半円タイプの櫛だった。
私は似たデザインの、手持ちタイプの櫛を選びユリのもとに持っていった。
「これどう? ユリにぴったりだと思うけど」
「お揃いにゃ!」
「あら、素敵ねぇ。ソウありがとう」
「ユメのも俺が買ってくるから」
私の分まで、ソウが買ってくれるらしい。
ソウ、お金大丈夫かなぁ?
「黒猫のデザインはなかったにゃ。夢はデザインにならないのにゃ。だから、ルレーブの百合の花なのにゃ」
「花はモチーフにしやすいからグッズが多いわよね」
成る程なぁと思った。花柄は確かに多かった。
リラたちも決めたらしく買っているのが見えた。
みんなが戻ってくると、ユリが声をかけた。
「さあ、そろそろ時間になるから戻りましょうか?」
最初の場所に戻ると、色々なものが用意してあった。
ユリはリラに確認しなが、品物をしまっていた。
干し柿と蜜柑、少しだけ出しておいてもらおうかな。
しまい終わる頃、桜子たちが来て、刺身用の魚を渡された。
「ユリ様、刺身のさくです。鮪、鯛、鮃、鰤と、帆立の貝柱、蛍烏賊、穴子のさばいたものです。それと、帆立の蒸したものです」
「うわー! ありがとう!」
聞いていた内容だと寿司が作れそうだ!
「ユリ、お寿司できるにゃ?」
「できるわね」
「あと、牡蠣がございますが、」
「ください! 生用? 加熱用?」
「どちらにも可能でございます」
牡蠣は何に使うのかな? カキフライ食べたいなぁ。あとでユリにリクエストしよう。
ユリは鞄から冬箱を取り出し、その中に魚介類を入れていた。
昔は冬箱はなかったから、と考え、そもそもすぐに食べる食品以外の生物を魔道具の鞄に入れたりはしなかったなぁと思いだし、ユリの行動に慣れてきたことに笑ってしまった。




