夢の歓喜
どうしよう。ホットドッグを食べたいけれど、新しい方も食べたいし、でも2つは食べきれそうにない。
「まだお腹空いていないなら、空いてから声かけてくれればその時作るわよ?」
「にゃー。とりあえず、ホットドッグだけ食べるにゃ」
作っているユリに告げると、笑って了承してくれた。
出来上がったものを食べながら、リラがユリに質問した。
「ユリ様、メニューの最後についている数字はなんですか?」
「食べたら回復する魔力の時間換算の数字ね」
「え、えーーー!」
聞いたリラはもちろん驚いていたけれど、ユリは、そんなことまでわかるようになったのか。売る側も買う側も扱いやすくなったと思う。
私が考えていると、ユリはリラと話していたと思ったら突然立ち上がり、入り口の外を見に行った。
又並んでいるらしい。
まあ、客からしたら久しぶりすぎるのだから、並んででも買いに来るのだろうと思う。
「13時からって伝えてありますけど、何せ5年ぶりですし」
「とりあえず、リラちゃん、イリスさん、マーレイさんは、休憩に入ってください。ユメちゃんはどうする?」
さっき来たばかりだし、勿論!
「手伝うにゃ! 」
「お店出て大丈夫なの?」
作っているユリほどは騒がれないと思うけど、自覚ないのかなぁ?
「王族と、公爵は来ないにゃ。来ても黙ってるにゃ」
「おねがいします」
頼まれたから、頑張ろう!
「ユリ、俺も手伝うぞ」
「ソウも大丈夫なの?」
「ユリが作ってる現状で、誰が手伝っていても、驚かれないと思うよ?」
驚かないけど、怯えないかどうかは別なような・・・。
「うーん、そうなのかもしれないわね。なら、販売だけの人に少し売って、列を減らしましょう」
「魔道具の鞄に入れて売ってくると楽にゃ」
「なら、ユメちゃんに指輪を返して鞄にして持っていく?」
「ありがとにゃ」
ソウの鞄と、ユリから一時的に返してもらった指輪の鞄を、見える普通の鞄にして、黒糖フルーツパウンドケーキ、世界樹様のクッキー、黒猫クッキー、普通のパウンドケーキを各種50個ずつ入れていった。ソウの分と合わせて100個ずつ有る。
◇ーーーーー◇
女神の慈愛・パウンドケーキ 1本5万☆(フル)
女神の慈愛・パウンドケーキ 1枚5000☆(フル)
時送り・世界樹様のクッキー 1枚2000☆(素早さ)
黒猫クッキー 1枚500☆(11)
世界樹様のクッキー 1枚500☆(11)売切れ
フルーツパウンドケーキ 1枚500☆(10)
お一人様、いずれも10個まで。
◇ーーーーー◇
値段を書いた紙を掲げながら呼び掛けた。
「お店で食べない人に売るにゃ!」
ソウを見ておののく人以上に、私を見て驚く人が多かった。
「おおー! 黒猫様! ご健在で何よりです!」
「ユメ様、お元気で良かったです!」
「黒猫様に又お会いできるとは! 実に喜ばしいことです!」
帰還を喜んでくれるのか!
ルレーブじゃなく、黒猫のユメとして喜んでくれるのか!
「ユメ、帰ってきてよかったな」
ソウがにこやかに同意していた。
「ユメ、よかったー、ユメ、よかったー」
「にゃ! キボウ、ついてきたのにゃ?」
「クッキー、クッキー、キボーのクッキー」
「にゃー。キボウのクッキーはキボウが売るのにゃ?」
「あたりー!」
「ユメ様、そちらのお子さんはどちらのお子さんでしょうか?」
「キボウは、世界樹様の幼木にゃ。世界樹様のクッキーはキボウが手伝うから、素早さが上がるのにゃ」
「なんと! あの噂は本当だったのですか!?」
「どの噂にゃ?」
「ハナノ様がお作りになったお菓子が、魔力全回復という・・・」
「本当にゃ。女神の慈愛が入ってるにゃ。王様が実証済みにゃ」
「う、売っていただけるものすべて売ってください!」
「高いのにゃ。何個要るのにゃ?」
「一万☆しか持って来ていないので、5万☆の以外を」
数字の意味などを説明しながら私がお菓子を鞄から出していると、ソウは並んでいる人からノートのようなものを受け取っていた。
世界樹様のクッキーはキボウが手渡しし、黒猫クッキーは、私が手渡しし、数が多いものはソウがまとめて渡してくれた。
途中リラが手伝いに来てくれた。
恐れおののく相手より、リラからの方が買いやすいらしく、サクサク進んだ。
先にパウンドケーキがなくなり、黒猫クッキーと世界樹様のクッキーが残ったので、ソウが先に戻った。
キボウは、クッキーの歌を歌いながら売っているので、リラが受け答えをするまで、なかなか進まなかったけど、キボウが歌っている間にリラがやり取りをしているので、歌が終わったときにクッキーを渡すだけになり、残りもすぐに売り切れそうだ。
先に黒猫クッキーを売り終わってしまって手持ち無沙汰にしていると、リラから声をかけられた。
「ユメちゃん、先に戻りますか?」
「ありがとにゃ。お店手伝ってくるにゃ!」
キボウをリラに任せ、先に店に戻った。
「売るのが無くなったにゃー」
「ユメちゃん、一緒にいてくれてありがとう!」
「どうしたにゃ?」
なぜか、ユリに突然感謝された。
「みんなのお陰で、良い店だなって思ったの」
「よかったにゃ」
何事もないなら、まあ、いいか。
「そろそろお店開けましょうか!」
イリスも休憩から戻ってきたので、お店に行って、準備を始めた。




