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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇新生ユメ◇

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夢の登録

ユリが迎えに来たので帰ることにした。

城のソウの部屋まで歩き、忘れない内に言っておこうと思い、ユリに伝える話の件を話した。


「ユリ、世界樹の森であったこと、特に私がいなかった間の話をハイドランジアにして欲しいにゃ。公開されないけど、王家の記録には残るにゃ」

「それってもしかして、王の努め的な何か?」

「そうなのにゃ」

「ユメちゃんが居なかった辺りの話ね。わかったわ」


嫌がられるかと思ったら、何となく察していたのか、すんなり受け入れてくれた。


「ソウとカエンにも頼みたいにゃ」

「ソウはともかく、カエンちゃんはどうかしら?」


カエンはソウのために参加したらしいから、その他の何に興味があるのか、よくわからないのだ。唯一、魔力の低さに苦労しているようだったから、これで頷いてくれることを願おう。


「カエンの魔力を増やす方法があるにゃ。それで手をうってもらえないか聞いてみて欲しいにゃ」

「わかったわ。家に帰ってから行ってみるわ」

「ありがとにゃ」



家に戻り、ユリがご飯を作っているとソウが帰ってきた。ビックリすることに、カエンをつれてきていた。

カエンは出されたお茶を飲みながら、ユリにお願いをしていた。


「ユリ御姉様、新しいクッキーというのを分けてはいただけないでしょうか?」


情報が早いなぁ。先読みで見たのかな?


「え? 世界樹様のクッキー?」

「はい!」

「何かあるの?」

「能力的なものが上がるようでございます。例えば、素早さとか、持久力とか、精度などでごいます」


へぇ。そんな効果があるのかぁ。


「あ、えーとね、カエンちゃんに頼みが有るんだけど、とりあえず聞いてもらえる?」


ユリは、今話してくれるらしい。


「はい」

「世界樹の森でのユメちゃんが居なかった辺りの話を、王妃のハイドランジアさんに話して欲しいの。強制ではないけれど、できる限り協力を要請するわ」

「構いませんが、わたくしの目から見た話をすればよろしいのでしょうか?」

「その通りにゃ。頼むのにゃ」


「いついたしますか?」

「クッキー作っておくから今行ってくる?」

「はい。それで構いません」

「なら、俺が連れて行ってくるよ」


ソウも行くなら、言っておかなければ。


「ソウもカエンと同じにゃ。ソウは強制にゃ」

「あー、国民の義務的な?」


ソウは苦笑いをしているみたいだった。

カエンに、きちんと条件を伝えよう。


「カエン、国民登録をすれば、魔力が増えると思うにゃ。どうするにゃ」

「その場合、こちらに住むことになりますか?」

「名誉国民としての登録だから、式典で呼ばれない限り、向こうに居ても大丈夫にゃ」

「登録だけで魔力が増え、特に住まいの制限もなく、わたくしに美味しい点しかございませんが?」


ダメな点がないと話として怪しいのかな?


「世界樹の森の話が、報告義務になるにゃ」

「呼ばれる式典は何がございますか?」

直近(ちょっきん)だとユリの婚姻の義くらいにゃ」

「是非、名誉国民にしてくださいませ!」


あれ? むしろ出たかったの?

ソウの妹だから、招待はできると思うけど、今言うと混乱するから黙っておこうかな。


「セカンドネームを入れるにゃ。好きな植物の名前を考えると良いにゃ」


カエンは、ソウに連れられ城に行った。


「ユメちゃん、私はいつ話せば良いのかしら?」

「確認があると困るにゃ。できれば私の記憶があるうちに頼むにゃ」


質問があったときに、答えられるうちが良いと思う。


「明日にでも行ってくるわ。さて、クッキー作ろうかしら」

「手伝うにゃ!」


ユリと二人きりで、クッキーをたくさん作った。黒猫クッキーはなく、全部世界樹様のクッキーだったけど、楽しかった。


そういえば、カエンが言っていたのは、ユリの女神の慈愛効果ではなく、もしかしたらキボウのなにかだろうか?


「ユリ、カエンが言っていたのは、キボウが時間を早めるからかにゃ?」

「あー、そうかもしれないわね。仕上げをしてからキボウ君に聞いてみましょう」


冷めた、先に焼いた分に緑色の物を塗っていると、キボウが起きてきた。クッキーを見る前から歌っている。


「クッキー、クッキー、キボーのクッキー」

「キボウ君、カエンちゃんが、このクッキーに効果があると言っていたけど、キボウ君が時送りをするからかしら?」

「あたりー!」


あ、やっぱりそうなんだ。


「カエンちゃんに頼まれた分なんだけど、時送りしてもらえる?」

「わかったー。いちじかーん」


キボウは、お気軽にユリの頼みを聞き、手をかざしていた。

濃い緑色だったクッキーの表面が乾燥して、薄い緑色に変わった。


「キボウ君ありがとう! キボウ君も食べるわよね」

「たべるー、たべるー」


キボウはユリから手渡されたクッキーを食べ、おとなしくなった。


「ユリ、いくらで売るにゃ?」

「どうしようかしら? 手間はあまり変わらないけど、材料費が結構高いのよね」

「500☆くらい取れば良いのにゃ。あと、パウンドケーキも値上げするのにゃ。安すぎるのは問題なのにゃ」

「パウンドケーキは、値上げしようと思ってたわ。さすがにね」


クッキーを食べて満足したのかキボウはうつらうつらしていた。


残りのクッキーも冷めたので、緑色のを塗ると、キボウが起きてきて、時送りをして乾かしていた。


「キボウ君、時送りをして疲れたりしないの?」

「しなーい。パウンドケーキたべるー。しなーい」


何となくわかるような、全くわからないような。

これを通訳している人は、凄いなと思う。


「んー? パウンドケーキを食べれば時送りを使っても大丈夫って意味かしら?」

「あたりー」


うわ!ユリが通訳しだした。私はルレーブの記憶があるうちに、キボウの言葉がわかるようになるだろうか。

まあ、それよりも、効果が確実ならあまり安く売ると問題だろうと思う。


「ユリ、毎度効果があるなら500☆では安いにゃ」

「なら、2種類作りましょうか? キボウ君に手伝ってもらったものと、普通に売るものと」

「どうやって分けるにゃ?」

「デザインで分ければ良いかなって」

「どんなデザインにゃ?」

「この絞り口金で、花っぽく」


ユリは絞り袋で、アスタリスクみたい模様をつけて見せた。

中身は、色が白いだけで、塗っているものと同じらしい。


「アスタリスクみたいにゃ」

「あはは、アスタリスク、確かに似てるわね」


そう言いながら、クッキーの緑の部分に、模様をつけていた。


「これをいくつかポンポンと、花みたいでしょ」

「でも、これだともう一度乾かすことになるにゃ」


疑問を呈すると、あっさり違う方法に変えていた。ユリのなかでもまだ固まっていなかったらしい。


「なら、スタンプで模様でもつけましょうか」

「それが良いにゃ!」


ユリは、新しい判子を持ってきて、食用インクというもので、緑の上にスタンプしていた。


[Alstroemeria]


「これでどう?」

「良いと思うにゃ!」


アルストロメリアと書いてあった。


「キボー、おすー」

「キボウ君もやってみたいの?」

「あたりー」


キボウが押すらしいので、判子はキボウに任せ、残りのクッキーをユリと一緒に仕上げた。


「少しずれちゃったのは、食べちゃってね」


ユリがキボウに言うと、何枚か食べているのが見えた。

100枚以上出来たみたいで、見渡していると、ソウとカエンが帰ってきた。


「ユリ御姉様、何枚譲っていただけますでしょうか?」

「100枚まで可能かな」

「では、100枚お願い致します。これでよろしいでしょうか?」


カエンは札束を取りだして、ユリに渡していた。


「1枚、1万円?」


ユリはかなり驚いた顔をしていた。


「足りませんでしたか?」


心配そうに聞くカエンに、ユリはなにか思ったのか、笑顔になり、そのまま売っていた。


「いえ、お買い上げありがとうございます」


大分高いのに良いのかなぁと思い、あとでソウに聞いたところ、カエンの収入からすれば、微々たるものだから問題ないよと言っていた。


「カエン、名前決めたら連絡してにゃ」

「はい。お兄様の家に連絡をいれます」


クッキーを袋にしまいながら、ユリに、名前の登録方法を説明しておかないとなぁと考えていた。


カエンはクッキーを全て持ち、ソウに送られ帰っていった。

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