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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇新生ユメ◇

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夢の記録

朝起きてリビングに行くと、ユリはまだリビングで何か作業していた。


「おはようにゃ! ユリ、今日は忙しいにゃ?」

「おはようユメちゃん、忙しくないわよ」

「ちょっと城に行って来るにゃ」

「いつ帰ってくる?」

「夕ご飯の前には帰って来るにゃ」

「気を付けていってらっしゃい」

「行って来るにゃ」


ユリからパウンドケーキを5本と2カット渡され、私は城に転移した。

城のソウの部屋は転移に便利だ。なんと言うか、引っ掛かりがなく転移しやすい。


部屋から出ると、珍しく王女にあった。


「ユメ様!」

「スノードロップにゃ?」

(わたくし)はサンダーソニアでございます」

「ごめんなのにゃ。ハイドランジアとアネモネは居るにゃ?」

「お母様と、義姉上(おねえ)様でございますか? 少しお待ちくださいませ」


お付きの侍女の一人が素早く知らせに走っていった。いや、早歩き? 競歩?

サンダーソニアは第三王女だ。こんなに大きかったっけ?と思いながら待っていると、サンダーソニアが尋ねてきた。


「私も参加させてはいただけないでしょうか?」

「何ににゃ?」

「お母様と、義姉上(おねえ)様を呼ばれると言うことは、初代様の歴史のお話ではないのですか?」

「そうだにゃ」

「私も、『初代様の復活を見守り応援する会』の会員でございます!」

「それ、まだあるのにゃ? もう復活したにゃ」

「まだ、見守り応援する。が残っております!」

「参加しても良いにゃ。今日はあんまり人を増やさないでにゃ」

「ありがとうございます!!」


メイプルが迎えに来た。

なんだろう、第一王子は暇なのか? いつもメイプルが案内している気がする。


「ユメ様、母上とアネモネにご用があると伺っております。もしやそれは、歴史のお話でしょうか? 可能であれば、私も参加させてはいただけないでしょうか?」


はあ。王族全員参加する気なのだろうか?


「サンダーソニアと参加したら良いにゃ」

「ありがとうございます!」


機密事項を含むと言うことで、現国王の部屋で行うことになり、当然、国王のパウローニアもいる。現在城に居る王族勢揃いだ。


「一番詳しいのは誰なのにゃ?」

「歴史としてはアネモネですが、王家の秘匿事項を含むと、ハイドランジアが詳しいかと思われます」


国王パウローニアが答えてくれた。


「知っていることだけで良いにゃ。伝わっている歴史を教えてにゃ」

「かしこまりました」


そう言って、アネモネが話し出した。

先王時代の話から、私が隠れたとされるその先の話まで。私のあとは、腹違いの末の弟が王位を次いだらしい。

実兄の件は、ほとんど記録がないそうだ。


次にハイドランジアが、王家の側から見た歴史を話してくれた。母上が輿入れするまでは王妃だった女性の話や、心底王に惚れていたのに、見向きもされなかった側室の女性の話を教えてくれた。


現在一夫一婦制(いっぷいっぷせい)のこの国も、過去には、一夫多妻制いっぷたさいせいをとっていた。私が法律を制定した。直系の血より、血族内の優秀な者を優遇せよと多妻を禁じた。


「私が聞きたかったのは、私が知らなかった点にゃ。兄がいた件と、おかあさまの、いや、母上の話をしてほしかったのにゃ。世界樹様からは少しだけ聞いたのにゃ。母上は、私が3歳になった時に毒殺されたのにゃ。先読みの巫女から、母上か私のどちらかが死ぬまで狙われ続ける。と、言われたらしいにゃ。だから母上は、私を助けるために、毒の治療をしなかったのにゃ。転生しても持ち続けた全ての記憶と知識を対価に捧げて、私を守ったらしいにゃ。母上は『知識の魔女』で、転生した今、前世をまったく覚えていないのにゃ」


「ユメ様、転生されたリス様に、お会いになられたのですか?」

「会ったにゃ」

「記憶がないのにどうしてリス様だとお分かりになられたのですか?」


「わかった訳じゃないにゃ。世界樹様から教えてもらったのにゃ。前回の結界を張った力と、私の魂を分霊し今に飛ばしたのは、私が困ったときにと、母上が差し出した対価であったと、この今の体は、黒猫のドリームからの借り受けにゃ、そのドリームも元は、母上の使い魔だったのにゃ」


「リス様はなんと偉大な・・・」

「私の記憶はもう2週間も残ってないにゃ。ユメとしてもあと1年にゃ。その前に、現女王が存命中は公開せず、心に留めて欲しいお願いがあるにゃ」

「なんなりとお申し付けください」


「ユリの前世が、母上にゃ」

「なんと!」「そうなのですか!?」「えー!」

「私の記憶がなくなって、ユリを助けることができなくなっても、ユリを助けてほしいにゃ」

「かしこまりました。私に出来る限りをつくし、お役に立つように心がけいたします」


全員が頷いた。


「それと、プラタナスのことを聞きたいにゃ」

「なんでございましょう?」

「なんで、プラタナスだけ大きくなってないにゃ?」


全員が黙り込んでしまった。


「もしかして、『(とき)()』に入ったのにゃ?」


時の間は、あの容量が1000倍入る鞄の据え置きタイプの魔道具だ。効果は、内容物の時間停止で、見た目は洋箪笥(ようだんす)である。ユメも隠し部屋に1(さお)持っている。なるべく手以外は入れないように使用し、担当者も1~2年で交代する。


ユメの指摘に、パウローニアが話し出した。


「ユメ様が出立されたすぐ後のことでございます。扉が開いていたらしく、時の間の魔道具に体ごと中に入って眠っていたそうで、発見したときには数時間経っていたと、報告を受けました」


大人が長く中に入ると発狂すると言われているが、どうやら子供は時が止まるらしい。


「キボウに聞いてみるにゃ。何もできなかったらごめんなのにゃ」

「ありがとうございます。お手を煩わせてしまい、お詫びのしようもございません」


「あとは、メイプル。勉強は(はかど)ってるにゃ?」

「はい。おっしゃる意味がわかりました。建国の歴史を復習いたしました」

「登録の間に行って、名を宣言してくると良いにゃ」

「ありがとうございます!」


登録の間は、貴族の名前を登録する石があるところだ。

カラーを色ではなく、花の名前だと認識したなら、メイプルの魔力が上がることだろう。


「ユメ様、お食事はお召し上がりになられますでしょうか?」

「ありがとにゃ。食べていくにゃ。あ、ユリから預かってきたものがあるにゃ」


パウンドケーキを5本取りだし、テーブルに並べた。

するとキボウが転移して飛び込んできた。


「ユメー、よんだー? よんだー?」

「うわ! キボウ来たのにゃ? ユリは一緒にゃ?」

「キボーだけー」

「ユリは知ってるのにゃ?」

「キボーいったー、ユメよんでるいったー」

「何となくユリには伝わってるなら良いにゃ」


キボウには持ってきたパウンドケーキを一切れ渡し、いつもの養育係に先ほどの件を伝え、聞いてもらえるように頼んだ。

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