夢の記録
朝起きてリビングに行くと、ユリはまだリビングで何か作業していた。
「おはようにゃ! ユリ、今日は忙しいにゃ?」
「おはようユメちゃん、忙しくないわよ」
「ちょっと城に行って来るにゃ」
「いつ帰ってくる?」
「夕ご飯の前には帰って来るにゃ」
「気を付けていってらっしゃい」
「行って来るにゃ」
ユリからパウンドケーキを5本と2カット渡され、私は城に転移した。
城のソウの部屋は転移に便利だ。なんと言うか、引っ掛かりがなく転移しやすい。
部屋から出ると、珍しく王女にあった。
「ユメ様!」
「スノードロップにゃ?」
「私はサンダーソニアでございます」
「ごめんなのにゃ。ハイドランジアとアネモネは居るにゃ?」
「お母様と、義姉上様でございますか? 少しお待ちくださいませ」
お付きの侍女の一人が素早く知らせに走っていった。いや、早歩き? 競歩?
サンダーソニアは第三王女だ。こんなに大きかったっけ?と思いながら待っていると、サンダーソニアが尋ねてきた。
「私も参加させてはいただけないでしょうか?」
「何ににゃ?」
「お母様と、義姉上様を呼ばれると言うことは、初代様の歴史のお話ではないのですか?」
「そうだにゃ」
「私も、『初代様の復活を見守り応援する会』の会員でございます!」
「それ、まだあるのにゃ? もう復活したにゃ」
「まだ、見守り応援する。が残っております!」
「参加しても良いにゃ。今日はあんまり人を増やさないでにゃ」
「ありがとうございます!!」
メイプルが迎えに来た。
なんだろう、第一王子は暇なのか? いつもメイプルが案内している気がする。
「ユメ様、母上とアネモネにご用があると伺っております。もしやそれは、歴史のお話でしょうか? 可能であれば、私も参加させてはいただけないでしょうか?」
はあ。王族全員参加する気なのだろうか?
「サンダーソニアと参加したら良いにゃ」
「ありがとうございます!」
機密事項を含むと言うことで、現国王の部屋で行うことになり、当然、国王のパウローニアもいる。現在城に居る王族勢揃いだ。
「一番詳しいのは誰なのにゃ?」
「歴史としてはアネモネですが、王家の秘匿事項を含むと、ハイドランジアが詳しいかと思われます」
国王パウローニアが答えてくれた。
「知っていることだけで良いにゃ。伝わっている歴史を教えてにゃ」
「かしこまりました」
そう言って、アネモネが話し出した。
先王時代の話から、私が隠れたとされるその先の話まで。私のあとは、腹違いの末の弟が王位を次いだらしい。
実兄の件は、ほとんど記録がないそうだ。
次にハイドランジアが、王家の側から見た歴史を話してくれた。母上が輿入れするまでは王妃だった女性の話や、心底王に惚れていたのに、見向きもされなかった側室の女性の話を教えてくれた。
現在一夫一婦制のこの国も、過去には、一夫多妻制をとっていた。私が法律を制定した。直系の血より、血族内の優秀な者を優遇せよと多妻を禁じた。
「私が聞きたかったのは、私が知らなかった点にゃ。兄がいた件と、おかあさまの、いや、母上の話をしてほしかったのにゃ。世界樹様からは少しだけ聞いたのにゃ。母上は、私が3歳になった時に毒殺されたのにゃ。先読みの巫女から、母上か私のどちらかが死ぬまで狙われ続ける。と、言われたらしいにゃ。だから母上は、私を助けるために、毒の治療をしなかったのにゃ。転生しても持ち続けた全ての記憶と知識を対価に捧げて、私を守ったらしいにゃ。母上は『知識の魔女』で、転生した今、前世をまったく覚えていないのにゃ」
「ユメ様、転生されたリス様に、お会いになられたのですか?」
「会ったにゃ」
「記憶がないのにどうしてリス様だとお分かりになられたのですか?」
「わかった訳じゃないにゃ。世界樹様から教えてもらったのにゃ。前回の結界を張った力と、私の魂を分霊し今に飛ばしたのは、私が困ったときにと、母上が差し出した対価であったと、この今の体は、黒猫のドリームからの借り受けにゃ、そのドリームも元は、母上の使い魔だったのにゃ」
「リス様はなんと偉大な・・・」
「私の記憶はもう2週間も残ってないにゃ。ユメとしてもあと1年にゃ。その前に、現女王が存命中は公開せず、心に留めて欲しいお願いがあるにゃ」
「なんなりとお申し付けください」
「ユリの前世が、母上にゃ」
「なんと!」「そうなのですか!?」「えー!」
「私の記憶がなくなって、ユリを助けることができなくなっても、ユリを助けてほしいにゃ」
「かしこまりました。私に出来る限りをつくし、お役に立つように心がけいたします」
全員が頷いた。
「それと、プラタナスのことを聞きたいにゃ」
「なんでございましょう?」
「なんで、プラタナスだけ大きくなってないにゃ?」
全員が黙り込んでしまった。
「もしかして、『時の間』に入ったのにゃ?」
時の間は、あの容量が1000倍入る鞄の据え置きタイプの魔道具だ。効果は、内容物の時間停止で、見た目は洋箪笥である。ユメも隠し部屋に1棹持っている。なるべく手以外は入れないように使用し、担当者も1~2年で交代する。
ユメの指摘に、パウローニアが話し出した。
「ユメ様が出立されたすぐ後のことでございます。扉が開いていたらしく、時の間の魔道具に体ごと中に入って眠っていたそうで、発見したときには数時間経っていたと、報告を受けました」
大人が長く中に入ると発狂すると言われているが、どうやら子供は時が止まるらしい。
「キボウに聞いてみるにゃ。何もできなかったらごめんなのにゃ」
「ありがとうございます。お手を煩わせてしまい、お詫びのしようもございません」
「あとは、メイプル。勉強は捗ってるにゃ?」
「はい。おっしゃる意味がわかりました。建国の歴史を復習いたしました」
「登録の間に行って、名を宣言してくると良いにゃ」
「ありがとうございます!」
登録の間は、貴族の名前を登録する石があるところだ。
カラーを色ではなく、花の名前だと認識したなら、メイプルの魔力が上がることだろう。
「ユメ様、お食事はお召し上がりになられますでしょうか?」
「ありがとにゃ。食べていくにゃ。あ、ユリから預かってきたものがあるにゃ」
パウンドケーキを5本取りだし、テーブルに並べた。
するとキボウが転移して飛び込んできた。
「ユメー、よんだー? よんだー?」
「うわ! キボウ来たのにゃ? ユリは一緒にゃ?」
「キボーだけー」
「ユリは知ってるのにゃ?」
「キボーいったー、ユメよんでるいったー」
「何となくユリには伝わってるなら良いにゃ」
キボウには持ってきたパウンドケーキを一切れ渡し、いつもの養育係に先ほどの件を伝え、聞いてもらえるように頼んだ。




