表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇新生ユメ◇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/575

夢の贈与

戴冠式当日。


お昼を少し過ぎた時間から始まる。

ユリは前回より、色味が増え、少し派手になった衣装に、藍色のローブを纏っていて、手には、私が昨日渡した杖になる鞄を持っている。


出掛けにソウから「なめられないようにするんだぞ?」と言われ、「えー」と言っていた。


「ユメちゃん、みんなが認めないと言ったらどうしよう」

「威圧すれば魔力差に認めるしかないにゃ」

「威圧ってどうやるの?」

「本気で怒るか、心の眼で睨むのにゃ」


「心の眼で睨むなんて、そんな器用な・・・」


少し驚いた顔をしたあと、呟いていた。

話していないと間が持たないのか、色々質問してくる。


「この鞄、ユメちゃんは、他にどんな形にしてみたの?」

「ティアラとか、ブローチとか、ネックレスにゃ。振り回せなくて使えなかったにゃ」

「う、ユメちゃんの方が、大人だった・・・」


年齢的には私の方が大人なのだ。


「ユリは何にしたのにゃ?」

「魔法少女ステッキ型」

「私の時代にそういう発想がなかっただけにゃ」

「うー」


ユリの中では、私は保護対象なのだろう。私に慰められたことが少しショックらしい。


「私の前に使っていた魔女は、指輪にしていたらしいにゃ」

「杖が目立ちそうな場合、指輪にしてみるわ」


目立つと困る場所に持っていくのか。


「向こうで人前で使うときは、鞄型が良いにゃ。いきなり取り出したら、怪しい人にゃ」

「な、成る程。色々難しいのね」


あの魔力の薄い世界で生きてきたはずなのに、すっかりこちらに慣れたんだなぁ。


「鞄の中はほぼ無限で入るにゃ。でも、1/1000、つまり、1トンで1キロくらいの重さがかかるにゃ。これは、他の鞄も一緒にゃ。転移制限の重量は、1/1000ですむにゃ。体重50kgなら、50トンくらい持ち運べるにゃ」

「凄いのねー!」


たまには、ユリが感心する立場なのも面白い。

よし、ここで取って置きの話をしてやろう。


「裏技があるにゃ。鞄二つに50トンずついれても、もうひとつの鞄に入れれば、100gにゃ」

「凄すぎて、わけわからないわね」

「使うときは、常に40~50kgの荷物を入れておくと、盗難防止になるにゃ」

(※魔力が1万p以上無いと、軽くならないため)


「盗んだ人には、持ちたくない重さね。ふふふ」

「あとは、中は時間停止状態にゃ。生き物は入れちゃダメにゃ」


なぜかはわからないが、中にいれた生き物は、その時間が長いほど発狂するのだ。


「わかったわ」


コンコンコン


「ホシミ様をお連れいたしました」

「入ってください」

「ユリ、『入りなさい』にゃ」


「あうー」

「なにしてるの?」


ユリがうなだれているとソウが聞いてきた。


「ユメちゃんに怒られたー」

「なんで?」

「さっき、入ってくださいって言ったから」

「『入りなさい』か、『入れ』だな」

「えー、ソウは出来るの?」

「こっちに来て10年以上経つからな」


ユリがソウを驚いた顔で見上げていた。


「ソウ、時間にゃ?」

「ユメは着替えないのか?」

「面倒だから、変化(へんげ)するにゃ」

「わー、ユメちゃん横着ー」


今日の主役はユリだから、私が張り切る必要はないのだ。それに、私もコルセットは嫌なのだ。変身してドレスになれば、きつくないのだ。


「そこで寝てるキボウはどうすんだ?」

「キボウ君の、地位がわからないのよね」

「魔力的には、ユリより下で、私より上にゃ」

「そうなの!?」「そうなのか!?」

「プラタナスが、桃色に塗ってたのにゃ」


実は、女王だった時のユメよりも魔力値は高い。

小さな声で、「俺が一番低いのか」と、ソウが呟いているのが聞こえた。

ソウは前回と同じ衣装で、ユリより派手だ。


「それより、ソウは、それで出るのにゃ?」

「おかしいか?」

「もう少し寒色を入れた方が、ユリが映えるにゃ」

「どうすれば良い?」


ソウが食いぎみに聞いてきた。


「私用に作ったマント使うにゃ?。仕立て屋が、当日の靴がわからなくて、長いのも作ってきたから合うのがあると思うにゃ」


とりあえず見てみると言うので、メイドに持ってくるように頼んだ。


マントを見たソウは気に入ったようで、一番長いものを着用していた。

ソウのエスコートでユリは登場した。

ユリは少しだけかかとの高い靴を履いているので、足元が不安らしい。


あ、キボウつれていくの忘れた。

よし、このまま連れていって置いてこよう。

ユメのままキボウのクーファンを持ち、会場にいくと「黒猫様のユメ様だ!」と聞こえた。

さっさと退場し、戸の陰でさっと変身した。


再び入場し、席についた。

聖女出身のユリは、あまりしゃべらなくても不思議に思われないので、ほとんどの進行を私が行った。


ユリのお披露目式が無事終了し、私の話をする時間になったので、きちんと話をした。


(われ)が、黒猫のドリームに借りしこの体、約束の通り世界樹の森へと還そう」


私の宣言に、貴族たちはかなり動揺していたが、むしろ、私はいつまでいると思われていたんだろう?


その後、私に一言あると言う者たちが、列をなした。


「初代様、私たちを長くお見守りくださりありがとうございました」

「初代様、素敵な国を建国してくださりありがとうございました」

「初代様、過ごしやすい国をお作りくださり感謝しております」


みんな感謝の言葉だった。

私の苦労が報われた思いだった。

国を治めていた頃は、感謝の言葉なんてなかった。

戦争を知らない国になったんだなと実感した。


人垣が少し減ってきた頃、ユリの方が騒がしくなった。

なにやったんだろう? と心配だったが、ソウがついているので、大丈夫だよね? と思っていたのに、なぜかユリはパウンドケーキを山ほど取りだし、給仕にカットしてくるように頼んでいた。


ソウは止められなかったらしく、愕然としていた。

それでも、パウンドケーキを配られた者たちの士気は上がったらしく、ユリは国民に愛される女王になることが予想される。


式が終了し、私の部屋に集まった。


「ユリ、登録するにゃ」

「何に?」

「城の隠し通路とか、結界とか色々にゃ」

「隠し通路とかあるの!?」


無かったら、緊急時にどうするつもりなんだろう?


「何でみんな同じ反応にゃ?」


有ると想定していないことの方が、私には驚きなのだ。


「どうすれば良いの?」

「こっちに来るのにゃ。ソウはちょっと待っててにゃ」


そんなに深い意味はなかったんだけど、ソウは少し違う意味でとらえたみたいだった。


「見ない方が良いか?」

「ソウなら見ても良いにゃ」

「そうか」


ソウが少し笑顔になった。


ユリに珠を触らせ、まずは城の中を行き来できるようにした。ソウにも教えなかったレベルで情報を開示する。


「この珠を起点に、結界を展開するにゃ」

「これで良い?」


ユリは簡単に結界を張って見せた。

私は最初苦労した覚えがあって、ユリとの魔力差を感じた。


「これでユリが意図しない者は入れないにゃ」

「ユメちゃん凄いのねー」

「作った人が凄いのにゃ。あとは、隠し部屋にゃ」


王妃の間の鏡の先の隠し小部屋に入った。


「ここから塔の隠し部屋に転移できるにゃ」

「凄いわねー!、もう、ずっと凄いしか言っていない気がするわー。うふふふふ」


ユリがなんだか楽しそうだ。


「ユリ、ゲート使えるのにゃ?」

「使えたわね。ソウを助けるときに、扉も結界も通り抜けてきたわ」

「なら、ここに直接も来られるかもしれないにゃ。私はできなかったから試してないにゃ」


ユリには全ての情報を開示したので、ソウに出来なかった城での転移も出きるだろう。


「うん。でも、私はあまりここには来ないわ。お家でユメちゃんと一緒に居たいから」

「ユリ、ありがとにゃ」


最後まで一緒に居てくれるユリに、感謝しかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ