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クロネコのユメ  作者: 葉山麻代
◇新生ユメ◇

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夢の希望

キボウに起こされたけれど、少し眠くて無視していたら諦めたらしい。


何時間かして目が覚めたので、リビングにあったパウンドケーキを食べてから、部屋でユリに借りた本を読んでいると、みんなが何処かからか帰ってきたみたいだった。

すると、また部屋にキボウが来た。


「ユメー、ユメー、はなしきくー?」

「何の話にゃ?」

「ユメとウソつきのはなしー」

「それって、ソウのことにゃ?」

「あたりー」


キボウにリビングの外に引っ張ってこられた。

リビングの声が聞こえる。


「今日、キボウに言われた。俺がついている嘘は何かを」

「なんだったの?」


これ、聞いて良いの?


「俺の前世での不誠実らしい」


ソウも前世があるの?


「え、それはソウには関係ないんじゃないの?」

「そうでもない。もちろん記憶はないが、ユメとユリにも関係する」


え!関係する人だったの?


「どういうこと?」

「順序だてて話すから聞いてくれ」

「うん」

「キボウが言うには、俺は、前世の俺は、ユメに酷いことをした」


なにしたの!?


「そうなの?」

「ルレーブの母親がリスという名前なのは聞いていると思うけど、外国から輿入れした正妃だったらしい」


そうだね。


「私の前世と言う人ね」


そうだね。


「そのリスは、かなり強力な魔法使いで、かなり優秀な人だったらしい。賢妃(けんひ)と呼ばれるほどで、王のたっての希望で迎えた妃で、既にいた王妃を側妃に落としたそうだ。

けれど、立場が弱くて、常に命を狙われていて、何度も危ない目に遇って、さらに、生まれた王子は事故で亡くなって、次の王女が生まれてもやはり狙われるので、王女には王位につけないことを宣言して、臣下に養育を任せたらしい。それがルレーブだ。そこまでしたのに、リス本人は、その後、暗殺されたらしい。

そして、全てを憎んで、回りにあたるようになって、病になっても、誰も助けず亡くなって、冠の指定で、ルレーブが王になったそうだ」


知らなかった話があったよ。

私には兄がいたのか。


「どこにソウが出てくるの?」

「俺の前世は、その先王らしい」


ええー!


「でも、記憶無いんでしょ?」

「記憶はないが、ユメは、許せないと思うよ」


ソウのせいじゃない。今の話の中の父上は、先王は、私を愛していなかった訳じゃなかったと思う。ただ、王妃を愛しすぎていただけだ。


「ユメちゃん、物凄く苦労したの? 幸せじゃなかったの?」

「幸せかどうかは本人しかわからないけど、ずっと苦労しっぱなしだったのは、事実だろうと思う」


確かに苦労はしたけれど、比べる幸せがなかったから、当時はそんなに苦労してるつもりがなかったかな。


「ユメちゃんには話すの?」

「これを聞いて、ユメは傷つかないか? これ以上ユメを傷つけたくないよ」


傷つかないよ。ほとんど知ってたからね。


「ソウは、ユメちゃんをどう思っているの?」

「ユリには優しいけど、俺にはたまに辛辣で、何となく魂に刻まれた拒否だったのかなぁって、納得した。俺は、ユメは大事な仲間だと思ってるよ。そして、この件を知って、謝れるものなら謝りたいけど、ユメが知らなかった事まで話してさらに傷つけるのは違うと思うから、どうしたら良いかとは思ってる」

「そうね。ユメちゃんを傷つけたくないわね」


ユリもソウも優しすぎるよ。

私は二人のことが大好きだよ。

時々辛辣って、ソウがハッキリしないときに確かにきついこと言ってた気がする。


ユメは泣き笑いしながら、心の中で二人に突っ込みを入れていた。


「ユメー、きいた? きいた?」

「キボウ、ありがとにゃ。二人の気持ちがわかって良かったにゃ」

「ユメよかったねー。おかあさまよろこぶ?」

「喜ぶと思うにゃ。キボウはおかあさまと話したことがあるのにゃ?」

「おかあさま、ルレーブだいじー。ルレーブだけだいじー」

「そうなのにゃ。リビングに行くのにゃ」

「わかったー」


リビングに入ると、ユリが泣いていた。


「ユリどうしたのにゃ?」

「あ、いや、俺が辛い話を聞かせてしまって」


ソウがごまかそうとしていたので、きちんと話すことにした。


「私の話なら大丈夫にゃ。ほとんど知ってるにゃ」

「聞こえてたのか! ユメ、ごめん」


むしろ立ち聞きした私が謝る方だ。


「ソウが謝ることはないにゃ。私が今度生まれ変わるなら、ユリとソウの子供になりたいにゃ。だから、私がいなくなっても、この店はアルストロメリアのままにして欲しいにゃ」


どうしても言えなかったことが、言えた。


「このお店は、いつまでもユメちゃんが一緒よ。当たり前じゃない」


ユリが泣いてしまった。

抱き締めたけど、さらにユリが泣いてしまった。

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